ガウスの歴史を巡るブログ(その日にあった過去の出来事)

 学生時代からの大の旅行好きで、日本中を旅して回りました。その中でいろいろと歴史に関わる所を巡ってきましたが、日々に関わる歴史上の出来事や感想を紹介します。Yahooブログ閉鎖に伴い、こちらに移動しました。

2018年06月

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 今日は、昭和時代前期の1943年(昭和18)に、「学徒戦時動員体制確立要綱」が東条英機内閣によって、閣議決定された日です。
 これは、戦局が進展する中、軍動員の増加に伴なって、軍需部門を中心に産業界の労働力不足が深刻化したため、学生・生徒を軍需産業に従事(学徒勤労動員)させ、戦技・特技・防空訓練を図り、女子は救護訓練を行なうようにしたものでした。
 すでに、1938年(昭和13)6月9日の文部省「集団的勤労作業実施に関する通牒」により、学生・生徒は長期休業中に3~5日勤労奉仕することを義務付けられていましたが、学徒勤労が決戦教育体制として位置づけられます。
 この決定は、学徒の戦時動員体制を確立して、「有事即応ノ態勢」に置くことと、「勤労動員ヲ強化」することがねらいでしたが、その後敗戦まで、どんどん強化されていくことになりました。

〇「学徒勤労動員」とは?

 昭和時代前期の日中戦争最中の1938年(昭和13)6月に、文部省「集団的勤労作業実施に関する通牒」が出され、学生・生徒は長期休業中に3〜5日勤労奉仕することを義務づけられました。それを恒常化したのが1939年(昭和14)の木炭や食料の増産運動からで、学生・生徒は正課として作業に参加することになったのです。
 さらに、1941年(昭和16)2月には、年間30日の授業を勤労作業にあててよいという指示が出され、同年8月には学校報国隊が結成されました。
 その後、太平洋戦争に突入し、軍需部門を中心に労働力不足が深刻化したため、1943年(昭和18)6月24日に、東条内閣によって、「学徒戦時動員体制確立要綱」が出され、学徒勤労が決戦教育体制として位置づけられ、同年10月の「教育に関する戦時措置方策」で、年間の3分の1を勤労にあててよいこととなります。
 翌年1月には勤労動員は年間4ヶ月を継続して行うことが義務づけられ、3月には通年実施と決定し、どんどん拡大していきました。その法令上の措置として、1944年(昭和19)8月23日に公布・施行されたものが、「学徒勤労令」で、同じ日に「女子挺身隊勤労令」も出されます。
 その後、動員は徹底的に強化され、11月には夜間学校の学徒や弱体のためそれまで動員から除外されていた学徒の動員が拓令されました。また、12月には中等学校卒業者の勤労動員継続の措置が決まり、翌年3月卒業後も引き続いて学徒勤労を継続させるため中等学校に付設課程を設け、これに進学させることとします。
 このような学徒の全面的な動員に対して、政府は12月「動員学徒援護事業要綱」を閣議決定し、これに基づいて動員学徒援護会が設置されました。
 以後、この勅令は、昭和20年勅令第96号および同勅令第510号により2度改正がなされて、強化されます。
 この結果、敗戦時での動員学徒数は340万人を超えたといわれ、学徒動員による空襲等による死亡者は10,966人、傷病者は9,789人にも及びました。
 しかし、太平洋戦争敗戦後の「国民勤労動員令廃止等ノ件」(昭和20年勅令第566号)により、1945年(昭和20)10月11日をもって、この勅令は廃止されることになります。

〇「学徒戦時動員体制確立要綱」 1943年(昭和18)6月25日 閣議決定

第一 方針

大東亜戦争ノ現段階ニ対処シ教育練成内容ノ一環トシテ学徒ノ戦時動員体制ヲ確立シ学徒ヲシテ有事即応ノ態勢タラシムルト共ニ之ガ勤労動員ヲ強化シテ学徒尽忠ノ至誠ヲ傾ケ其ノ総力ヲ戦力増強ニ結集セシメントス

