この法律は、農業者の協同組織の発達を促進することにより、農業生産力の増進及び農業者の経済的社会的地位の向上を図り、もつて国民経済の発展に寄与することを目的とし、農業協同組合や農業協同組合連合会・農事組合法人・農業協同組合中央会の組織・事業・運営等について規定した法律でした。
すでに、1900年(明治33)に「産業組合法」に準拠した産業組合として制度的な歩みを開始していましたが、太平洋戦争中は、1943年(昭和18)の「農業団体法」によって、他の農業諸団体とともに国家統制色の強い農業会とされます。
戦後の占領下において、連合国最高司令官総司令部(GHQ)は、日本国政府に対し1945年(昭和20)12月9日に「農地改革ニ関スル覚書」(SCAPIN-411)を発し、半封建的地主制度の改革によって、小作地を開放し、自作地化することを指示しました。その中で、農地改革によって生み出された自作農を保護するための措置として、民主的な農業協同組合の設立が求められたのです。
これによって、中央農業会(帝国農会の後身)が廃止され、農業協同組合及び農業協同組合連合会が設置され、農産物の集荷や販売、農業資材などの購買、施設や機械の共同利用、技術・営農指導、生活改善、信用(資金貸付け,貯金受入れ)、共済など広範な事業を行うようになりました。
農業協同組合(農協)の設立は、法の施行3ヶ月後の1948年(昭和23)2月には、30,227組合(出資組合15,863、非出資組合14,364)に達し、その後の農業発展・食糧増産に大きな役割を果たします。
〇「農業協同組合法」(抄文)
第一章 総則
第一条 この法律は、農業者の協同組織の発達を促進することにより、農業生産力の増進及び農業者の経済的社会的地位の向上を図り、もつて国民経済の発展に寄与することを目的とする。
第二条 この法律において「農業者」とは、農民又は農業を営む法人(その常時使用する従業員の数が三百人を超え、かつ、その資本金の額又は出資の総額が三億円を超える法人を除く。)をいう。
○2 この法律において「農民」とは、自ら農業を営み、又は農業に従事する個人をいう。
○3 この法律において「農業」とは、耕作、養畜又は養蚕の業務(これらに付随する業務を含む。)をいう。
○4 自ら前項に掲げる業務を営み、又はこれに従事する者が行う薪炭生産の業務(これに付随する業務を含む。)は、この法律の適用については、農業とみなす。
第二章 農業協同組合及び農業協同組合連合会
第一節 通則
第三条 農業協同組合又は農業協同組合連合会は、その名称中に農業協同組合又は農業協同組合連合会という文字を用いなければならない。
○2 農業協同組合又は農業協同組合連合会でない者は、その名称中に農業協同組合又は農業協同組合連合会という文字を用いてはならない。
第四条 農業協同組合及び農業協同組合連合会(以下「組合」と総称する。)は、法人とする。
第五条 組合が、その事業の利用分量の割合に応じて行つた剰余金の配当(第七条第三項において「事業利用分量配当」という。)に相当する金額は、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)の定めるところにより、当該組合の同法に規定する各事業年度の所得の金額又は各連結事業年度の連結所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
第六条 組合の住所は、その主たる事務所の所在地にあるものとする。
第七条 組合は、その行う事業によつてその組合員及び会員のために最大の奉仕をすることを目的とする。
○2 組合は、その事業を行うに当たつては、農業所得の増大に最大限の配慮をしなければならない。
○3 組合は、農畜産物の販売その他の事業において、事業の的確な遂行により高い収益性を実現し、事業から生じた収益をもつて、経営の健全性を確保しつつ事業の成長発展を図るための投資又は事業利用分量配当に充てるよう努めなければならない。
第八条 組合は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号。以下「私的独占禁止法」という。)の適用については、これを私的独占禁止法第二十二条第一号及び第三号に掲げる要件を備える組合とみなす。
第九条 組合は、政令で定めるところにより、登記をしなければならない。
○2 前項の規定により登記を必要とする事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
第二節 事業
第十条 組合は、次の事業の全部又は一部を行うことができる。
一 組合員(農業協同組合連合会にあつては、その農業協同組合連合会を直接又は間接に構成する者。次項及び第四項並びに第十一条の五十第三項及び第九項を除き、以下この節において同じ。)のためにする農業の経営及び技術の向上に関する指導
二 組合員の事業又は生活に必要な資金の貸付け
三 組合員の貯金又は定期積金の受入れ
四 組合員の事業又は生活に必要な物資の供給
五 組合員の事業又は生活に必要な共同利用施設(医療又は老人の福祉に関するものを除く。)の設置
六 農作業の共同化その他農業労働の効率の増進に関する施設
七 農業の目的に供される土地の造成、改良若しくは管理、農業の目的に供するための土地の売渡し、貸付け若しくは交換又は農業水利施設の設置若しくは管理
八 組合員の生産する物資の運搬、加工、保管又は販売
九 農村工業に関する施設
十 共済に関する施設
十一 医療に関する施設
十二 老人の福祉に関する施設
十三 農村の生活及び文化の改善に関する施設
十四 組合員の経済的地位の改善のためにする団体協約の締結
十五 前各号の事業に附帯する事業
(後略)
「法令全書」より