フェノロサは、アメリカ合衆国の東洋美術史家、哲学者で、明治時代前期の1878年(明治11)に来日したお雇い外国人の一人でした。東京大学で哲学、政治学などを講じ、日本美術を評価し、紹介に努めたことで知られていますが、1884年(明治17)には、文部省図画調査会委員に任命され、その年に岡倉天心らと共に、近畿地方の古社寺宝物調査を行ったのです。
このときに、法隆寺夢殿の秘仏・救世観音像を開扉したことで知られていますが、1886年だったという説もありました。このとき、夢殿の救世観音像が数百年ぶりに姿を見せ、その時の感動が伝えられることになり、日本美術の再評価につながったと伝えられているのです。
〇法隆寺とは?
奈良県生駒郡斑鳩町にあるこの寺は、飛鳥時代の7世紀に創建され、古代寺院の姿を現在に伝える仏教施設で、聖徳太子ゆかりの寺院で、創建は金堂薬師如来像光背銘、『上宮聖徳法王帝説』から607年(推古天皇15)とされています。
金堂、五重塔を中心とする西院伽藍と、夢殿を中心とした東院伽藍に分けられ、境内の広さは約18万7千平方メートルで、西院伽藍は現存する世界最古の木造建築物群とされていました。
そこには、金剛力士立像、金堂の釈迦三尊、五重塔の塑像群、夢殿の救世観音、大宝蔵殿の百済観音、玉虫厨子など、38件もの国宝と151件の国の重要文化財があるのです。
また、1993年(平成5)には、「法隆寺地域の仏教建造物」として、ユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されました。
以下に、法隆寺にある国宝文化財を載せておきますが、これ以外に国指定重要文化財が多数あります。
☆法隆寺所蔵の文化財(国宝)
<建造物>
南大門、金堂、五重塔、中門、回廊 2棟、経蔵、鐘楼、大講堂、聖霊院、東室、三経院及西室、西円堂、綱封蔵、食堂、東大門、夢殿、伝法堂、東院鐘楼
<美術工芸品>
銅造阿弥陀三尊像(伝橘夫人念持仏)、
銅造釈迦如来及両脇侍像 止利作(金堂安置)
銅造薬師如来坐像(金堂安置)
木造四天王立像(金堂安置)
木造毘沙門天・吉祥天立像(金堂安置)
塑造塔本四面具 78躯・2基(五重塔安置)
木造薬師如来及両脇侍坐像(大講堂安置)
乾漆薬師如来坐像(西円堂安置)
木造釈迦如来及両脇侍坐像(上御堂安置)
銅造阿弥陀如来及両脇侍像(伝橘夫人念持仏)・木造厨子(所在大宝蔵院)
銅造観音菩薩立像(夢違観音)(所在大宝蔵院)
木造観音菩薩立像(九面観音)(所在大宝蔵院)
木造観音菩薩立像(百済観音)(所在大宝蔵院)
木造地蔵菩薩立像(所在大宝蔵院)。明治初期まで大神神社の神宮寺である大御輪寺に伝来。
木造聖徳太子・山背王・殖栗王・卒末呂王・恵慈法師坐像(聖霊院安置)
木造観音菩薩立像(救世観音)(夢殿安置)
乾漆行信僧都坐像(所在夢殿)
塑造道詮律師坐像(所在夢殿)
玉虫厨子
黒漆螺鈿卓
四騎獅子狩文錦