第二 要領

一 有事即応態勢ノ確立
学徒ヲシテ将来ノ軍務ニ備へ国防能力増強ヲ図ラシムルト共ニ必要ニ当リテハ直接国土防衛ニ全面的ニ協力セシムルモノトシ之ガ為概ネ左記各項ノ方途ヲ講ズ
(一)学校報国団ノ隊組織ヲ直チニ国土防衛ニ有効ニ動員シ得ル如ク強化ス
(二)「戦時学徒体育訓練実施要綱」ニ基ク体育訓練ヲ強化シ特ニ大学、高等専門学校、中等学校第三学年程度以上ノ男子学徒ニ付戦技訓練ヲ徹底ス
(三)前項ノ学徒ニ付航空、海洋、機甲、馬事、通信等ノ特技訓練ノ強化ヲ図ル為学徒ノ適性登録制度ヲ確立シ本人ノ適性ニ従ヒ特技訓練ヲ実施ス
(四)基本訓練種目、戦技訓練種目及特技訓練種目ニ付中等学校ヨリ大学ニ至ル訓練教程ヲ総合的且各学校ノ段階ニ適応スル如ク制定シ以テ訓練ノ適正ト徹底ヲ図ル
(五)学徒全員ニ対スル防空訓練ヲ徹底スルト共ニ防空勤務補助員トシテノ訓練ヲ強化スルモノトシ特ニ特技隊及特別警備隊トシテノ訓練ヲ強化ス
(六)中等学校以上ノ女子学徒ニ対シ看護其ノ他保健衛生ニ関スル訓練ヲ強化シ必要ニ際シ戦時救護ニ従事セシメルモノトシ之ガ為必要ナル施設ヲ整備ス
二 勤労動員ノ強化
学徒ヲシテ挺身国家緊要ノ業務ニ従事セシメ其ノ心身ノ錬成ヲ全カラシムモノトシ左記各項ニ依リ食糧増産、国防施設建設、緊要物資生産、輸送力増強等ニ其ノ重点ヲ指向シ之ガ積極強力ナル動員ヲ図ル
(一) 勤労動員ハ国民動員ノ要請ニ即応シ学校ノ種類程度ニ応ズル作業種目ノ適正ナル選択ニ依リ作業効率ノ向上、作業量ノ増嵩ヲ図ル
(二)勤労動員ノ期間ハ学校ノ種類程度ト作業種目ヲ勘案ノ上国家ノ要請ニ即応セシム
(三)作業ト学校トノ臨時且分散的ナル関係ヲ可及的改メ力メテ之ヲ常時且集注的ナラシム
(四)勤労作業ノ対象タル事業ノ管理者ニ対シ学徒勤労作業ノ意義ヲ徹底セシムルト共ニ学徒ニ対シ事業ノ性質ヲ十分理解セシメ尚学校当事者ト事業管理者ノ緊密ナル連繋ニ依リ作業場ニ於ケル学徒ノ取扱ヲ一層適正ナラシム
(五)員数及期間ガ相当多数且長期ニ亘ル学徒ノ動員ニ付テハ学校移駐ノ考ヘ方等ニ依リ之ヲ実施セシム
(六)学徒ノ養護ニ一層周到ナル注意ヲ払ヒ作業ノ種類性質ニ即応スル学徒ノ配置ヲ行ヒ作業ニ因ル傷痍其ノ他ノ事故ノ予防救護ニ遺憾ナカラシム
(七)食糧増産作業ニ付テハ食糧増産応急対策(閣議決定)ニ即応シ従来実施シ来レル農科応援作業等ヲ強化スルノ外左記各項ノ方途ヲ講ズ
(イ)耕作廃止畑、伐戈跡地、河川敷、工場建業予定地等空閑地ニ付極力学校直営ノ学校報国農場ヲ創設セシメ米、麦、大豆、馬鈴薯、甘藷等ヲ栽培セシム
(ロ)既設ノ学校報国農場其ノ他ノ付属農園ニ付テハ米、麦、大豆、馬鈴薯、甘藷等ヲ栽培セシメ学校附属ノ農業実習地及一般学校用地ニ付テモ主要食糧及雑穀ヲ栽培セシム
(ハ)収穫物ノ運搬、害虫駆除、除草、緑肥刈取等ニ付学校ノ種類、程度、所在地等ヲ勘案シ特定ノ学校ヲシテ可及的一定地域ノ作業ヲ担当セシメ以テ学校ト作業地トノ緊結ヲ図ル
(二)可耕荒廃地、開墾可能地ノ簡易開墾、湿地埋立、排水施設ノ整備、耕地整理、牧野改良等ニ付テハ一校又ハ数校ヲ特定シテ力メテ一貫作業ヲ目途トシテ之ガ完成ニ協力セシム
(八)各種ノ工場事業場等ニ於ケル勤労動員ニ付テハ特ニ左記各項ヲ考慮シ之ガ実効ヲ収メシム
(イ)学校ノ種類、程度及土地ノ情況ヲ勘案シ適当ナル計画ヲ得タル場合ハ通年常時循環シテ計画的ニ一定要員ヲ出動セシム
(ロ)学徒ノ専門技能ハ力メテ之ヲ活用ス
(ハ)学校ノ実習場等ニ於テモ工場ト連繋ヲ密ニシ其ノ委託作業ニ従事セシム
(九)女子ニ在リテハ前各項ニ依ルノ外特ニ中等学校以上ノ学校ニ付工場地域、農村等ニ簡易又ハ季節的幼稚園、保育所及共同炊事場ヲ設置セシメ又ハ他ノ経営スル斯種施設ニ於テ保育等ニ従事セシム

第三 措置

一、学徒動員ノ運営ヲ適正ナラシメ且其ノ効率ノ向上ヲ図ル為文部省ハ学徒動員ニ関スル機構ヲ整備スルト共ニ関係ノ各庁及諸団体ノ連絡協議会ヲ設置ス
二、学校報国団中央及地方本部ノ組織及機能ノ整備強化ヲ図ル
三、本件実施ニ要スル経費ニ付テハ既ニ成立セル予算ノ活用ヲ図ルノ外要スレバ必要ナル予算的措置ヲ講ズ

     「国立国会図書館 リサーチナビ」より

☆学徒勤労動員関係略年表

<1938年(昭和13)>
・6月 文部省「集団的勤労作業実施に関する通牒」が出され、学生・生徒は長期休業中に3〜5日勤労奉仕することを義務づけられる

<1939年(昭和14)>
・3月 文部省は中等学校以上に対し、集団勤労作業を「漸次恒久化」し、学校の休業時以外も随時これを行ない、正課に準じることを指示する

<1941年(昭和16)>
・2月 「青少年学徒食糧飼料等増産運動実施要項」で、年間30日の授業を勤労作業にあててよいという指示が出される
・8月 文部省の指示によって全国の諸学校において学校報国隊が結成される
・12月8日 太平洋戦争に突入

<1943年(昭和18)>
・6月24日 東条内閣によって、「学徒戦時動員体制確立要綱」が出され、学徒勤労が決戦教育体制として位置づけられる
・10月 「教育に関する戦時措置方策」で、年間の3分の1を勤労にあててよいこととなる

