
この美術館は、倉敷の実業家大原孫三郎(1880年~1943年)が、自身が援助していた洋画家児島虎次郎(1881年~1929年)に託して収集した西洋美術、エジプト・中近東美術、中国美術などを展示するために建てられました。
1930年(昭和5)4月19日に工事着工し、11月5日に完成・開館して、「大原美術館」と命名されます。日本最初の西洋美術中心の私立美術館で、収蔵作品は児島虎次郎の作品のほか、約600点の洋画(日本の洋画を含む)、約30点の彫刻をはじめ、エジプト美術、中国美術、外国陶磁などで、収蔵作品総数は、約3,000点に及びました。
それらは、17世紀のエル・グレコをはじめ、印象主義から 20世紀の代表的な作家にいたるまで幅広く収集され、エル・グレコ『受胎告知』をはじめ、ゴーギャン『かぐわしき大地』やロートレック『マルトX夫人の肖像』、モネ『睡蓮』、ルノワール『泉による女』など数々の貴重な作品が含まれています。
1961年(昭和36)に分館を増設し、続いて陶器館、1963年(昭和38)に棟方志功版画館と芹沢銈介染色館、1970年(昭和45)に東洋館、1972年(昭和47)に児島虎次郎館と開設され、そして、1991年(平成3)に本館の増改築工事が完了して、現在までに、趣のある美術館群が形成されました。
周辺地域は、1969年(昭和44)に倉敷市の条例に基づき美観地区に定められ、1979年(昭和54)には、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されて、風情のある町並みが維持され、多くの観光客が訪れるようになっています。
〇主な収蔵品
<外国人作家>
・エル・グレコまたはその工房『受胎告知』(1599年–1603年頃)
・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ『幻想』(1866年)
・ミレー『グレヴィユの断崖』(1867 - 71年頃)
・セザンヌ『水浴』(1883 - 87年頃)
・カミーユ・ピサロ『りんご採り』(1886年)
・モロー『雅歌』(1893年)
・ドガ『赤い衣裳をつけた三人の踊り子』(1896年)
・モネ『睡蓮』(1906年頃)
・ルノワール『泉による女』(1914年)
・ゴーギャン『かぐわしき大地(テ・ナヴェ・ナヴェ・フェヌア)』(1892年)
・セガンティーニ『アルプスの真昼』(1892年)
・トゥールーズ=ロートレック『マルトX夫人の像』(1900年)
・ルドン『鐘楼守』(1905 -10年頃)
・ボナール『欄干の猫』(1909年)
・マティス『画家の娘』(1918年)
・ルオー『道化師』(1926–1929年)
・ユトリロ『パリ郊外』(1910年)
・モディリアーニ『ジャンヌ・エビュテルヌの肖像』(1918年)
・デ・キリコ『ヘクトールとアンドロマケーの別れ』(1918年)
・H.オットマン『脱衣の少女』(1920年)
・ピカソ『頭蓋骨のある静物』(1942年)
・ポロック『カットアウト』(1949年)
・ジャスパー・ジョーンズ『灰色の国旗』(1957年)
<日本人作家>
・青木繁『男の顔』(1903年)
・萬鉄五郎『雲のある自画像』(1912年)
・児島虎次郎『睡れる幼きモデル』(1912年)
・山本鼎『サーシャ』(1916年)
・関根正二『信仰の悲しみ』(1918年)【国指定重要文化財】
・小出楢重『Nの家族』(1919年)【国指定重要文化財】
・中村彝『頭蓋骨を持てる自画像』(1923年)
・前田寛治『二人の労働者』(1923年)
・岸田劉生『童女舞姿』(1924年)
・佐伯祐三『広告 “ヴェルダン”』(1927年)
・熊谷守一『陽の死んだ日』(1928年)
・藤島武二『耕到天(たがやしててんにいたる)』(1938年)
・梅原龍三郎『紫禁城』(1940年)
・安井曾太郎『画室にて』(1951年)
・棟方志功『華狩頌版画柵』(1954年)
・菅井汲『ナショナル・ルート』(1965年)
・横尾忠則『ロンドンの4日間』(1982年)
<日本人彫刻>
・荻原守衛『坑夫』(1907年)
<海外彫刻>
・「木彫彩色女神坐像」(エジプト・プトレマイオス朝)
・「一光三尊仏像」(中国・北魏)【国指定重要文化財】
・ロダン『歩く人』(1877年)
・ロダン『カレーの市民 ジャン・ダール』(1890年)