今日は、明治時代後期の1906年(明治39)に、政府が全国17の私鉄を買収することを定めた「鉄道国有法」を公布した日です。
この法律は、地方鉄道を除き、鉄道の国有を原則とすることを定めた法律でした。1880年代後半から民営鉄道は急速に路線を伸ばし、日露戦争の終わった1905年(明治38)末時点で、る民営鉄道の営業キロは5,196.2kmで、官営鉄道の営業キロ2,413.3kmのほぼ2倍となります。
しかし、日清・日露両戦争における軍事輸送の経験や産業上の観点からも統一的な路線網の確立が要望され、また、経営不振から政府による買上げを希望する民営鉄道側の動きもあって、立案されました。
運賃の低減や車両の共用など経済面での利益が得られ、当時13億円にも達していた日露戦争費外債を低利外債へ借換えるため、担保資産として利用する意図もあったと言われています。
これによって、同年10月から翌年10月にかけて、下記の17社(約4,500km)が買収されました。その後、1908年(明治41)12月5日鉄道院が発足して、新たに総裁を置き、内閣の直轄となって管理運営されます。
1920年(大正9)8月5日に法改正され、国鉄民営化に伴い、1987年(昭和62)4月1日に、「日本国有鉄道改革法等施行法」第110条の規定により廃止されます。
〇買収された民営鉄道の一覧(17社)
・北海道炭礦鉄道(329.1km)―1906年10月1日買収(30,997,000円)
・甲武鉄道(44.7km)―1906年10月1日買収(14,600,000円)
・日本鉄道(1,385.3km)―1906年11月1日買収(142,495,000円)
・岩越鉄道(79.7km)―1906年11月1日買収(2,521,000円)
・山陽鉄道(667.7km)―1906年12月1日買収(78,850,000円)
・西成鉄道(7.4km)―1906年12月1日買収(1,705,000円)
・九州鉄道(712.6km)―1907年7月1日買収(118,856,000円)
・北海道鉄道(255.9km)―1907年7月1日買収(11,452,000円)
・京都鉄道(35.7km)―1907年8月1日買収(3,341,000円)
・阪鶴鉄道(113.1km)―1907年8月1日買収(7,010,000円)
・北越鉄道(138.1km)―1907年8月1日買収(7,777,000円)
・総武鉄道(117.8km)―1907年9月1日買収(12,871,000円)
・房総鉄道(63.4km)―1907年9月1日買収(2,157,000円)
・七尾鉄道(55.4km)―1907年9月1日買収(1,491,000円)
・徳島鉄道(34.6km)―1907年9月1日買収(1,341,000円)
・関西鉄道(442.9km)―1907年10月1日買収(36,130,000円)
・参宮鉄道(42.0km)―1907年10月1日買収(5,729,000円)
〇鉄道国有法(全文)明治39年3月31日 法律17号 改正大正9年 法律47号
第1条 一般運送ノ用ニ供スル鉄道ハ総テ国ノ所有トス但シ一地方ノ交通ヲ目的トスル鉄道ハ此ノ限ニ在ラズ
第2条 政府ハ明治39年ヨリ明治48年迄ノ間ニ於テ本法ノ規定ニ依リ左ニ掲クル私設鉄道株式会社所属ノ鉄道ヲ買収スヘシ
一 北海道炭礦鉄道株式会社
一 北海道鉄道株式会社
一 日本鉄道株式会社
一 岩越鉄道株式会社
一 北越鉄道株式会社
一 甲武鉄道株式会社
一 総武鉄道株式会社
一 房総鉄道株式会社
一 七尾鉄道株式会社
一 関西鉄道株式会社
一 参宮鉄道株式会社
一 京都鉄道株式会社
一 西成鉄道株式会社
一 阪鶴鉄道株式会社
一 山陽鉄道株式会社
一 徳島鉄道株式会社
一 九州鉄道株式会社
2 前項ニ掲ケタル各会社ハ他ノ私設鉄道株式会社ト合併シ又ハ他ノ私設鉄道株式会社ノ鉄道ヲ買収スルコトヲ得ス
第3条 前条ニ掲ケタル各鉄道買収ノ期日ハ政府ニ於テ之ヲ指定ス