<1944年(昭和19)>
・1月 「緊急学徒勤労動員方策要綱」が出され、勤労動員は年間4ヶ月を継続して行うことが義務づけられる
・2月25日 閣議において「決戦非常措置要綱」が決定される
・3月 「決戦非常措置要綱ニ基ク学徒動員実施要綱」で、勤労動員は通年実施となる
・4月 「学徒勤労動員実施要領ニ関スル件」で軍需工場へ動員されるようになる
・7月 文部省「学徒勤労ノ徹底強化ニ関スル件」が出され、中等学校低学年生徒の動員、深夜業を中等学校3年以上の男子だけでなく女子学徒にも課すことを指令
・8月23日 法令上の措置として、「学徒勤労令」が公布・施行される
・8月23日 「女子挺身隊勤労令」が出される
・11月 夜間学校の学徒や弱体のためそれまで動員から除外されていた学徒の動員が拓令される
・12月 中等学校卒業者の勤労動員継続の措置が決まり、翌年3月卒業後も引き続いて学徒勤労を継続させるため中等学校に付設課程を設け、これに進学させることとなる
・12月 「動員学徒援護事業要綱」を閣議決定し、動員学徒援護会が設置される

<1945年(昭和20)>
・3月 「決戦教育措置要綱」が閣議決定され、一年の授業停止による学徒勤労総動員の体制がとられる
・5月22日 「戦時教育令」が公布される
・8月15日 「ポツダム宣言」を受諾する玉音放送が流され、太平洋戦争に敗れる
・10月11日 「国民勤労動員令廃止等ノ件」(昭和20年勅令第566号)により、勅令が廃止される
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 今日は、昭和時代前期の1940年(昭和15)に、近衛文麿による「新体制運動」が開始された日です。
 これは、近衛文麿が中心となり、ドイツのナチ党やイタリアのファシスト党を模して、ファッショ的政治体制樹立のため、一国一党の国民組織を結成しようとした政治運動でした。
 日中戦争の泥沼化、1939年9月のドイツ軍によるポーランド侵攻による第2次世界大戦の突発、それに伴うインフレ、物資不足、労農争議の増加など、政治・経済上の危機の増大、国民の不満の鬱積等の中で、現状を打開する方策がいろいろと検討されます。近衛文麿の側近の後藤隆之助、有馬頼寧、風見章らは,官僚や学者等を集めた「昭和研究会」をつくり、新しい国民組織をつくり上げて国民を統合し、新しい社会体制を建設する構想をまとめました。
 それに基づいて、1940年(昭和15)6月24日に、近衛文麿が枢密院議長を辞任し、記者会見において声明を出して、「新体制運動」が開始されます。
 軍部も「米内内閣打倒、近衛内閣樹立」運動を行い、その結果、7月22日に発足した第2次近衛内閣は、これをうけて基本国策要綱で「国内体制の刷新」と「強力な新政治体制の確立」をうたい、新体制準備会が結成されました。
 そして、各政党、労働組合も自発的に解散し、10月12日には、「大政翼賛会」が発足して、日本型のファシズム体制の確立へと向かいます。この過程で、国民は隣組、部落会、町内会などの地方自治組織と官製国民運動団体という2つのルートを通じ、ファシズム体制に組織されていくことになりました。

〇「新体制運動」関係年表(新体制運動開始~太平洋戦争開戦まで)

<1940年(昭和15)>
・6月24日 近衛文麿による新体制運動が開始される
・7月6日 「奢侈品等製造販売制限規則」(七・七禁令)が交布され、翌日施行される
・7月22日 第2次近衛内閣が発足する
・7月 日本労働総同盟が解散される
・8月1日 東京府が食堂・料理屋などでの米食使用を禁止し、販売時間制を実施する
・8月1日 東京に「ぜいたくは敵だ!」の立看板1,500本が立てられる
・8月15日 立憲民政党が解党、大日本農民組合が解散される
・8月19日 新協・新築地両劇団員100余人が検挙される
・8月30日 文部省が学生生徒の映画・演劇鑑賞を土曜・休日に限ると通達する
・9月 鉄道省によって駅構内の英語表記が全面撤廃される
・9月11日 内務省が「部落会町内会等整備要領」を通達し、隣組(隣保班)が制度化される
・9月27日 日独伊三国同盟が調印される
・10月6日 大阪で、女子モンペ部隊が、贅沢全廃強調大行進を行う
・10月10日 「牛乳および乳製品配給統制規則」が交布される
・10月12日 「大政翼賛会」が発足する
・10月24日 農林省令「米穀管理規則」が交布される
・10月31日 東京でダンスホールが完全閉鎖される
・10月31日 タバコの改名が発表される(ゴールデンバット→金鵄、チェリー→桜、カメリア→椿など)
・11月1日 砂糖・マッチ切符制の全国実施がされる
・11月2日 「国民服令」が公布施行され、男子の服装として国民服が定められる
・11月10日 紀元2600年祝賀行事が行われる(昼酒が許可されもち米が特配される)
・11月23日 大日本産業報国会が結成される

