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 今日は、昭和時代後期の1972年(昭和47)に、第17回ユネスコ総会(於:パリ)において「世界遺産条約」が採択された日です。
 この条約は、正式名称を「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(Convention Concerning the Protection of the World Cultural and Natural Heritage)」といい、顕著な普遍的価値を有する文化遺産及び自然遺産の保護を目的とした国際条約とされてきました。
 1972年(昭和47)にパリで開催された第17回会期国際連合教育科学文化機関(UNESCO)総会(10月17日~11月21日)において、11月16日に採択され、1975年(昭和50)12月17日に発効しましたが、日本では、1992年(平成4)6月19日に国会承認され、同年9月30日に日本国について発効しています。
 文化遺産及び自然遺産を人類全体のための世界の遺産として損傷、破壊等の脅威から保護し、保存するための国際的な協力及び援助の体制を確立することを目的とし、(1)保護の対象は、記念工作物、建造物群、遺跡、自然の地域等で普遍的価値を有するもの(第1~3条)、(2)締約国は、自国内に存在する遺産を保護する義務を認識し、最善を尽くす(第4条)、また、自国内に存在する遺産については、保護に協力することが国際社会全体の義務であることを認識する(第6条)、(3)「世界遺産委員会」(委員国は締約国から選出)の設置(第8条)、同委員会は,各締約国が推薦する候補物件を審査し、その結果に基づいて「世界遺産一覧表」を作成するほか、締約国の要請に基づき、同一覧表に記載された物件の保護のための国際的援助の供与を決定する。同委員会の決定は、出席しかつ投票する委員国の三分の二以上の多数による議決で行う(第11条,第13条)、(4)締約国の分担金(ユネスコ分担金の1%を超えない額(我が国の場合,2017年は約3,500万円)及び任意拠出金,その他の寄付金等を財源とする,「遺産」のための「世界遺産基金」を設立(第15条,第16条)、(5)「世界遺産委員会」が供与する国際的援助は、調査・研究、専門家派遣、研修、機材供与、資金協力等の形をとる(第22条)、(6)締約国は、自国民が「遺産」を評価し尊重することを強化するための教育・広報活動に努める(第27条)などを規定しています。
 2018年(平成30)7月現在で、締約国数は193ヶ国で、エジプトのピラミッド、中国の万里の長城、米国のグランドキャニオン国立公園など合計1,073件が世界遺産リストに登録(文化遺産:832件、自然遺産:206件、複合遺産:35件)されました。
 日本では、1993年(平成5)12月に、「法隆寺地域の仏教建造物」(奈良県生駒郡斑鳩町)「姫路城」(兵庫県姫路市)、古都京都の文化財登録(京都府、滋賀県)の3件が登録されたのを最初として、順次増やされていき、現在21件(文化遺産:17件、自然遺産:4件)が登録されています。

〇世界遺産とは?

 世界遺産は、1972年(昭和47)のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)に基づいて世界遺産リストに登録された、遺跡、景観、自然など、人類が共有すべき「顕著な普遍的価値」を持つ物件のことで、移動が不可能な不動産やそれに準ずるものが対象となっていて、文化遺産、自然遺産、複合遺産の3つの種類があります。
 文化遺産は、顕著な普遍的価値を有する記念物、建造物群、遺跡、文科的景観などで、自然遺産は、顕著な普遍的価値を有する地形や地質、生態系、絶滅のおそれのある動植物の生態・生育地などで、複合遺産は、文化遺産と自然遺産の両方の価値を兼ね備えているものとなっています。
 世界遺産リストに登録されるためには、「世界遺産条約履行のための作業指針」で示されている下記の登録基準のいずれか1つ以上に合致するとともに、真実性(オーセンティシティ)や完全性(インテグリティ)の条件を満たし、締約国の国内法によって、適切な保護管理体制がとられていることが必要とされています。

☆日本の世界遺産一覧(21件)

