野間宏は、1915年（大正4年）2月23日に、電気技師・僧侶を父として、兵庫県神戸市長田区に生まれました。大阪府立北野中学校から旧制第三高等学校へ入学し、同人誌「三人」を作ったりします。
1935年（昭和10）に京都帝国大学文学部仏文科へ入学し、反戦学生運動に参加し、マルクス主義に接近しました。
1938年（昭和13）に卒業後は、大阪市役所に勤務したものの、1941年（昭和16）に召集を受け、中国やフィリッピンを転戦しました。しかし、マラリアに感染したために帰国し、1943年（昭和18）には、「治安維持法」違反により、思想犯として陸軍刑務所に収監されました。出所後、除隊して大阪の軍需工場に勤務していた時、敗戦を迎えます。
1946年（昭和21）に、戦時下の青春と一青年の自己完成への葛藤を描いた小説『暗い絵』を発表し、高い評価を得て作家生活に入りました。
1948年（昭和23）発表の『崩壊感覚』などの一連の作品で、戦争の傷跡をえぐり出して注目されます。1952年（昭和27）の『真空地帯』で毎日出版文化賞を受賞、戦後文学の代表作家の一人となりました。その後、多様な角度からの人間描写を試みて『地の翼』 (1955～57年) 、『さいころの空』 (1958～59年) 、『わが塔はそこに立つ』 (1960～61年) などを書きます。
24年間を経て完結した大長編『青年の環』（1948～71年）で、谷崎潤一郎賞、ロータス賞を受賞、1974年（昭和49）には、「日本アジア・アフリカ作家会議」の初代議長に選出されました。
それからも、多方面で活躍しましたが、1991年（平成3）1月2日に、東京において、75歳で亡くなっています。
〇野間宏の主要な著書
・『暗い絵』真善美社 1947年
・『崩壊感覚』丹頂書房 1948年
・『小説入門』真善美社 1948年
・『星座の痛み 詩集』河出書房 1949年
・『青年の環』第1-2部 河出書房 1949-1950年
・『顔の中の赤い月』目黒書店(自選作品集)1951年
・『雪の下の声が……』未來社 1952年
・『文学の探求』正続 未來社 1952-195年3
・『真空地帯』河出書房 1952年
・『人生の探求』未來社 1953年
・『野間宏詩集』三一書房(日本国民詩集)1953年
・『野間宏作品集』全3巻 三一書房 1953年
・『現代文学の基礎 いかに人間を考えるか』理論社 1954年
・『思想と文学』未來社 1954年
・『志津子の行方』河出新書 1955年
・『文学の方法と典型 社会主義リアリズムにむかって』青木書店 1956年
・『地の翼 上巻』河出書房 1956年
・『真実の探求 現代文学の方法』理論社(私の大学・文学の教室)1956年
・『今日の愛と幸福』中央公論社 1957年
・『黄金の夜明ける』未來社 1959年
・『さいころの空』文藝春秋新社 1959年
・『車の夜』東京書房 1959年
・『感覚と欲望と物について 評論集』未來社 1959年
・『若い日の文学探求』青春出版社(青春教養大系)1960年
・『文章読本』新読書社出版部 1960年
・『干潮のなかで』新潮社 1961年
・『わが塔はそこに立つ』講談社 1962年
・『肉体は濡れて』東方社(イースト・ブックス)1965年
・『青年の環 第3』河出書房新社 1966年
・『人生と愛と幸福』合同出版(パピルス双書)1967年
・『文学論』合同出版 1967年
・『青年の問題文化の問題』合同出版(パピルス双書)1967年
・『青年の環 第4』河出書房新社 1968年
・『サルトル論』河出書房 1968年
・『歎異抄』(私の古典)筑摩書房 1969年
・『野間宏全集』全22巻 筑摩書房 1969-1974年
・『野間宏評論集』全2巻 未來社 1969-1970年