<1941年(昭和16)>
・1月1日 全国の映画館で、ニュース映画の強制上映が実施される
・1月11日 「新聞紙等掲載制限令」が公布される
・1月16日 大日本青少年団が結成される
・1月23日 「人口政策要綱」が閣議決定される(「生めよ殖やせよ」の推進)
・1月25日 東京などの商店で午後9時閉店を実施する
・3月1日 「国民学校令」が交布され、尋常小学校(6年)・高等小学校(2年)が、国民学校(初等科6年・高等科2年)に変更される
・3月7日 「国防保安法」が交布される
・3月10日 「治安維持法」改正(予防拘禁制を追加)が交布される
・3月19日 時間外電報が廃止され、慶弔電報の取扱い中止される
・3月19日 厚生省が婦人標準服研究会を組織する
・3月31日 朝鮮総督府、朝鮮語を学習科目から外す
・4月1日 「生活必需物資統制令」が交布される
・4月1日 六大都市で米穀配給通帳制(1日1人2合3勺=約330g)実施、米の配給受け取りに必要となる
・4月上旬 中学校新入生の制服が男子は国民服に戦闘帽、女子は襟を右前にしたへちま型となる
・5月8日 初の「肉なしデー」が実施され、以後月2回とされる(肉屋・食堂で肉の不売実施)
・5月19日 東京市が夏季ビールの配給は1世帯8本と決定する
・6月7日 家庭用食用油の切符制が実施される
・7月1日 全国の隣組、いっせいに常会を開く(以後毎月1日実施)
・7月21日 文部省教学局から『臣民の道』が刊行される
・8月10日 鉄道省がガソリン節約のためガソリンカーの運転を削減する
・8月30日 「金属類回収令」が交布される
・8月30日 大学に教練担当現役将校が配属される
・9月1日 東京市で砂糖・マッチ・小麦粉・食用油の集成配給切符制が実施される
・9月1日 ガソリンを使用するタクシーが禁止される
・10月1日 一般家庭用ガスの使用制限が実施される
・10月4日 「臨時郵便取締令」が公布され、外国郵便を開封検閲するようになる
・10月10日 農林省が芋類の増産と桑園の整理を通牒する
・10月19日 婦人国民服が公募され、入選発表される
・11月 たばこが値上げされる(敷島35銭、朝日25銭、光18銭)
・11月22日 「国民勤労報国協力令」が交布され、14~40歳の男子と14~25歳の未婚女子の年30日以内の勤労奉仕が義務化される
・12月8日 米英両国に宣戦布告、太平洋戦争始まる
・12月8日 日米開戦により、新聞・ラジオの天気予報、気象報道が中止される
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 今日は、明治時代後期の1908年(明治41)に、詩人・小説家国木田独歩(くにきだ どっぽ)の亡くなった日で、「独歩忌」とも呼ばれています。
 国木田独歩は、1871年(明治4年7月15日)に、千葉県銚子(現在の銚子市)で、播州竜野藩士だった父・国木田専八と母・淡路まんの子として生まれましたが、幼名は亀吉(後に哲夫)と言いました。
 1876年(明治9)に父の山口裁判所勤務のため山口に移住し、幼少年期は山口県で育ち、1885年(明治18)に山口中学へ入学して寄宿生活をします。1887年(明治20)に山口中学校を退学して上京し、翌年に東京専門学校(現在の早稲田大学)英語普通科に入学しました。
 1891年(明治24)に植村正久より洗礼を受け、この年、校長と対立して退学します。一端山口県へ帰りますが、翌年再び上京して、浪漫主義の同人誌『青年文学』に参加、1894年(明治27)には、国民新聞に入社して日清戦争に従軍し、『国民新聞』に連載された『愛弟通信』の清新な文章が好評を博します。
 1897年(明治30)に処女小説『源叔父』を書き、また田山花袋、柳田国男、宮崎湖処子らとの共著詩集『抒情詩』に「独歩吟」を載せ、浪漫主義の詩人・小説家として出発しました。翌年『今の武蔵野』『忘れえぬ人々』『鹿狩』など浪漫的な作品を発表し、1901年(明治34)に、これらを収めた短編小説集『武蔵野』を刊行します。
 いくつかの新聞記者や編集者を経て、1902年(明治35)に矢野竜渓の敬業社に入社し、『近事画報』(後の『戦時画報』)で日露戦争の記事を報道しました。『牛肉と馬鈴薯』 (1901年) 、『春の鳥』 (1904年) など9編収載の『独歩集』を1905年(明治37)に刊行、『巡査』 (1902年) 、『空知川の岸辺』 (1902年) など9編所載の『運命』を1906年(明治38) に刊行などにより、自然主義の先駆者として、文壇的地歩を築きます。
 しかし、敬業社の後を受けて独歩社をおこすものの、経営悪化により1908年(明治40)に破産しました。そのころから結核を患いはじめ、湯河原などで療養しましたが、1908年(明治41)6月23日に、神奈川県茅ケ崎の南湖院において、37歳の若さで亡くなります。

〇国木田独歩の主要な作品

・通信文『愛弟通信』(1894~95年)
・詩集『抒情詩』田山花袋、柳田国男、宮崎湖処子らと共著(1897年)
・小説『源叔父』(1897年)
・日記『欺かざるの記』(1893~97年)
・小説『武蔵野』(1898年発表時は「今の武蔵野」)
・小説『鹿狩』(1898年)
・小説『忘れ得ぬ人々』(1898年)
・小説『牛肉と馬鈴薯』(1901年)
・小説『巡査』(1902年)
・小説『酒中日記』(1902年)
・小説『空知川の岸辺』(1902年)
・小説『運命論者』(1903年)
・小説『正直者』(1903年)
・小説『春の鳥』(1904年)
・小説『窮死』(1907年)
・小説『竹の木戸』(1908年)
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 今日は、昭和時代前期の1945年(昭和20)に、「戦時緊急措置法」が公布された日(翌日施行)です。
 この法律は、本土決戦に備えて政府への委任立法権を規定したもので、軍需生産・運輸通信の維持増強、生活必需物資の確保、防衛と秩序維持、税制の適正化、戦災の善後措置、そのほか広範な事項に関する緊急措置を現行法にかかわることなく施行しうることにしたものでした。
 第87回帝国議会で提案され、戦時緊急措置委員会の諮問を必要とすることなどの修正後、枢密顧問の諮詢を経た上で、6月22日法律第38号として公布され、翌日より同法施行令と共に施行されます。
 この効力の及ぶ範囲は広く、ほとんど立憲的手続を白紙にした非常大権の行使に等しいもので、政府に生産、流通、通信、防衛など、あらゆる面での緊急措置がとれる権限を与えることになりました。
 同時に成人女子を含むほとんどの国民を軍事要員として組織化する「義勇兵役法」(昭和20年法律第39号)を同じ日に成立させ、本土決戦に備えての非常態勢に突入します。
 また、政府はこの法令を根拠に7月以後に臨時の土地収用及び増税、事実上の強制労働を課することなどを意図して5つの勅令の承認を受けました。
 しかし、「ポツダム宣言」を受諾して、同年8月15日に降伏したために、「国家総動員法及戦時緊急措置法廃止法律」(昭和20年法律第44号)により、この法律は1946年(昭和21)4月1日をもって廃止されます。
 以下に、「戦時緊急措置法」の全文を掲載しておきますので、ご参照ください。