第4条 政府ハ兼業ニ属スルモノヲ除クノ外買収ノ日ニ於テ会社ノ現ニ有スル権利義務ヲ承継ス但シ会社ノ株主ニ対スル権利義務、払込株金ノ支出残額並収益勘定、積立金勘定及雑勘定ニ属スルモノハ此ノ限ニ在ラス
第5条 買収価額ハ左ニ掲クルモノトス
一 会社ノ明治35年後半期乃至明治38年前半期ノ6営業年度間ニ於ケル建設費ニ対スル益金ノ平均割合ヲ買収ノ日ニ於ケル建設費ニ乗シタル額ヲ20倍シタル金額
二 貯蔵物品ノ実費ヲ時価ニ依リ公債券面金額ニ換算シタル金額但シ借入金ヲ以テ購入シタルモノヲ除ク
2 前項第1号ニ於テ益金ト称スルハ営業収入ヨリ営業費、賞与金及収益勘定以外ノ諸勘定ヨリ生シタル利息ヲ控除シタルモノヲ謂ヒ益金ノ平均割合ト称スルハ明治35年後半期乃至明治38年前半期ノ毎営業年度ニ於ケル建設費合計ヲ以テ同期間ニ於ケル益金ノ合計ヲ除シタルモノノ2倍ヲ謂フ
第6条 借入金ハ建設費ニ使用シタルモノニ限リ時価ニ依リ公債券面金額ニ換算シ買収価額ヨリ之ヲ控除ス
2 会社カ鉄道及附属物件ノ補修ヲ為サス又ハ鉄道建設規程ニ依リ期限内ニ改築若ハ改造ヲ為ササル場合ニ於テハ其ノ補修、改築又ハ改造ニ要スル金額ハ前項ノ例ニ依リ買収価額ヨリ之ヲ控除ス
第7条 資本勘定ニ属スル支出ハ借入金ヲ以テシタルモノヲ除クノ外順次ニ建設費及貯蔵物品ニ対シ之ヲ為シタルモノト看做ス
2 借入金ノ支出ハ前項ノ支出ノ後ニ之ヲ為シタルモノト看做ス
第8条 会社カ明治38年前半期ノ営業年度末ニ於テ運輸開始後6営業年度ヲ経過シタル線路ヲ有セサル場合又ハ第5条第1項第1号ノ金額カ建設費ニ達セサル場合ニ於テハ政府ハ其ノ建設費以内ニ於テ協定シタル金額ヲ以テ第5条第2項第1号ノ金額ニ代フ
第9条 左ニ掲クル場合ニ於テハ政府ハ審査委員ヲシテ決定ヲ為サシムヘシ
一 権利義務ノ承継ニ関シ又ハ計算ニ関シ会社ニ於テ異議アルトキ
二 前条ノ場合ニ於テ協定調ハサルトキ
2 審査委員ノ決定ニ対シ不服アルトキハ会社ハ主務大臣ニ訴願ヲ為スコトヲ得
3 審査委員ニ関スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第10条 買収ノ執行ハ審査委員ノ審査中ト雖之ヲ停止セス
「官報」より
この法律は、地方鉄道を除き、鉄道の国有を原則とすることを定めた法律でした。1880年代後半から民営鉄道は急速に路線を伸ばし、日露戦争の終わった1905年(明治38)末時点で、る民営鉄道の営業キロは5,196.2kmで、官営鉄道の営業キロ2,413.3kmのほぼ2倍となります。
しかし、日清・日露両戦争における軍事輸送の経験や産業上の観点からも統一的な路線網の確立が要望され、また、経営不振から政府による買上げを希望する民営鉄道側の動きもあって、立案されました。
運賃の低減や車両の共用など経済面での利益が得られ、当時13億円にも達していた日露戦争費外債を低利外債へ借換えるため、担保資産として利用する意図もあったと言われています。
これによって、同年10月から翌年10月にかけて、下記の17社(約4,500km)が買収されました。その後、1908年(明治41)12月5日鉄道院が発足して、新たに総裁を置き、内閣の直轄となって管理運営されます。
1920年(大正9)8月5日に法改正され、国鉄民営化に伴い、1987年(昭和62)4月1日に、「日本国有鉄道改革法等施行法」第110条の規定により廃止されます。
〇買収された民営鉄道の一覧(17社)
・北海道炭礦鉄道(329.1km)―1906年10月1日買収(30,997,000円)
・甲武鉄道(44.7km)―1906年10月1日買収(14,600,000円)
・日本鉄道(1,385.3km)―1906年11月1日買収(142,495,000円)
・岩越鉄道(79.7km)―1906年11月1日買収(2,521,000円)
・山陽鉄道(667.7km)―1906年12月1日買収(78,850,000円)
・西成鉄道(7.4km)―1906年12月1日買収(1,705,000円)
・九州鉄道(712.6km)―1907年7月1日買収(118,856,000円)
・北海道鉄道(255.9km)―1907年7月1日買収(11,452,000円)
