フランシスコ・ザビエルは、以後2年間、九州・中国・近畿の各地で伝道しました。その後キリスト教は、大内義隆や大内義鎮などの保護もあって、機内や九州北部を中心に広がりました。
各地に南蛮寺(教会堂)やコレジオ(宣教師学校)、セミナリオ(神学校)なども建てられ、高山右近などのキリシタン大名(洗礼を受けた大名)も登場して、天正遣欧使節も送られたりします。
しかし、豊臣秀吉により、1587年(天正15)にバテレン追放令が出されるなどして、次第にキリシタン弾圧が始まりました。
江戸時代になると、1612年(慶長17)に幕府直轄領に禁教令が出され、翌年には全国に及ぶようになり、この後は、宣教師や信者の処刑や海外追放などの激しい迫害が始まります。
九州の天草・島原地方を旅すると、キリシタン関係の遺跡に巡り会いますが、島原の乱(1637-1638年)で幕府軍と戦い、全滅した原城跡をはじめ、過酷なキリシタン弾圧の数々がありました。
しかし、その一方で密かに裏に隠れ、江戸時代を通じ、脈々と伝えられてきた隠れキリシタンの事実も存在します。
そこに、民衆の抵抗力の強さと継続がありました。この地方では、現在集落の中心にキリスト教会堂がそびえ、何百年も受け継がれてきた信仰のシンボルとして、今でも多くの村人の尊崇を集めているのです。
尚、これらの一部が、2018年(平成30)6月13日に、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」として、世界文化遺産に登録されました。長崎県長崎市、佐世保市、平戸市、南島原市、北松浦郡小値賀町、南松浦郡新上五島町、五島市、熊本県天草市に点在する、城跡・集落・教会建築などの江戸期潜伏キリシタン(切支丹)関連の12の歴史資産によって構成されています。
〇フランシスコ・ザビエルとは?
戦国時代に日本へ初めてキリスト教を伝えたスペインの宣教師です。1506年に、ナバラ王国(1515年スペインに併合)ザビエルの名門貴族の家に生まれました。
19歳のとき、パリ大学の聖バルバラ学院に学び、1534年に、イグナチウス・デ・ロヨラらとともにイエズス会をおこすのです。1537年には司祭となり、1540年にポルトガル王ジョアン3世の依頼でインドのゴアに派遣されました。
1545年から47年にかけて、マラッカからモルッカ諸島まで布教に従事し、マラッカで会った日本人アンジローの案内で、1549年(天文18)鹿児島へ来航することになります。
これが、日本へのキリスト教伝来の最初となり、以後2年間、九州・中国・近畿の各地で伝道しました。
その後、インドに戻り、さらに中国への伝道の途次、広東付近の上川島で、1552年に46歳で亡くなりなったのです。1622年には、カトリック教会の聖人の位に列せられました。
☆世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成要素一覧
<長崎県>
・長崎市の大浦天主堂:国宝
・長崎市外海の出津集落:重要文化財出津教会堂と旧出津救助院を含む
・長崎市外海の大野集落:重要文化財大野教会堂を含む
・南島原市の原城跡:国指定史跡
・佐世保市の黒島の集落:重要文化財黒島天主堂を含む
・平戸市平戸島の聖地と集落=安満岳と春日集落
・平戸市平戸島の聖地と集落=中江ノ島
・北松浦郡小値賀町野崎島の集落跡:野首集落跡・舟森集落跡および両集落を結ぶ信仰の道、旧野首教会堂を含む
・南松浦郡新上五島町頭ヶ島の集落:重要文化財頭ヶ島天主堂を含む
・五島市久賀島の集落:重要文化財旧五輪教会堂を含む
・五島市奈留島の江上集落(江上天主堂とその周辺):重要文化財江上天主堂を含む
<熊本県>
・天草市天草の﨑津集落