井原西鶴は、江戸時代中期の俳人・浮世草子作家です。1642年(寛永19)に、大坂・難波の富商の家に生まれ、本名は平山藤五と伝えられています。
15歳の頃から俳諧を学び、21歳で点者となったとされています。西山宗因の談林派に加わり、天下一の速吟として名を成しました。
1682年(天和2)に、浮世草子『好色一代男』を発表して作家へと転進し、以後『好色五人女』、『武家義理物語』、『日本永代蔵』、『世間胸算用』などを発表します。
そして、現実主義的な庶民文学を確立し、文学史上に一時期を画しましたが、1693年(元禄6)に52歳で亡くなっています。
〇井原西鶴の代表的作品
・『好色一代男』1682年10月
・『諸艶大鑑(しょえんおおかがみ)(好色二代男)』1684年
・『西鶴諸国ばなし』1685年
・『好色五人女』1686年2月
・『好色一代女』1686年6月
・『本朝二十不孝』168611月、
・『男色大鑑(なんしょくおおかがみ)』1687年1月
・『懐硯(ふところすずり)』1687年3月
・『武道伝来記』1687年4月
・『日本永代蔵(にっぽんえいたいぐら)』1688年1月
・『武家義理物語』1688年2月
・『嵐無常物語(あらしはむじょうのものがたり)』1688年3月
・『色里三所世帯(いろざとみところしょたい)』1688年6月
・『新可笑記』1688年11月、
・『好色盛衰記』1688年
・『一目玉鉾(ひとめたまぼこ)』1689年1月
・『本朝桜陰比事(おういんひじ)』1689年1月
・『世間胸算用(せけんむなざんよう)』1692年
・『西鶴置土産(おきみやげ)』1693年
☆『好色一代男』とは?
井原西鶴著の浮世草子第一作で、江戸時代中期の1682年(天和2)に、大坂の池田屋と江戸の奈良屋から同時刊行されました。8巻54章からなり、一人の男性(世之介)の54年間にわたる好色生活を描き、庶民男性の一つの理想的な生き方を描きだすことで大人気を博したのです。
☆『日本永代蔵』とは?
井原西鶴著で、江戸時代中期の1688年(貞享5)に刊行された浮世草子の町人物の代表作の一つで、6巻30章の短編からなっています。金持ちはいかにして金持ちになったか、町民の生活の心得を率直に描いた内容となっています。
☆『世間胸算用』とは?
井原西鶴著の浮世草子町人物の代表作の一つで、江戸時代中期の1692年(元禄5)に、大坂・伊丹屋太郎右衛門、京都・上村平左衛門、江戸・万屋清兵衛を版元として刊行されました。副題は、「大晦日は一日千金」で、5巻20章の短編からなり、大晦日に時間を絞って、町人の生活を描いた町人物の傑作です。
以下に、冒頭部分を引用しておきます。
巻一 長刀はむかしの鞘
元朝に日蝕六十九年以前に有りて、又元禄五年みづのえ、さる程にこの曙めづらし。
暦は持統天皇四年に儀凰暦より改りて、日月の蝕をこよみの証拠に、世の人これを疑ふ事なし。
口より見尽して末一段の大晦日になりて、浄瑠り小うたの声も出ず、けふ一日の暮せはしく、こと更小家がちなる所は、喧と洗濯と壁下地つゞくると、何もかも一度に取りまぜて、春の用意とていかな事、餅ひとつ小鰯一疋もなし。
世に有る人と見くらべて、浅間敷哀れなり。
(後略)