〇「戦時緊急措置法」(昭和20年法律第38号)昭和20年6月22日公布、23日施行

第一条 大東亜戦争ニ際シ国家ノ危急ヲ克服スル為緊急ノ必要アルトキハ政府ハ他ノ法令ノ規定ニ拘ラズ左ノ各号ニ掲グル事項ニ関シ応機ノ措置ヲ講ズル為必要ナル命令ヲ発シ又ハ処分ヲ為スコトヲ得
 一 軍需生産ノ維持及増強
 二 食糧其ノ他生活必需物資ノ確保
 三 運輸通信ノ維持及増強
 四 防衛ノ強化及秩序ノ維持
 五 税制ノ適正化
 六 戦災ノ善後措置
 七 其ノ他戦力ノ集中発揮ニ必要ナル事項ニシテ勅令ヲ以テ指定スルモノ

第二条 政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ前条ノ規定ニ基キテ発スル命令ニ依リ為ス処分又ハ同条ノ規定ニ依リ為ス処分ニ因リ生ジタル損失ヲ補償スルコトヲ得

第三条 第一条ノ規定ニ基キテ発スル命令若ハ之ニ依リ為ス処分又ハ同条ノ規定ニ依リ為ス処分ニ違反シタル者ハ十年以下ノ懲役又ハ十万円以下ノ罰金ニ処ス
2 第一条ノ規定ニ基キテ発スル命令ニ依リ為ス処分又ハ同条ノ規定ニ依リ為ス処分ヲ拒ミ、妨ゲ又ハ忌避シタル者ハ三年以下ノ懲役、五千円以下ノ罰金又ハ拘留若ハ科料ニ処ス
3 国家総動員法第三十五条、第四十八条及第四十九条ノ規定ハ前二項ノ場合ニ之ヲ準用ス

第四条 第一条ノ規定ニ基ク措置ニシテ重要ナルモノニ付テハ政府ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ之ヲ戦時緊急措置委員会ニ諮問スベシ但シ已ムコトヲ得ザル場合ニ於テハ事後ニ之ヲ報告スベシ
2 戦時緊急措置委員会ニ関スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム

第五条 本法施行ニ関シ必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム

  附 則

本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム

                  「法令全書」より
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 今日は、昭和時代中期の1951年(昭和26)に、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が日本の加盟を承認した日ですが、正式加盟は7月2日となります。
 ユネスコは、第2次世界大戦中の1942年(昭和17)にロンドンで開催された連合国文部大臣会議で教育、文化に関する国際機関の設立が検討されたことが端緒となりました。
 第2次世界大戦後の1945年(昭和20)11月にイギリスのロンドンで開かれた国際連合教育文化会議で44ヶ国代表により「ユネスコ憲章」が採択され、翌年11月4日に発効、同年12月には国連の専門機関(本部はパリ)として発足します。
 教育、科学、文化の普及と交流を通じて諸国民間の理解と認識を深め、協力関係を促進し、それによって国際間の平和と安全を確保することを目的としました。
 日本は国連加盟に先だって、1951年(昭和26)7月2日に加盟国となりましたが、現在の加盟国は195ヶ国、準加盟地域10と増加しています。
 各国の政府機関や民間団体とユネスコの事業との協力を図るため、各国にユネスコ国内委員会が設置され、識字教育、文化財保護、生物圏保全、人権推進、平和教育など多方面で活動してきました。

〇国際連合教育科学文化機関憲章(ユネスコ憲章)

前文

 この憲章の当事国政府は、その国民に代って次のとおり宣言する。
 戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。
 相互の風習と生活を知らないことは、人類の歴史を通じて世界の諸人民の間に疑惑と不信をおこした共通の原因であり、この疑惑と不信のために、諸人民の不一致があまりにもしばしば戦争となった。
 ここに終りを告げた恐るべき大戦争は、人間の尊厳・平等・相互の尊重という民主主義の原理を否認し、これらの原理の代りに、無知と偏見を通じて人間と人種の不平等という教義をひろめることによって可能にされた戦争であった。
 文化の広い普及と正義・自由・平和のための人類の教育とは、人間の尊厳に欠くことのできないものであり、且つすべての国民が相互の援助及び相互の関心の精神をもって果さなければならない神聖な義務である。
 政府の政治的及び経済的取極のみに基く平和は、世界の諸人民の、一致した、しかも永続する誠実な支持を確保できる平和ではない。よって平和は、失われないためには、人類の知的及び精神的連帯の上に築かなければならない。
 これらの理由によって、この憲章の当事国は、すべての人に教育の充分で平等な機会が与えられ、客観的真理が拘束を受けずに探究され、且つ、思想と知識が自由に交換されるべきことを信じて、その国民の間における伝達の方法を発展させ及び増加させること並びに相互に理解し及び相互の生活を一層真実に一層完全に知るためにこの伝達の方法を用いることに一致し及び決意している。
 その結果、当事国は、世界の諸人民の教育、科学及び文化上の関係を通じて、国際連合の設立の目的であり、且つその憲章が宣言している国際平和と人類の共通の福祉という目的を促進するために、ここに国際連合教育科学文化機関を創設する。

