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 今日は、昭和時代前期の1945年(昭和20)に、「労働組合法」が制定された日で、「労働組合法制定記念日」とも呼ばれています。
 この法律は、労働者の団結権、団体交渉権等を保障し労働者の地位向上を図ることを目的とする法律で、「労働基準法」、「労働関係調整法」と共に労働三法と言われてきました。
 大正時代の1920年(大正9)頃から労働運動の活発化を背景として、農商務省、内務省において20近くの労働組合法案が作成されます。政府も1926年(大正15)と1931年(昭和6)に法案を帝国議会に提出しましたが、資本家等の強い反対によって、いずれも日の目をみることはありませんでした。
 太平洋戦争後の占領下において、連合国最高司令部(GHQ)は、1945年(昭和20)10月11日に、「ポツダム宣言」や「アメリカの初期対日方針」を具体化するものとして、五大改革指令(”愎佑硫鯤釗↓∀働組合結成の促進、3惺散軌蕕亮由化、だ貔政治からの解放、シ从僂量閏膕宗砲鯑鐱楡府に出します。
 これに基づいて、 「国防保安法」「軍機保護法」「言論出版集会結社等臨時取締法」「不穏文書臨時取締法」(10月12日)、 「治安維持法」「思想犯保護観察法」(10月13日)、 「治安警察法」(10月20日)など労働組合活動を弾圧していた諸法令、制度が撤廃され、政治犯とされていた労働組合関係者も釈放されます。
 その中で、政府は「労務法制審議会」を設置し、労働組合法案の作成を諮問し、その答申に基づいて、帝国議会で審議され、12月22日に法律第51号として制定、翌年3月1日に施行されました。
 GHQの強い指示の下で、戦前の内務省社会局案を参照し、独自に作成されたものでしたが、「職業ノ種類ヲ問ハズ賃金、給料其ノ他之ニ準ズル収入ニ依リ生活スル者」すべてを労組法上の労働者としてとらえ、工・職・官公吏に等しく団結権、争議権を保障した点で、社会局原案とは大きく異なり、戦後民主主義を形成していく上で、画期的なものとされています。
 警察官、消防職員、監獄職員については例外的に団結権が認められていませんでしたが、争議行為に対する刑事・民事免責が規定され、使用者による不当労働行為(労働者の組合結成・加入や組合活動に対する差別的取扱い、黄犬契約等)を刑罰によって禁止、労働協約の規範的効力や一般的拘束力の制度が設けられていました。
 しかし、占領軍の戦後民主化政策の転換があり、3月闘争(全逓三月闘争)後、再び盛り上がろうとしていた官公労の労働運動を抑圧するため、1948年(昭和23)7月31日に「昭和二十三年七月二十二日附内閣総理大臣宛連合国最高司令官書簡に基く臨時措置に関する政令」(政令201号)が出され、公務員労働者から団結権のみを残し、団体交渉権を厳しく制限し、争議権を奪うものとなります。この政令は、同年12月の「国家公務員法」改正、「公共企業体労働関係法」の制定に継承され、官公労働者の争議権が剥奪され続けることになりました。
 このような流れの中で、1949年(昭和24)6月1日、全面的に改正されましたが、その目的は、旧労組法の「団結権ノ保障及団体交渉権ノ保護助成ニ依リ労働者ノ地位ノ向上ヲ図リ経済ノ興隆ニ寄与スル」(1条)ことから、「労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること」に改められます。
 これは、経営権の尊重を前提としたうえで、労働者と経営者間に団体交渉を主軸とする労使関係秩序を形成することとされました。主要な改正点は、〇藩兌圓陵?彗緝修糧楼呂魍搬腓靴道駛椶梁Δ亡浜?Ε哀襦璽廚鮗茲蟾?漾会社の業務から組合を排除、組合専従者の給与の会社負担を「経費援助」にあたるとして禁止する。∩塙腟約の必要記載事項を詳細に規定し、組合の内部運営への法規制を強め、それに反する規約をもつ組合を「法外組合」として労組法・労働関係調整法上の一定の保護の付与を否定する。A塙膤萋阿鰺?海箸垢觧藩兌圓砲茲觝絞迷垓?紡个垢覯僻骸腟舛魏?瓠原状回復主義を内容とする不当労働行為制度を導入する。ご鋐妥?荼紊力働協約を一方当事者の意思表示によって解約できる道を開き、使用者はこれに基づき自動延長中の協約を解約し、一方的に人員整理を行うことができるようになる、など労働組合に不利な内容とされます。労働組合側は既得権の侵害、組合弾圧法として反対しましたが、同法改正は成立しました。
 その後、部分的に何度か改正され、現在に至っています。

