駅弁は、鉄道の駅や列車内で販売されている旅行客用の弁当のことでした。明治時代前期の1885年(明治18)に宇都宮駅(現在、JR東北本線)で売られたのが最初だと言われています。当時は、竹の皮に包んだにぎりめし2個にタクワンを添えただけのものだったそうですが、その後、横川駅、高崎駅(現在、JR信越本線)などに広がり、種類も豊富になっていきました。
駅に列車が停車すると、窓を開けて「駅弁一つ」と怒鳴ると、首から大きな箱を下げた売り子が駆けていく、なんて光景がどこの駅でもみられたものです。しかし、最近は駅弁売りの姿もめっきり少なくなり、「べんとう~、べんとう~」と言う売り子の声もほとんど聞けなくなってしまいました。
また、駅弁の値段も上がって、1,000 円は当たり前、 2,000円、 3,000円する豪華なものまで販売されています。
私は、汽車旅が好きで、日本中の線路を乗り回り、その途中で色々な駅弁を食べましたが、全国には歴史や特色のある駅弁が多数ありますので、その中からのお勧めを掲載しておきます。
☆歴史ある「駅弁」のお勧め
(1)“いかめし”(JR函館本線森駅)
1941年(昭和16)に、当時豊漁だったスルメイカの中に米を入れて炊き上げて、「阿部弁当店」が函館本線森駅の駅弁として売り出したところ、もち米入りで腹持ちが良いと評判になり、現在でも、780円(税込)で販売が続けられています。全国の人気駅弁の一つで、都市部のデパート等の北海道物産展や駅弁大会でも人気を博しています。
(2)“だるま弁当”(JR信越本線高崎駅)
1960年(昭和35)から、信越本線高崎駅で、「高崎弁当(たかべん)」により販売が開始されました。名物駅弁の一つで、だるま型の容器の中の、茶飯風の炊き込みごはんの上に、筍・こんにゃく・栗・牛蒡・鶏肉などのおかずが載せられ、現在は1,000円(税込)で販売されています。発売当初は陶磁器の容器が使われていましたが、1973年(昭和48)にプラスチック製の赤い容器に切り替えられました。容器は、食べ終わった後に貯金箱として利用することもできます。
(3)“峠の釜めし”(JR信越本線横川駅・軽井沢駅)
1958年(昭和33)から、信越本線横川駅で、「荻野屋」により販売が開始されました。名物駅弁の一つで、益子焼の容器(釜)に入った薄い醤油味の出汁による炊き込みご飯で、とり肉、えび、かきなどが入いり、漬物が付いて 1,000円(税込)です。蓋をとったときの香ばしさと、ふっくらとした味わいは忘れがたいものです。全国で最も売れている駅弁の一つですが、北陸新幹線の開通とともに、横川駅~軽井沢駅の線路廃止に伴い、現在はJR信越本線横川駅・軽井沢駅・北陸新幹線安中榛名駅売店等やドライブインなどでも販売されています。
(4)“ますのすし”(JR北陸新幹線富山駅)
1912年(明治45)より北陸本線富山駅で、「源(みなもと)」により販売開始された駅弁でした。鱒(サクラマス)を用いて発酵させずに酢で味付けした押し寿司で、現在は、1,400円(税込)です。全国の人気駅弁の一つで、都市部のデパート等の北陸・富山物産展や駅弁大会でも人気を博しています。
(5)“越前かにめし”(JR北陸本線福井駅)
1961年(昭和36)より北陸本線福井駅で、「番匠本店」により販売開始された駅弁でした。ズワイガニの雌・セイコガニの赤肉と卵巣、みそなどをほぐし炊き込んだご飯の上に、カニのほぐし身をのせたもので、現在は、1,250円(税込)で販売されています。全国の人気駅弁の一つで、都市部のデパート等の北陸・福井物産展や駅弁大会でも、常に人気の上位を占めています。
(6)“あなごめし”(JR山陽本線宮島口駅)
1901年(明治34)より山陽本線宮島駅(現在の宮島口駅)で、「うえの」により販売開始された駅弁でした。穴子のアラで炊き込んだ醤油味飯の上に穴子をびっしりと敷き詰めたもので、現在はレギュラーサイズが、1,944円(税込)で販売されています。全国で最も人気のある駅弁の一つで、創業以来の味が守り通されています。