平林初之輔(ひらばやし はつのすけ)は、京都府竹野郡深田村字黒部(現在の京丹後市黒部)に生まれました。
早稲田大学文学部英文科に入学し、片上伸や吉江喬松らに親しみ、アテネ・フランセでフランス語を学びます。1917年(大正6)に卒業後、翌年にやまと新聞に入社し、文芸時評を担当、また、フランス文学のヴィクトル・ユゴーなどの小説を翻訳して掲載しました。
1920年(大正9)の労働争議を契機に退社し、国際通信社に移って、青野季吉らとマルクス主義を研究し始めます。翌年の『唯物史観と文学』で認められ、1922年(大正11)に、雑誌『種蒔く人』に参加、唯物史観に基づく文学理論を展開、初期プロレタリア文学の理論的指導者として活躍しました。
翌年、評論集『無産階級と文学』を刊行して高く評価され、また、ジャンジャック・ルソーの『エミール』を柳田泉と共訳(1924年)しています。
1926年(大正15)に博文館に入社し、『太陽』誌の編集主幹となり、1929年(昭和4)に評論『政治的価値と芸術的価値』を書いて、プロレタリア文学理論の矛盾をついて論争を引き起こしました。
1931年(昭和6)に、フランスのパリで開催された第1回国際文芸作家協会大会に日本代表として出席しましたが、同年6月15日に、出血性膵臓炎のため同地において、38歳の若さで客死しています。
〇平林初之輔の主要な著作
・『唯物史観と文学』(1921年)
・『無産階級の文化』(1923年)
・『日本自由主義発達史』 日本評論社(1924年)
・訳書『エミール』ルソー作 柳田泉共訳 春秋社(1924年)
・訳書『グリイン家の惨劇』 ヴァン・ダイン作 博文館(1928年)
・評論『政治的価値と芸術的価値』(1929年)
・評論『文学理論の諸問題』(1929年)