第1条  目的及び任務

1  この機関の目的は、国際連合憲章が世界の諸人民に対して人種、性、言語又は宗教の差別なく確認している正義、法の支配、人権及び基本的自由に対する普遍的な尊重を助長するために教育、科学及び文化を通じて諸国民の間の協力を促進することによって、平和及び安全に貢献することである。
2  この目的を実現するために、この機関は、次のことを行う。
(a) 大衆通報(マス・コミュニケーション)のあらゆる方法を通じて諸人民が相互に知り且つ理解することを促進する仕事に協力すること並びにこの目的で言語及び表象による思想の自由な交流を促進するために必要な国際協定を勧告すること。
(b) 次のようにして一般の教育と文化の普及とに新しい刺激を与えること。
加盟国の要請によって教育事業の発展のためにその国と協力すること。
人種、性又は経済的若しくは社会的な差別にかかわらない教育の機会均等の理想を進めるために、諸国民の間における協力の関係をつくること。
自由の責任に対して世界の児童を準備させるのに最も適した教育方法を示唆すること。
(c) 次のようにして知識を維持し、増進し、且つ、普及すること。
世界の遺産である図書、芸術作品並びに歴史及び科学の記念物の保存及び保護を確保し、且つ、関係諸国民に対して必要な国際条約を勧告すること。
教育、科学及び文化の分野で活動している人々との国際的交換並びに出版物、芸術的及び科学的に意義のある物その他の参考資料の交換を含む知的活動のすべての部門における諸国民の間の協力を奨励すること。
いずれの国で作成された印刷物及び刊行物でもすべての国の人民が利用できるようにする国際協力の方法を発案すること。
3  この機関の加盟国の文化及び教育制度の独立、統一性及び実りの多い多様性を維持するために、この機関は、加盟国の国内管轄権に本質的に属する事項に干渉することを禁止される。

第2条  加盟国の地位

1  国際連合の加盟国の地位は、国際連合教育科学文化機関の加盟国となる権利を伴う
2  この憲章の第10条によって承認されるべきこの機関と国際連合との間の協定の条件に従うことを条件として、国際連合の加盟国でない国は、執行委員会の勧告に基き、総会の三分の二の多数の投票でこの機関の加盟国となることを認められることができる。
3  国際関係の処理について責任を負わない地域又は地域群は、その国際関係について責任を負う加盟国その他の当局が当該地域又は地域群に代って行った申請に基き、総会が、出席し且つ投票する加盟国の三分の二の多数によって準加盟国として認めることができる。準加盟国の権利及び義務の性質及び範囲は、総会が決定する。
4  この機関の加盟国で国際連合の加盟国の権利及び特権の行使を停止されたものは、国際連合の要請に基き、この機関の加盟国の権利及び特権を停止される。
5  この機関の加盟国で国際連合から除名されたものは、自動的にこの機関の加盟国ではなくなる。
6  機関の加盟国又は準加盟国は、事務局長にあてた通告により機関から脱退することができる。この通告は、それが行われた年の翌年の12月31日に効力を生ずる。このような脱退は、それが効力を生じた日に機関に対して負っている財政上の義務に影響を及ぼすものではない。準加盟国の脱退の勧告は、その準加盟国の国際関係について責任を負う加盟国その他の当局がその準加盟国に代って行う。
7  各加盟国は、この機関に対する常駐代表を任命する権利がある。
8  加盟国の常任代表は、この機関の事務局長に信任状を提出しなければならず、信任状提出の日から公式に職務を遂行する。

第3条  諸機関

 この機関は、総会、執行委員会及び事務局をもつ。

第4条  総会

 A 構成
1  総会は、この機関の加盟国の代表者で構成する。各加盟国の政府は、国内委員会が設立されているときはこれと、国内委員会が設立されていないときは教育、科学及び文化に関する諸団体と、それぞれ協議して選定する5人以内の代表を任命しなければならない。

 B 任務
2  総会は、この機関の政策と事業の主要な方針を決定する。総会は、執行委員会が提出した計画についての決定をする。
3  総会は、望ましいと認めるときは、総会が定める規則に従い、教育、科学、人文学又は知識の普及に関する国家間の国際会議を召集する。同様の議題に関する非政府機関間の会議は、総会又は執行委員会が前記の規則に従い召集することができる。
4  総会は、加盟国に提出する提案の採択に当り、勧告と加盟国の承認を得るために提出される国際条約とを区別しなければならない。前者の場合には、過半数の投票で足りるが、後者の場合には、三分の二の多数を必要とする。各加盟国は、勧告又は条約が採択された総会の閉会後1年の期間内に、その勧告又は条約を自国の権限のある当局に提出しなければならない。
5  総会は、第5条6(c)の規定に従うことを条件として、国際連合が関心を有する事項の教育、科学及び文化に関する面について、この機関と国際連合との適当な当局の間で合意した条件及び手続に従い、国際連合に助言する。
6  総会は、加盟国が4に規定する勧告及び条約に基いてとった措置に関しこの機関に送付する報告書又は総会が決定するときはその報告書の分析的概要を受領し及び検討する。
7  総会は、執行委員会の委員を選挙し、且つ、執行委員会の勧告に基いて、事務局長を任命する。

 C 表決
8
(a)  各加盟国は、総会において一の投票権を有する。決定は、この憲章又は総会の手続規則の規定によって三分の二の多数を必要とする場合を除き、単純過半数によって行う。過半数とは、出席し且つ投票する加盟国の過半数とする。
(b)  加盟国は、その国の未払分担金の総額が、当該年度及びその直前の暦年度についてその国が支払うべき分担金の総額をこえるときは、総会で投票権を有しない。
(c)  もっとも、総会は、支払の不履行が加盟国にとってやむを得ない事情によるものであると認めたときは、当該加盟国に投票することを許すことができる。

 D 手続
9
(a)  総会は、通常会期として二年ごとに会合する。総会は、自ら決定したとき、執行委員会が召集したとき、又は少なくとも加盟国の三分の一の要求があったときは、臨時会期として会合することができる。
(b)  各会期において、次回の通常会期の開催地は、総会が指定する。臨時会期の開催地は、総会がその会期を召集する場合には総会が決定し、その他の場合には執行委員会が決定する。
10  総会は、その手続規則を採択する。総会は、各会期において議長及び他の役員を選挙する。
11  総会は、特別委員会及び技術委員会その他総会の目的のために必要な補助機関を設ける。
12  総会は、その定める規則に従うことを条件として、会合が公開されるように措置しなければならない。

