イメージ 1

 今日は、昭和時代中期の1946年(昭和21)に、「労働関係調整法」が公布された日です。
 「労働関係調整法」(昭和21年9月27日法律第25号)は、労働関係の公正な調整を図り、労働争議の予防または解決を目的とした法律として制定されました。「労働組合法」、「労働基準法」と共に労働三法と呼ばれていて、“労調法”とも略されています。
 太平洋戦争前にも、労働争議に関する法律として、1926年(大正15)4月制定の「労働争議調停法」がありましたが、労使紛争解決を目的とするというよりも、労働争議を国家権力によって抑え込むことに利用され、治安立法的色彩が強いものでした。
 戦後民主化措置の一つとして、1945年(昭和20)12月22日「労働組合法」が制定されましたが、戦争直後の民主主義高揚を反映した画期的なものでした。労働争議に対する刑事・民事免責を規定したほか、使用者による労働者の組合結成・加入や組合活動に対する不利益取扱い、黄犬契約を刑罰をもって禁止、労働協約の規範的効力や一般的拘束力の制度を設けます。(1948年7月に全面改訂される)
 その中で、食糧難の打開、生活苦の改善、民主主義の要求などを掲げて、多数の労働組合が結成され、労働運動が活発化しました。
 労働争議が頻発するようになり、1946年(昭和21)後半から空前の盛り上がりを見せますが、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)は徐々に抑圧の方向へと向かいました。そのもとで、吉田内閣は6月13日に「社会秩序保持声明」を出して、労働争議の抑え込みを狙い、それを法的に整備したのが、「労働関係調整法」で、労働組合の激しい反対を押し切って成立、9月27日に公布されます。
 この法律の目的は、「労働組合法と相俟つて、労働関係の公正な調整を図り、労働争議を予防し、又は解決して、産業の平和を維持し、もつて経済の興隆に寄与すること」(第1条)とし、調整方法として斡旋、調停、仲裁などを定めました。しかし、公益事業の争議行為は調停申請後30日立たなければ行えないとしたことや行政司法事務職員(警察官・消防職員・監獄職員・現業以外)の争議行為禁止などが含まれていて問題とされました。
 その後、1949年(昭和24)6月に改正され、さらに1952年(昭和27)7月の緊急調整制度を新設するための改正など、何度かの改正を経て、現行法に至っています。
 以下に、「労働関係調整法」第一章(総則)のみを掲載しておきますので、ご参照ください。

〇労働関係調整法(抄文)第一章のみ 1946年(昭和21)9月27日公布 10月13日施行

第一章 総則

第一条 この法律は、労働組合法と相俟つて、労働関係の公正な調整を図り、労働争議を予防し、又は解決して、産業の平和を維持し、もつて経済の興隆に寄与することを目的とする。

第二条 労働関係の当事者は、互に労働関係を適正化するやうに、労働協約中に、常に労働関係の調整を図るための正規の機関の設置及びその運営に関する事項を定めるやうに、且つ労働争議が発生したときは、誠意をもつて自主的にこれを解決するやうに、特に努力しなければならない。

第三条 政府は、労働関係に関する主張が一致しない場合に、労働関係の当事者が、これを自主的に調整することに対し助力を与へ、これによつて争議行為をできるだけ防止することに努めなければならない。

第四条 この法律は、労働関係の当事者が、直接の協議又は団体交渉によつて、労働条件その他労働関係に関する事項を定め、又は労働関係に関する主張の不一致を調整することを妨げるものでないとともに、又、労働関係の当事者が、かかる努力をする責務を免除するものではない。

第五条 この法律によつて労働関係の調整をなす場合には、当事者及び労働委員会その他の関係機関は、できるだけ適宜の方法を講じて、事件の迅速な処理を図らなければならない。

第六条 この法律において労働争議とは、労働関係の当事者間において、労働関係に関する主張が一致しないで、そのために争議行為が発生してゐる状態又は発生する虞がある状態をいふ。

第七条 この法律において争議行為とは、同盟罷業、怠業、作業所閉鎖その他労働関係の当事者が、その主張を貫徹することを目的として行ふ行為及びこれに対抗する行為であつて、業務の正常な運営を阻害するものをいふ。

第八条 この法律において公益事業とは、次に掲げる事業であつて、公衆の日常生活に欠くことのできないものをいう。
一 運輸事業
二 郵便、信書便又は電気通信の事業
三 水道、電気又はガスの供給の事業
四 医療又は公衆衛生の事業
2 内閣総理大臣は、前項の事業の外、国会の承認を経て、業務の停廃が国民経済を著しく阻害し、又は公衆の日常生活を著しく危くする事業を、一年以内の期間を限り、公益事業として指定することができる。
3 内閣総理大臣は、前項の規定によつて公益事業の指定をしたときは、遅滞なくその旨を、官報に告示するの外、新聞、ラヂオ等適宜の方法により、公表しなければならない。

第八条の二 中央労働委員会及び都道府県労働委員会に、その行う労働争議の調停又は仲裁に参与させるため、中央労働委員会にあつては厚生労働大臣が、都道府県労働委員会にあつては都道府県知事がそれぞれ特別調整委員を置くことができる。
2 中央労働委員会に置かれる特別調整委員は、厚生労働大臣が、都道府県労働委員会に置かれる特別調整委員は、都道府県知事が任命する。
3 特別調整委員は、使用者を代表する者、労働者を代表する者及び公益を代表する者とする。
4 特別調整委員のうち、使用者を代表する者は使用者団体の推薦に基づいて、労働者を代表する者は労働組合の推薦に基づいて、公益を代表する者は当該労働委員会の使用者を代表する委員(行政執行法人の労働関係に関する法律(昭和二十三年法律第二百五十七号)第二十五条に規定する行政執行法人担当使用者委員(次条において「行政執行法人担当使用者委員」という。)を除く)及び労働者を代表する委員(同法第二十五条に規定する行政執行法人担当労働者委員(次条において「行政執行法人担当労働者委員」という。)を除く。)の同意を得て、任命されるものとする。
5 特別調整委員は、政令で定めるところにより、その職務を行ふために要する費用の弁償を受けることができる。
6 特別調整委員に関する事項は、この法律に定めるものの外、政令でこれを定める。

第八条の三 中央労働委員会が第十条のあつせん員候補者の委嘱及びその名簿の作成、第十二条第一項ただし書の労働委員会の同意、第十八条第四号の労働委員会の決議その他政令で定める事務を処理する場合には、これらの事務の処理には、使用者を代表する委員のうち行政執行法人担当使用者委員以外の委員(第二十一条第一項において「一般企業担当使用者委員」という。)、労働者を代表する委員のうち行政執行法人担当労働者委員以外の委員(第二十一条第一項において「一般企業担当労働者委員」という。)並びに公益を代表する委員のうち会長があらかじめ指名する十人の委員及び会長(第二十一条第一項及び第三十一条の二において「一般企業担当公益委員」という。)のみが参与する。この場合において、中央労働委員会の事務の処理に関し必要な事項は、政令で定める。

第九条 争議行為が発生したときは、その当事者は、直ちにその旨を労働委員会又は都道府県知事に届け出なければならない。

(以下略)