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 今日は、昭和時代前期の1945年(昭和20)に、連合国軍最高司令部(GHQ)より、「修身、日本歴史及び地理停止に関する件」(SCAPIN-519)が出された日です。
 これは、連合国軍最高司令部(GHQ)が、それまで行われてきた戦時色の強い教科である「修身」、「日本歴史」、「地理」の授業停止と教科書の回収を指示したものでした。
 太平洋戦争終結にあたり、日本が受諾した「ポツダム宣言」の軍国主義の除去、日本の民主化の条項において、教育分野では、軍国的思想や軍事教育を一掃し、科学的思考力や平和愛好の精神を育てることが求められます。しかし、日本政府は、学徒動員解除、学徒軍事教育の廃止措置、平常授業の再開、学徒隊廃止、教科書の軍国教育的部分を塗りつぶした「墨ぬり教科書」、集団疎開学童の復帰などの一連の平時に戻す措置を行なったものの、これらの措置においても「益々国体ノ護持ニ努ムル」という旧態依然とした教育理念が問題視されました。
 そこで、連合国軍最高司令部(GHQ)は1945年(昭和20)10月22日に、「日本教育制度ニ対スル管理政策」(SCAPIN-178)を出し、学校の教育内容から軍国主義、超国家主義を廃し、代りに基本的人権の思想に合致する諸概念の教授および実践の確立を奨励したのです。
 この指令を厳格に実施させるため、10月30日に「教員及び教育関係者の調査、除外、認可に関する件」(教育関係者の資格についての指令)、12月15日に「国家神道、神社神道に対する政府の保証、支援、保全、監督並びに弘布の廃止に関する件」(国家神道についての指令)、12月31日に「修身、日本歴史及び地理停止に関する件」(修身科・国史科・地理科の中止についての指令)が出されますが、これらが、「GHQ教育四大指令」と呼ばれることになりました。
 翌年2月12日に、文部省が修身・国史・地理教科書の回収について通達し、4月9日には 国史教科書の代用教材として『太平洋戦争史』を購入、利用するよう通達されます。
 その後、国会で「教育基本法」と「学校教育法」が成立、1947年(昭和22)3月31日に公布され、新しい教育方針のもとに4月1日から新学制が発足しました。
 これによって、従来の教育課程が廃止され、同時に新たに社会科が成立・登場することになります。同年5月に学習指導要領「社会科編(1),小学校」が、また6月に学習指導要領「社会科編(2),中学校及び高等学校第1学年」が発表され、9月から全国の小・中学校で「社会科」の授業が開始されました。

○太平洋戦争直後の「社会科」教育関係略年表

<1945年(昭和20)>
・10月22日 GHQが覚書「日本教育制度ニ対スル管理政策」を出す
・10月30日 GHQが覚書「教員及び教育関係者の調査、除外、認可に関する件」を出す
・12月15日 GHQが覚書「国家神道、神社神道に対する政府の保証、支援、保全、監督並びに弘布の廃止に関する件」を出す
・12月31日 GHQが覚書「修身、日本歴史及ビ地理停止ニ関スル件」を出す

<1946年(昭和21)>
・1月11日 文部省が修身・日本歴史・地理停止に関するGHQ指令について通達する
・2月12日 文部省が修身・国史・地理教科書の回収について通達する
・4月9日 文部省が国史教科書の代用教材として『太平洋戦争史』を購入、利用するよう通達する

<1947年(昭和22)>
・3月31日 「教育基本法」と「学校教育法」が公布される
・4月1日 新しい教育方針のもとに新学制が発足する
・5月 学習指導要領「社会科編(1),小学校」が発表される
・6月 学習指導要領「社会科編(2),中学校及び高等学校第1学年」が発表される
・9月 全国の小・中学校で「社会科」の授業が開始される

〇GHQ教育四大指令とは?

