この法律は、日本の政治、経済、文化等の中心としてふさわしい首都圏の建設とその秩序ある発展を図るために制定された首都圏整備の基本法でした。
1950年(昭和25)に制定された「首都建設法」の規模を拡大したもので、東京、埼玉、千葉、神奈川、茨城、栃木、群馬、山梨の1都7県が首都圏とされます。
この区域において既成市街地、近郊整備地帯および都市開発区域を定めるとともに、内閣総理大臣が関係都県等の意見をきいて基本計画,整備計画および毎年度の事業計画からなる首都圏整備計画を決定することとされました。
首都圏における交通路、人口の適正配置、産業や生活基盤の整備を行おうというもので、この法律に基づく政令として、「首都圏整備施行令」が定められています。
これと前後して、1955年(昭和30)の日本住宅公団、1956年(昭和31)の日本道路公団の発足や1959年(昭和34)公布の「首都圏の既成市街地における工業等の制限に関する法律」の制定にみられるような、大都市圏の整備と開発を目的とした体制づくりが進められていきました。
〇「首都圏整備法」(全文)1956年(昭和31)法律第83号
第1章 総 則
(目的)
第1条 この法律は、首都圏の整備に関する総合的な計画を策定し、その実施を推進することにより、わが国の政治、経済、文化等の中心としてふさわしい首都圏の建設とその秩序ある発展を図ることを目的とする。
(定義)
第2条 この法律で「首都圏」とは、東京都の区域及び政令で定めるその周辺の地域を一体とした広域をいう。
2 この法律で「首都圏整備計画」とは、首都圏の建設とその秩序ある発展を図るため必要な首都圏の整備に関する計画をいう。
3 この法律で「既成市街地」とは、東京都及びこれと連接する枢要な都市を含む区域のうち、産業及び人口の過度の集中を防止し、かつ、都市の機能の維持及び増進を図る必要がある市街地の区域で、政令で定めるものをいう。
4 この法律で「近郊整備地帯」とは、既成市街地の近郊で、第24条第1項の規定により指定された区域をいう。
5 この法律で「都市開発区域」とは、既成市街地及び近郊整備地帯以外の首都圏の地域のうち第25条第1項の規定により指定された区域をいう。
第2章 国土審議会の調査審議等
第3条から第17条まで 削除
(国土審議会の調査審議等)
第18条 国土審議会(以下「審議会」という。)は、国土交通大臣の諮問に応じ、首都圏整備計画の策定及び実施に関する重要事項について調査審議する。
2 審議会は、前項に規定する事項について国土交通大臣に意見を述べることができる。
第19条及び第20条 削除
第3章 首都圏整備計画
(首都圏整備計画の内容)
第21条 首都圏整備計画は、政令で定めるところにより、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 首都圏内の人口規模、土地利用の基本的方向その他首都圏の整備に関して基本となるべき事項
二 既成市街地、近郊整備地帯及び都市開発区域の整備に関する事項で次に掲げるもののうち、それぞれその根幹となるべきもの(首都圏の建設とその秩序ある発展を図るため特に必要があると認められる首都圏の地域外にわたるものを含む。)
イ 宅地の整備に関する事項
ロ 道路の整備に関する事項
ハ 鉄道、軌道、飛行場、港湾等の交通施設の整備に関する事項
ニ 電気通信等の通信施設の整備に関する事項
ホ 公園、緑地等の空地の整備に関する事項
ヘ 水道、下水道、汚物処理施設等の供給施設及び処理施設の整備に関する事項
ト 河川、水路及び海岸の整備に関する事項
チ 住宅等の建築物の整備に関する事項
リ 学校等の教育文化施設の整備に関する事項
ヌ その他首都圏の整備に関する事項で政令で定めるもの
三 既成市街地、近郊整備地帯又は都市開発区域の整備に関連して交通通信体系又は水の供給体系を広域的に整備する必要がある場合における前号ロからニまでに掲げる事項又は同号ヘ及びトに掲げる事項のうち、それぞれその根幹となるべきもの(首都圏の建設とその秩序ある発展を図るため特に必要があると認められる首都圏の地域外にわたるものを含む。)
2 首都圏整備計画は、国土形成計画法(昭和25年法律第205号)第2条第1項に規定する国土形成計画との調和が保たれたものでなければならない。
3 首都圏整備計画は、公害の防止について適切な考慮が払われたものでなければならない。
(首都圏整備計画の決定)
第22条 首都圏整備計画は、国土交通大臣が関係行政機関の長、関係都県及び審議会の意見を聴いて決定するものとする。この場合において、国土交通大臣は、関係都県から意見の申出を受けたときは、遅滞なくこれに回答するものとする。
2 国土交通大臣は、首都圏整備計画を決定するについて必要があると認めるときは、関係行政機関の長、関係地方公共団体及び関係のある事業を営む者(以下「関係事業者」という。)に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる。