<文化遺産>
・法隆寺地域の仏教建造物(奈良県生駒郡斑鳩町) 登録基準´↓きΑ1993年(平成5)12月登録
【構成遺産】法隆寺、法起寺
・姫路城(兵庫県姫路市) 登録基準´ぁ1993年(平成5)12月登録
【構成遺産】姫路城
・古都京都の文化財(京都府、滋賀県)登録基準↓ぁ1994年(平成6)12月登録
【構成遺産】賀茂別雷神社(上賀茂神社)、賀茂御祖神社(下鴨神社)、教王護国寺(東寺)、清水寺、延暦寺、醍醐寺、仁和寺(別称・御室御所)、平等院、宇治上神社、高山寺、西芳寺(別称・苔寺)、天龍寺、鹿苑寺(相国寺塔頭、別称・金閣寺)、慈照寺(相国寺塔頭、別称・銀閣寺)、龍安寺(妙心寺塔頭)、西本願寺(本願寺)、二条城
・白川郷・五箇山の合掌造り集落(富山県、岐阜県)登録基準きァ1995年(平成7)12月登録
【構成遺産】白川郷荻町集落、五箇山相倉集落、五箇山菅沼集落
・原爆ドーム(広島県広島市) 登録基準Α1996年(平成8)12月
【構成遺産】原爆ドーム
・厳島神社(広島県廿日市市) 登録基準´↓きΑ1996年(平成8)12月登録
【構成遺産】厳島神社
・古都奈良の文化財(奈良県奈良市) 登録基準↓きΑ1998年(平成10)12月登録
【構成遺産】東大寺、興福寺、春日大社、元興寺、薬師寺、唐招提寺、平城宮跡、春日山原始林
・日光の社寺(栃木県日光市) 登録基準´きΑ1999年(平成11)12月登録
【構成遺産】日光東照宮、日光二荒山神社(別宮本宮神社、別宮滝尾神社を含む)、日光山輪王寺
・琉球王国のグスク及び関連遺産群(沖縄県) 登録基準↓Α2000年(平成12)12月登録
【構成遺産】今帰仁城跡、座喜味城跡、勝連城跡、中城城跡、首里城跡、園比屋武御嶽石門、玉陵、識名園、斎場御嶽
・紀伊山地の霊場と参詣道(和歌山県、奈良県、三重県) 登録基準↓きΑ2004年(平成16)7月登録
【構成遺産】吉野・大峯(吉野山、吉野水分神社、金峯神社、金峯山寺、吉水神社、大峰山寺)、熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社、青岸渡寺、那智大滝、那智原始林、補陀洛山寺)、高野山(丹生都比売神社、金剛峯寺、慈尊院、丹生官省符神社)、参詣道(大峯奥駈道、熊野参詣道、高野山町石道)
・石見銀山遺跡とその文化的景観(島根県大田市) 登録基準↓ァ2007年(平成19)6月登録
【構成遺産】銀鉱山跡と鉱山町(銀山柵内、代官所跡、矢滝城跡、矢筈城跡、 石見城跡、大森銀山伝統的重要建造物群保存地区、宮ノ前地区、重要文化財 熊谷家住宅、羅漢寺五百羅漢、佐毘売山神社)、石見銀山街道(鞆ヶ浦道、温泉津沖泊道)、港と港町(鞆ヶ浦、沖泊、温泉津重要伝統的建造物群保存地区)、その他周辺(石見銀山処刑場、千人壷、胴地蔵、人切岩)
・平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群―(岩手県西磐井郡平泉町) 登録基準↓Α2011年(平成23)6月登録
【構成遺産】中尊寺、毛越寺、観自在王院跡、無量光院跡、金鶏山
・富士山―信仰の対象と芸術の源泉(静岡県、山梨県) 登録基準Α2013年(平成25)6月登録
【構成遺産】富士山域(山頂の信仰遺跡群、大宮・村山口登山道、須山口登山道、須走口登山道、吉田口登山道、北口本宮冨士浅間神社、西湖、精進湖、本栖湖、青木ヶ原樹海)、富士山本宮浅間大社、山宮浅間神社、村山浅間神社、須山浅間神社、冨士浅間神社(須走浅間神社)、河口浅間神社 、冨士御室浅間神社、御師住宅(旧外川家住宅)、御師住宅(小佐野家住宅)、山中湖、河口湖、忍野八海(出口池)、忍野八海(お釜池)、忍野八海(底抜池)、忍野八海(銚子池)、忍野八海(湧池)、忍野八海(濁池)、忍野八海(鏡池)、忍野八海(菖蒲池)、船津胎内樹型、吉田胎内樹型、人穴富士講遺跡、白糸ノ滝、三保松原
・富岡製糸場と絹産業遺産群(群馬県) 登録基準↓ぁ2014年(平成26)6月登録
【構成遺産】富岡製糸場、田島弥平旧宅、高山社跡、荒船風穴
・明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業(山口県、鹿児島県、静岡県、岩手県他) 登録基準↓ぁ2015年(平成27)7月登録
【構成遺産】萩反射炉・恵美須ヶ鼻造船所跡・大板山たたら製鉄遺跡・萩城下町・松下村塾(山口県萩市)、旧集成館・寺山炭窯跡・関吉の疎水溝(鹿児島県鹿児島市)、韮山反射炉(静岡県伊豆の国市)、橋野鉄鉱山(岩手県釜石市)、三重津海軍所跡(佐賀県佐賀市)、小菅修船場、三菱長崎造船所 第三船渠・長崎造船所 ジャイアントカンチレバークレーン・長崎造船所旧木型場・長崎造船所 占勝閣・高島炭鉱・端島炭鉱・旧グラバー住宅(長崎県長崎市)、三角西(旧)港(熊本県宇城市)、三池炭鉱 三池港(福岡県・熊本県)、官営八幡製鐵所(福岡県北九州市)、遠賀川水源地ポンプ室(福岡県中間市)
・ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-(東京都台東区) 登録基準´↓Α2016年(平成28)7月登録
【構成遺産】国立西洋美術館本館
・長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産(長崎県、熊本県) 登録基準―2018年(平成30)6月登録
【構成遺産】大浦天主堂・外海の出津集落・外海の大野集落(長崎県長崎市)、原城跡(長崎県南島原市)、黒島の集落(長崎県佐世保市)、平戸島の聖地と集落=安満岳と春日集落・中江ノ島(長崎県平戸市)、野崎島の集落跡(長崎県北松浦郡小値賀町)、頭ヶ島の集落(長崎県南松浦郡新上五島町)、久賀島の集落・奈留島の江上集落(長崎県五島市)、天草の﨑津集落(熊本県天草市)

<自然遺産>
・屋久島(鹿児島県熊毛郡屋久島町) 登録基準Л―1993年(平成5)12月登録
・白神山地(青森県、秋田県) 登録基準―1993年(平成5)12月登録
・知床(北海道) 登録基準―2005年(平成17)7月登録
・小笠原諸島(東京都小笠原村) 登録基準―2011年(平成23)6月登録

(登録基準の内容)
人類の創造的才能を表現する傑作。
ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
ある文化(または複数の文化)を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例。
顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)。
ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。