 太平洋戦争後の連合軍占領下において、1945年(昭和20)10月22日から12月31日までに、連合国軍最高司令部(GHQ)が出した教育に関する4つの指令です。
 太平洋戦争終結にあたり、日本が受諾した「ポツダム宣言」の軍国主義の除去、日本の民主化の条項において、教育分野では、軍国的思想や軍事教育を一掃し、科学的思考力や平和愛好の精神を育てることが求められました。その中で、敗戦後の日本政府は、学徒動員解除、学徒軍事教育の廃止措置、平常授業の再開、学徒隊廃止、教科書の軍国教育的部分を塗りつぶした「墨ぬり教科書」、集団疎開学童の復帰などの一連の平時に戻す措置を行ないます。しかし、これらの措置においても「益々国体ノ護持ニ努ムル」という旧態依然とした教育理念が問題視されました。
 そこで、連合国軍最高司令部(GHQ)は1945年(昭和20)10月22日に、「日本教育制度ニ対スル管理政策」(SCAPIN-178)を出し、学校の教育内容から軍国主義、超国家主義を廃し、代りに基本的人権の思想に合致する諸概念の教授および実践の確立を奨励したのです。具体的には、A、第一は軍国主義、国家主義の禁止で、第二は言論、思想、集会、信教の自由の確立。B、教師や教育関係の関係者は、できるだけ早く、公的機関で軍国主義者だったかの調査を受け、そうだったものは追放される。C、現在の教科書などから軍国主義的な一面を削除し、平和的公民養成の新教科目、新教科書を準備し、初等教育の教員養成を急げと指示しました。
 この指令を厳格に実施させるため、10月30日に「教員及び教育関係者の調査、除外、認可に関する件」(教育関係者の資格についての指令)、12月15日に「国家神道、神社神道に対する政府の保証、支援、保全、監督並びに弘布の廃止に関する件」(国家神道についての指令)、12月31日に「修身、日本歴史及び地理停止に関する件」(修身科・国史科・地理科の中止についての指令)が出されます。
 これらは、その後の軍国主義者の教職追放、教科書の編集、教科の編成、学校制度、教育行政に影響を与え、民主教育が目指されることとなりました。

☆「修身、日本歴史及び地理停止に関する件」(SCAPIN-519)

(昭和二十年十二月三十一日連合国軍最高司令官総司令部参謀副官第八号民間情報教育部ヨリ終戦連絡中央事務局経由日本帝国政府宛覚書)

一 昭和二十年十二月十五日附指令第三号国家神道及ビ教義ニ対スル政府ノ保障ト支援ノ撤廃ニ関スル民間情報教育部ノ基本的指令ニ基キ且日本政府ガ軍国主義的及ビ極端ナ国家主義的観念ヲ或ル種ノ教科書ニ執拗ニ織込ンデ生徒ニ課シカカル観念ヲ生徒ノ頭脳ニ植込マソガ為メニ教育ヲ利用セルニ鑑ミ茲ニ左ノ如キ指令ヲ発スル

(イ)文部省ハ曩ニ官公私立学校ヲ含ム一切ノ教育施設ニ於イテ使用スベキ修身日本歴史及ビ地理ノ教科書及ビ教師用参考書ヲ発行シ又ハ認可セルモコレラ修身、日本歴史及ビ地理ノ総テノ課程ヲ直チニ中止シ司令部ノ許可アル迄再ビ開始セザルコト

(ロ)文部省ハ修身、日本歴史及ビ地理夫々特定ノ学科ノ教授法ヲ指令スル所ノ一切ノ法令、規則又ハ訓令ヲ直チニ停止スルコト

(ハ)文部省ハ本覚書附則(イ)ニ摘要セル方法ニ依リテ設置スル為メニ(一)(イ)ニ依リ影響ヲ受クベキアラユル課程及ビ教育機関ニ於テ用ヒル一切ノ教科書及ビ教師用参考書ヲ蒐集スルコト

(ニ)文部省ハ本覚書附則(ロ)ニ摘要セル措置ニ依リテ本覚書ニ依リ影響ヲ受クベキ課程ニ代リテ挿入セラルベキ代行計画案ヲ立テ之ヲ当司令部ニ提出スルコト之等代行計画ハ茲ニ停止セラレタル課程ノ再開ヲ当司令部ガ許可スル迄続イテ実施セラルベキコト

(ホ)文部省ハ本覚書附則(ハ)ニ摘要セル措置ニ依リ修身、日本歴史及ビ地理ニ用フベキ教科書ノ改訂案ヲ立テ当司令部ニ提出スベキコト

二 本指令ノ条項ニ依リ影響ヲ受クベキ日本政府ノ総テノ官吏、下僚、傭員及ビ公私立学校ノ総テノ教職員ハ本指令ノ条項ノ精神並ニ字句ヲ遵守スル責任ヲ自ラ負フベキコト

三 附則略

      「文部科学省ホームページ」より