〇「労働組合法」(抄文)1945年(昭和20)制定、1949年(昭和24)全面改正

第一章 総則

(目的)

第一条 この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成することを目的とする。
2 刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十五条の規定は、労働組合の団体交渉その他の行為であつて前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする。但し、いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない。

(労働組合)

第二条 この法律で「労働組合」とは、労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう。但し、左の各号の一に該当するものは、この限りでない。

一 役員、雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接にてヽ いヽ 触する監督的地位にある労働者その他使用者の利益を代表する者の参加を許すもの
二 団体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受けるもの。但し、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、且つ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
三 共済事業その他福利事業のみを目的とするもの
四 主として政治運動又は社会運動を目的とするもの

(労働者)

第三条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。

第四条 削除

第二章 労働組合

(労働組合として設立されたものの取扱)

第五条 労働組合は、労働委員会に証拠を提出して
第二条及び第二項の規定に適合することを立証しなければ、この法律に規定する手続に参与する資格を有せず、且つ、この法律に規定する救済を与えられない。但し、第七条第一号の規定に基く個々の労働者に対する保護を否定する趣旨に解釈されるべきではない。

2 労働組合の規約には、左の各号に掲げる規定を含まなければならない。

一 名称
二 主たる事務所の所在地
三 連合団体である労働組合以外の労働組合(以下「単位労働組合」という。)の組合員は、その労働組合のすべての問題に参与する権利及び均等の取扱を受ける権利を有すること。
四 何人も、いかなる場合においても、人種、宗教、性別、門地又は身分によつて組合員たる資格を奪われないこと。
五 単位労働組合にあつては、その役員は、組合員の直接無記名投票により選挙されること、及び連合団体である労働組合又は全国的規模をもつ労働組合にあつては、その役員は、単位労働組合の組合員又はその組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票により選挙されること。
六 総会は、少くとも毎年一回開催すること。
七 すべての財源及び使途、主要な寄附者の氏名並びに現在の経理状況を示す会計報告は、組合員によつて委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少くとも毎年一回組合員に公表されること。
八 同盟罷業は、組合員又は組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票の過半数による決定を経なければ開始しないこと。
九 単位労働組合にあつては、その規約は、組合員の直接無記名投票による過半数の支持を得なければ改正しないこと、及び連合団体である労働組合又は全国的規模をもつ労働組合にあつては、その規約は、単位労働組合の組合員又はその組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票による過半数の支持を得なければ改正しないこと。

(交渉権限)

第六条 労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する。

(不当労働行為)

第七条 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。

一 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。
二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
三 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。ただし、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
四 労働者が労働委員会に対し使用者がこの条の規定に違反した旨の申立てをしたこと若しくは中央労働委員会に対し第二十七条の十二第一項の規定による命令に対する再審査の申立てをしたこと又は労働委員会がこれらの申立てに係る調査若しくは審問をし、若しくは当事者に和解を勧め、若しくは労働関係調整法(昭和二十一年法律第二十五号)による労働争議の調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言をしたことを理由として、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること。

(損害賠償)

第八条 使用者は、同盟罷業その他の争議行為であつて正当なものによつて損害を受けたことの故をもつて、労働組合又はその組合員に対し賠償を請求することができない。

(基金の流用)

第九条 労働組合は、共済事業その他福利事業のために特設した基金を他の目的のために流用しようとするときは、総会の決議を経なければならない。

(解散)

第十条 労働組合は、左の事由によつて解散する。

一 規約で定めた解散事由の発生
二 組合員又は構成団体の四分の三以上の多数による総会の決議

(法人である労働組合)

第十一条 この法律の規定に適合する旨の労働委員会の証明を受けた労働組合は、その主たる事務所の所在地において登記することによつて法人となる。

2 この法律に規定するものの外、労働組合の登記に関して必要な事項は、政令で定める。

3 労働組合に関して登記すべき事項は、登記した後でなければ第三者に対抗することができない。

(後略)

   「法令全書」より