 E オブザーヴァー
13  総会は、執行委員会の勧告に基づき、且つ、三分の二の多数によって、その手続規則に従うことを条件として、総会又はその委員会の特定の会期に第11条第4項に規定されているような国際機関の代表者をオブザーヴァーとして招請することができる。
14  執行委員会が民間の又は準政府的の国際諸機関のために協議に関する取極を第11条第4項に規定されている方法で承認したときは、これらの諸機関は、総会及びその委員会の会期にオブザーヴァーを送ることを勧誘される。

 F 経過規定
15  9(a)の規定にかかわらず、総会は、その第22回会期をその第21回会期の後三年目の年に開催する。

第5条  執行委員会
 A 構成
1
(a)  執行委員会は、総会が選挙した58人の加盟国で構成する。総会議長は、職権により助言的資格で列席する。
(b)  選挙された執行委員会の構成国は、以下「執行委員国」という。
2
(a)  各執行委員国は、一人の代表者を任命しなければならない。また、各執行委員国は、代表者代理を任命することが出来る。
(b)  執行委員会における代表者を選定するに当たり、執行委員国は、一又は二以上の国際連合教育科学文化機関の権限の分野において資格を有し、かつ、委員会の行政上及び執行上の任務をはたすために必要な経験及び能力を有する者を任命するように努力しなければならない。例外的な事情により代表者の交代が正当なものとなる場合を除くほか、選挙された各構成国の代表者は、継続性が重要であることに留意し、当該選挙された各構成国により任命された代表者代理は、代表者が不在の場合、代表者のすべての任務を行わなければならない。
3  執行委員国を選挙するに当たり、総会は、文化の多様性及び均衡のとれた地理的分布に考慮を払わなければならない。
4
(a)  執行委員会は、自国が選挙された総会の閉会の時からその選挙が行われた後第二回目の総会の通常会期の閉会の時まで在任する。総会は、各通常会期において、当該通常会期の終了の時に生ずる欠員を補充するために必要な数の構成国を選挙する。
(b)  執行委員会は、再選されることができる。再選された執行委員国は、執行委員会における自国の代表者を交代されるよう努力しなければならない。
5  執行委員国がこの機関から脱退する場合には、当該執行委員国の任期は、脱退が効力を生じた日に終了する。

 B 任務
6
(a)  執行委員会は、総会の議事日程を準備する。執行委員会は、第6条3に従い事務局長が提出したこの機関の事業計画及びそれに対応する予算見積書を検討し、且つ、これらを望ましいと認める勧告を附して総会に提出する。
(b) 総会の権威の下に行動する執行委員会は、総会が採択した計画の実施につき責任を負う。執行委員会は、総会の決定に従い、且つ、通常会期との間に生じた事情を考慮して、事務局長がその計画を有効且つ合理的に実施することができるようにするために必要なすべての措置を執る。
(c)  執行委員会は、総会の通常会期と通常会期との間において、助言を求められた問題が総会により既に原則的に処理されているとき、又はその解決が総会の決定の中に含まれていると認められるときは、第4条第5に掲げる国際連合の助言者としての任務を遂行することができる。
7  執行委員会は、新加盟国がこの機関に加入することの承認を総会に勧告する。
8  総会の決定に従うことを条件として、執行委員会はその手続規則を採択する。執行委員会は、その委員の中からその役員を選挙する。
9  執行委員会は、定期会期として毎年少くとも2回会合するものとし、議長がその発意によって又は執行委員会の6人の委員の要請に基いて招集したときは、特別会期として会合することができる。
10  執行委員会議長は、執行委員会を代表して、事務局長が第6条3(b)の規定に従って準備しなければならない機関の活動に関する報告を、見解を付けて、又はこれを付けないで、総会の各通常会期に提出する。
11  執行委員会は、国際機関の代表者又は委員会の権限内の問題にたずさわっている専門家と協議するためのすべての必要な措置を執る。
12  執行委員会は、総会の会期と会期との間においては、この機関の活動の分野において生ずる法律的問題に関して国際司法裁判所の勧告的意見を要請することができる。
13  執行委員会の委員は、各自の政府の代表ではあるが、総会から委任された権限を総会全体に代って行使しなければならない。

 C 経過規定
14  3の規定にかかわらず、
(a)  総会の第17回会期前に選挙された委員は、その任期の終了の時まで在任する。
(b)  総会の第17回会期前に4の規定に従い執行委員会が4年の任期を有する委員の後継者として任命した委員は、4年の任期で再選されることができる。

第6条  事務局
1  事務局は、事務局長及び必要な職員で構成する。
2 事務局長は、総会が承認する条件で、執行委員会が指名し、四年の任期で総会が任命するものとする。事務局長は、さらに四年の任期につき再任されることができるものとするが、その後は引き続き再任されることはできない。事務局長は、この機関の首席の行政上の役員とする。
3
(a)  事務局長又はその指定する代理者は、総会、執行委員会及びこの機関の諸委員会のすべての会合に投票権なしで参加する。事務局長は、総会及び執行委員会が適当な措置を執るための提案を作成し、並びにこの機関の事業計画案及びこれに対応する予算見積書を執行委員会に提出するため準備するものとする。
(b)  事務局長は、機関の活動に関する定期報告を準備し、且つ、加盟国及び執行委員会に送達する。総会は、これらの報告の対象となる期間を決定する。
4  事務局長は、総会が承認する職員規則に従い、事務局職員を任命する。職員の任命は、誠実、能率及び技術的能力の最高水準を確保することに最大の考慮を払うことを条件として、できる限り広い地理的基礎に基いて行わなければならない。
5  事務局長及び職員の責任は、性質上もっぱら国際的なものである。事務局長及び職員は、その任務の遂行に当って、いかなる政府からも又はこの機関外のいかなる権力からも訓令を求め、又は受けてはならない。事務局長及び職員は、国際的役員としての地位を損ずる虞のあるいかなる行動をも慎まなければならない。この機関の各加盟国は、事務局長及び職員の責任の国際的な性質を尊重すること並びにこれらの者の任務の遂行に当ってこれらの者を左右しようとしないことを約束する。
6  この条のいかなる規定も、国際連合内で、この機関が共通の業務及び兼任の職員並びに職員の交流のための特別の取極を締結することを妨げるものではない。