3 国土交通大臣は、首都圏整備計画を決定したときは、これを関係行政機関の長及び関係地方公共団体に送付するとともに、国土交通省令の定めるところにより公表しなければならない。
4 前項の規定により公表された事項に関し利害関係を有する者は、公表の日から30日以内に、国土交通省令の定めるところにより国土交通大臣に意見を申し出ることができる。
5 前項の規定による申出があつたときは、国土交通大臣は、その申出を考慮して必要な措置を講じなければならない。
(首都圏整備計画の変更)
第23条 国土交通大臣は、その決定した首都圏整備計画が情勢の推移により適当でなくなつたとき、その他これを変更することが適当であると認めるときは、関係行政機関の長、関係都県及び審議会の意見を聴いてこれを変更することができる。この場合において、国土交通大臣は、関係都県から意見の申出を受けたときは、遅滞なくこれに回答するものとする。
2 前条第2項から第5項までの規定は、首都圏整備計画の変更について準用する。
第4章 首都圏整備計画の実施
(近郊整備地帯の指定)
第24条 国土交通大臣は、既成市街地の近郊で、その無秩序な市街地化を防止するため、計画的に市街地を整備し、あわせて緑地を保全する必要がある区域を近郊整備地帯として指定することができる。
2 国土交通大臣は、近郊整備地帯を指定しようとするときは、関係地方公共団体及び審議会の意見を聴くとともに、関係行政機関の長に協機しなければならない。この場合において、国土交通大臣は、関係地方公共団体から意見の申出を受けたときは、遅滞なくこれに回答するものとする。
3 近郊整備地帯の指定は、国土交通大臣が国土交通省令の定めるところにより告示することによつて、その効力を生ずる。
(都市開発区域の指定)
第25条 国土交通大臣は、既成市街地への産業及び人口の集中傾向を緩和し、首都圏の地域内の産業及び人口の適正な配置を図るため必要があると認めるときは、既成市街地及び近郊整備地帯以外の首都圏の地域のうち、工業都市、住居都市その他の都市として発展させることを適当とする区域を都市開発区域として指定することができる。
2 前条第2項及び第3項の規定は、前項の都市開発区域の指定について準用する。
(近郊整備地帯等の整備に関する法律)
第26条 前2条に定めるもののほか、近郊整備地帯内及び都市開発区域内における宅地の造成その他近郊整備地帯及び都市開発区域の整備に関し必要な事項は、別に法律で定める。
第27条 削除
(事業の実施)
第28条 首都圏整備計画に基づく事業は、この法律に定めるもののほか、当該事業に関する法律(これに基づく命令を含む。)の規定に従い、国、地方公共団体又は関係事業者が実施するものとする。
(協力及び勧告)
第29条 関係行政機関の長、関係地方公共団体及び関係事業者は、首都圏整備計画の実施に関し、できる限り協力しなければならない。
2 国土交通大臣は、必要があると認めるときは、関係行政機関の長、関係地方公共団体又は関係事業者に対し、首都圏整備計画の実施に関し勧告し、及びその勧告によつてとられた措置その他首都圏整備計画の実施に関する状況について報告を求めることができる。
(首都圏整備計画に関する施策の立案及び勧告)
第30条 国土交通大臣は、首都圏の建設とその秩序ある発展を図るため特に必要があると認めるときは、審議会の意見を聴いて首都圏整備計画に関する総合的な施策を立案し、これに基づいて関係行政機関の長及び関係地方公共団体に対し、勧告し、及びその勧告によつてとられた措置について報告を求めることができる。
(国会に対する報告等)
第30条の2 政府は、毎年度、国会に対し首都圏整備計画の策定及び実施に関する状況を報告するとともに、その概要を公表しなければならない。
(国の普通財産の譲渡)
第31条 国は、首都圏整備計画に基づく事業の用に供するため必要があると認めるときは、その事業の執行に要する費用を負担する地方公共団体に対し、普通財産を譲渡することができる。
(資金の融通等)
第32条 国は、別に法律で定める場合のほか、首都圏整備計画に基づく事業を実施する地方公共団体又は関係事業者に対し、必要な資金の融通又はあつせんに努めなければならない。
(企業債)
第33条 地方公共団体が首都圏整備計画に基づき行う地方公営企業法(昭和27年法律第292号)に規定する地方公営企業の建設、改良等に要する資金に充てるための地方債で国土交通大臣と総務大臣とが協議して定めるものについては、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、地方財政法(昭和23年法律第109号)第5条の3第1項に規定する協議において同意をし、又は同法第5条の4第1項若しくは第3項に規定する許可を与えるものとする。
附 則(抄)
6 平成17年度までの間、第33条の規定の適用については、同条中「第5条の3第1項に規定する協議において同意をし、又は同法第5条の4第1項若しくは第3項」とあるのは、「第33条の7第4項」とする。
「法令全書」より