・京都鉄道(35.7km)―1907年8月1日買収(3,341,000円)
・阪鶴鉄道(113.1km)―1907年8月1日買収(7,010,000円)
・北越鉄道(138.1km)―1907年8月1日買収(7,777,000円)
・総武鉄道(117.8km)―1907年9月1日買収(12,871,000円)
・房総鉄道(63.4km)―1907年9月1日買収(2,157,000円)
・七尾鉄道(55.4km)―1907年9月1日買収(1,491,000円)
・徳島鉄道(34.6km)―1907年9月1日買収(1,341,000円)
・関西鉄道(442.9km)―1907年10月1日買収(36,130,000円)
・参宮鉄道(42.0km)―1907年10月1日買収(5,729,000円)
〇鉄道国有法(全文)明治39年3月31日 法律17号 改正大正9年 法律47号
第1条 一般運送ノ用ニ供スル鉄道ハ総テ国ノ所有トス但シ一地方ノ交通ヲ目的トスル鉄道ハ此ノ限ニ在ラズ
第2条 政府ハ明治39年ヨリ明治48年迄ノ間ニ於テ本法ノ規定ニ依リ左ニ掲クル私設鉄道株式会社所属ノ鉄道ヲ買収スヘシ
一 北海道炭礦鉄道株式会社
一 北海道鉄道株式会社
一 日本鉄道株式会社
一 岩越鉄道株式会社
一 北越鉄道株式会社
一 甲武鉄道株式会社
一 総武鉄道株式会社
一 房総鉄道株式会社
一 七尾鉄道株式会社
一 関西鉄道株式会社
一 参宮鉄道株式会社
一 京都鉄道株式会社
一 西成鉄道株式会社
一 阪鶴鉄道株式会社
一 山陽鉄道株式会社
一 徳島鉄道株式会社
一 九州鉄道株式会社
2 前項ニ掲ケタル各会社ハ他ノ私設鉄道株式会社ト合併シ又ハ他ノ私設鉄道株式会社ノ鉄道ヲ買収スルコトヲ得ス
第3条 前条ニ掲ケタル各鉄道買収ノ期日ハ政府ニ於テ之ヲ指定ス
第4条 政府ハ兼業ニ属スルモノヲ除クノ外買収ノ日ニ於テ会社ノ現ニ有スル権利義務ヲ承継ス但シ会社ノ株主ニ対スル権利義務、払込株金ノ支出残額並収益勘定、積立金勘定及雑勘定ニ属スルモノハ此ノ限ニ在ラス
第5条 買収価額ハ左ニ掲クルモノトス
一 会社ノ明治35年後半期乃至明治38年前半期ノ6営業年度間ニ於ケル建設費ニ対スル益金ノ平均割合ヲ買収ノ日ニ於ケル建設費ニ乗シタル額ヲ20倍シタル金額
二 貯蔵物品ノ実費ヲ時価ニ依リ公債券面金額ニ換算シタル金額但シ借入金ヲ以テ購入シタルモノヲ除ク
2 前項第1号ニ於テ益金ト称スルハ営業収入ヨリ営業費、賞与金及収益勘定以外ノ諸勘定ヨリ生シタル利息ヲ控除シタルモノヲ謂ヒ益金ノ平均割合ト称スルハ明治35年後半期乃至明治38年前半期ノ毎営業年度ニ於ケル建設費合計ヲ以テ同期間ニ於ケル益金ノ合計ヲ除シタルモノノ2倍ヲ謂フ
第6条 借入金ハ建設費ニ使用シタルモノニ限リ時価ニ依リ公債券面金額ニ換算シ買収価額ヨリ之ヲ控除ス
2 会社カ鉄道及附属物件ノ補修ヲ為サス又ハ鉄道建設規程ニ依リ期限内ニ改築若ハ改造ヲ為ササル場合ニ於テハ其ノ補修、改築又ハ改造ニ要スル金額ハ前項ノ例ニ依リ買収価額ヨリ之ヲ控除ス
第7条 資本勘定ニ属スル支出ハ借入金ヲ以テシタルモノヲ除クノ外順次ニ建設費及貯蔵物品ニ対シ之ヲ為シタルモノト看做ス
2 借入金ノ支出ハ前項ノ支出ノ後ニ之ヲ為シタルモノト看做ス
第8条 会社カ明治38年前半期ノ営業年度末ニ於テ運輸開始後6営業年度ヲ経過シタル線路ヲ有セサル場合又ハ第5条第1項第1号ノ金額カ建設費ニ達セサル場合ニ於テハ政府ハ其ノ建設費以内ニ於テ協定シタル金額ヲ以テ第5条第2項第1号ノ金額ニ代フ
第9条 左ニ掲クル場合ニ於テハ政府ハ審査委員ヲシテ決定ヲ為サシムヘシ
一 権利義務ノ承継ニ関シ又ハ計算ニ関シ会社ニ於テ異議アルトキ
二 前条ノ場合ニ於テ協定調ハサルトキ
2 審査委員ノ決定ニ対シ不服アルトキハ会社ハ主務大臣ニ訴願ヲ為スコトヲ得
3 審査委員ニ関スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第10条 買収ノ執行ハ審査委員ノ審査中ト雖之ヲ停止セス
「官報」より