経過規定
7  2の規定にかかわらず、執行委員会が指名し、1980年の総会が任命する事務局長の任期は、7年とする。

第7条  国内協力団体
1  各加盟国は、教育、科学及び文化の事項にたずさわっている自国の主要な団体をこの機関の事業に参加させるために、その特殊事情に即する措置を執らなければならない。その措置としては、広く政府及びこれらの団体を代表する国内委員会の設立によることが望ましい。
2  国内委員会又は国内協力団体があるところでは、これらは、この機関に関係がある事項について総会における各自国の代表団、執行委員会における各自国の代表者及び代表者代理並びに自国の政府に対して、助言的資格で行動し、かつ、この機関に関係があるすべての事項について連絡機関としての任務を行う。
3  この機関は、加盟国の要請に基いて、その国の国内委員会に対し、その事業の発展を援助するために臨時的に又は恒久的に事務局員一人を派遣することができる。

第8条  加盟国による報告
 各加盟国は、総会が決定する時期に及び様式で、自国の教育、科学及び文化の機関及び活動に関する法令、規則及び統計についての報告書並びに第4条4に規定する勧告及び条約に基いてとった措置についての報告書をこの機関に提出しなければならない。

第9条  予算
1  予算は、この機関の所管とする。
2  総会は、第10条に従って締結される協定で規定されることのある国際連合との取極に従うことを条件として、予算及びこの機関の加盟国に対する財政的負担の割当を承認し、且つ、これに最終的効力を与える。
3  事務局長は、財政規則に定める条件に従うことを条件として、政府、公私の機関、協会及び個人から直接に任意拠出金、贈与、遺贈及び補助金を受けることができる。

第10条  国際連合との関係
 この機関は、国際連合憲章第57条に掲げた専門機関の一として、なるべくすみやかに国際連合と関係をもたされる。この関係は、国際連合憲章第63条に基く国際連合との協定によって設定し、この協定は、この機関の総会の承認を受けなければならない。この協定は、共通の目的を達成するための両機関の間における有効な協力を規定し、同時に、この憲章に定めた権限の範囲内におけるこの機関の自治を承認しなければならない。この協定は、特に国際連合総会によるこの機関の予算の承認及びその財源の提供について規定することができる。

第11条  他の国際専門諸機関との関係
1  この機関は、他の政府間専門諸機関でその関心及び活動がこの機関の目的と関係があるものと協力することができる。このために、執行委員会の全般的権威の下に行動する事務局長は、これらの諸機関と実効的な関係を設定することができ、且つ、有効な協力を確保するために必要な共同委員会を設けることができる。これらの諸機関と締結する正式の取極は、執行委員会の承認を受けなければならない。
2  この機関の総会並びに目的及び任務がこの機関の権限内にある他の政府間専門諸機関の権限のある当局がその資産及び活動をこの機関に移譲することを望ましいと認めるときはいつでも、事務局長は、総会の承認を条件として、この目的のための相互に受諾しうる取極を締結することができる。
3  この機関は、会合に相互に代表を出席させるために他の政府間諸機関と適当な取極をすることができる。
4  国際連合教育科学文化機関は、その権限内の事項にたずさわっている民間の国際諸機関と協議及び協力のための適当な取り極めをすることができ、並びにこれらの諸機関に特定の任務を引き受けるように勧誘することができる。また、このような協力は、総会が設立した助言委員会にこれらの機関の代表者が適当に参加することを含むことができる。

第12条  この機関の法的地位
 国際連合の法的地位並びに特権及び免除に関する国際連合憲章第104条及び第105条の規定は、この機関にも同様に適用される。

第13条  改正
1  この憲章の改正提案は、総会の三分の二の多数によって承認を受けるときに効力を生ずる。但し、この機関の目的の根本的変更又は加盟国に対する新たな義務を伴う改正が効力を生ずるためには、その承認の後に加盟国の三分の二が受諾することを必要とする。改正の提案の案文は、総会による審議の少くとも6箇月前に、事務局長が加盟国に通報しなければならない。
2  総会は、この条の規定を実施するための手続規則を三分の二の多数によって採択する権限を有する。

第14条  解釈
1  この憲章のイギリス語及びフランス語の本文は、ひとしく正文とみなす。
2  この憲章の解釈に関する疑義又は紛争は、総会がその手続規則に基いて決定するところにより、国際司法裁判所又は仲裁裁判に決定のために付託する。

第15条  効力の発生
1  この憲章は、受託を受けなければならない。受諾書は、連合王国政府に寄託しなければならない。
2  この憲章は、連合王国政府の記録に署名のために開放しておく。署名は、受諾書の寄託の前でも後でも行うことができる。受諾は、署名が前に行われているか又は後に行われなければ効力を生じない。
3  この憲章は、署名国のうちの20が受諾したときに効力を生ずる。その後の受諾は、直ちに効力を生ずる。
4  連合王国政府は、すべての受諾書の受領及びこの憲章が前項に従って効力を生ずる日を、国際連合のすべての加盟国に通知する。

 以上の証拠として、下名は、このために正当に委任を受け、イギリス語及びフランス語のこの憲章に署名した。両本文は、ひとしく正文とする。
 1945年11月16日にロンドンにおいてイギリス語およびフランス語で本書一通を作成した。その認証謄本は、連合王国政府が国際連合のすべての加盟国に送付する。

 (以下省略。)
(署名省略)

             「文部科学省ホームページ」より
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