今日は、1968年(昭和43)に「小笠原返還協定」の発効によって、小笠原諸島が返還された日です。
この協定は、昭和時代後期の1968年(昭和43)4月5日に、東京で署名された、日本とアメリカ合衆国との条約です。
太平洋戦争後、小笠原諸島は、アメリカの軍政の下に置かれ、島民は島外に退去させられました。しかしその後、沖縄返還と共に小笠原返還を求める旧島民やその他日本国民の要求が高まったのです。
その結果、1967年(昭和42)11月14日および11月15日に佐藤栄作内閣総理大臣とリンドン・ジョンソンアメリカ合衆国大統領が会談して、小笠原諸島の1年以内の返還に合意しました。
そして、アメリカとの小笠原返還協定は、1968年(昭和43)4月5日に調印、5月22日に国会で承認され、6月25日に発効したのです。
この協定は、前文と本文6ヶ条から成り、その内容は、前文で「サンフランシスコ平和条約」第3条の規定に基づくすべての権利及び利益を日本国のために放棄するとし、本文では、(1)小笠原の施政権の返還についての確認、(2)アメリカ合衆国との間に締結された条約及びその他の協定の適用の確認、(3)アメリカ軍施設の存続についての確認、(4)南鳥島の測候所の運営の継続、(5)裁判、訴訟等の効力について、(6)協定の発効についてを規定していました。
この協定発効後、小笠原の施政権が返還され、旧島民も帰島したりして、東京都小笠原村となったのです。
以下に、「小笠原返還協定」の全文を掲載しておきます。
〇「小笠原返還協定」(全文)
南方諸島及びその他の諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定
(略称)米国との小笠原返還協定
日本国総理大臣とアメリカ合衆国大統領は、千九百六十七年十一月十四日及び十五日に南方諸島及びその他の諸島の地位について検討し、これらの諸島の日本国への早期復帰をこの地域の安全をそこなうことなく達成するための具体的な取極に関して日本国政府及びアメリカ合衆国政府が直ちに協議に入ることに合意したので、
アメリカ合衆国は、南方諸島及びその他の諸島に関し、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第三条の規定に基づくすべての権利及び利益を日本国のために放棄することを希望するので、また、
日本国は、南方諸島及びその他の諸島の領域及び住民に対する行政、立法及び司法上のすべての権力を行使するための完全な権能及び責任を引き受けることを望むので、
よつて、日本国政府及びアメリカ合衆国政府は、この協定を締結することに決定し、このためそれぞれの代表者を任命した。これらの代表者は、次のとおり協定した。
第一条
1 アメリカ合衆国は、2に定義する南方諸島及びその他の諸島に関し、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第三条の規定に基づくすべての権利及び利益を、この協定の効力発生の日から日本国のために放棄する。日本国は、前記の日に、これらの諸島の領域及び住民に対する行政、立法及び司法上のすべての権力を行使するための完全な権能及び責任を引き受ける
2 この協定の適用上、「南方諸島及びその他の諸島とは、孀婦岩の南の南方諸島(小笠原群島、西之島及び火山列島を含む。)並びに沖の鳥島及び南鳥島をいい、これらの諸島の領水を含む。
第二条
日本国とアメリカ合衆国との間に締結された条約及びその他の協定(千九百六十年一月十九日にワシントンで署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約及びこれに関連する取極並びに千九百五十三年四月二日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の友好通商航海条約を含むが、これらに限られない。)は、この協定の効力発生の日から南方諸島及びその他の諸島に適用されることが確認される。
第三条
1 合衆国軍隊が現に利用している硫黄島及び南鳥島における通信施設用地(ロラン局)は、千九百六十年一月十九日にワシントンで署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定に定める手続に従つて、合衆国軍隊が使用する。もつとも、避けがたい遅延のためこの協定の効力発生の日までに前記の手続によることができない場合には、日本国は、アメリカ合衆国に対し、その手続が完了するまでの間、これらの特定の用地を引き続き使用することを許すものとする。
2 合衆国軍隊が現に利用している南方諸島及びその他の諸島における設備及び用地は、1に掲げるものを除くほか、この協定の効力発生の日に日本国に引き渡される。もつとも、避けがたい遅延のためこの協定の効力発生の日までに前記の引渡しを完了することができない場合には、日本国は、アメリカ合衆国に対し、その引渡しが完了するまでの間、これらの設備及び用地を引き続き使用することを許すものとする。
3 必要な手続又は引渡しが完了するまでの間合衆国軍隊が1及び2の規定に基づいて行なう設備及び用地の使用は、千九百六十年一月十九日にワシントンで署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に従つて行なわれた取極により規律されるものとする。
第四条
合衆国気象局が現に運営している南鳥島の測候所は、この協定の効力発生の日に日本国政府に引き渡される。この引渡しについて避けがたい遅延がある場合には、引渡しが完了するまでの間、測候所の現状どおりの運営が継続されることが合意される。
第五条
1 日本国は、この協定の効力発生の日前に南方諸島及びその他の諸島におけるアメリカ合衆国の軍隊若しくは当局の存在、職務遂行若しくは行動又はこれらの諸島に影響を及ぼしたアメリカ合衆国の軍隊若しくは当局の存在、職務遂行若しくは行動から生じたアメリカ合衆国並びにこれらの諸島の現地当局に対する日本国及びその国民のすべての請求権を放棄する。ただし、前記の放棄には、これらの諸島の合衆国による施政の期間中に適用されたアメリカ合衆国の法令又はこれらの諸島の現地法令により特に認められる日本国民の請求権の放棄を含まない。
2 日本国は、南方諸島及びその他の諸島の合衆国による施政の期間中に合衆国の当局若しくは現地当局の指令に基づいて若しくはその結果として行なわれ、又は当時の法令によつて許可されたすべての作為又は不作為の効力を承認し、合衆国国民又はこれらの諸島の居住者をこれらの作為又は不作為から生ずる民事又は刑事の責任に問ういかなる行動も執らないものとする。
3 合衆国の当局又は現地当局は、南方諸島及びその他の諸島の合衆国による施政の期間中、これらの諸島における財産権及び所有利益で、日本国及び前記の期間中にアメリカ合衆国が執つた措置により当該財産権又は利益の使用、収益又は行使を不可能にされた日本国民に属するものの権原を移転するようないかなる公的な行動も執らなかつたことが確認される。
第六条
この協定は、日本国がその国内法上の手続に従つてこの協定を承認した旨の通知をアメリカ合衆国政府が日本国政府から受領した日の後三十日目の日に効力を生ずる。
以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当な委任を受け、この協定に署名した。千九百六十八年四月五日に東京で、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。
日本国のために
三木武夫
アメリカ合衆国のために
U・アレクシス・ジョンソン
日本外務省編「わが外交の近況(外交青書)」昭和43年版(第13号)より
この協定は、昭和時代後期の1968年(昭和43)4月5日に、東京で署名された、日本とアメリカ合衆国との条約です。
太平洋戦争後、小笠原諸島は、アメリカの軍政の下に置かれ、島民は島外に退去させられました。しかしその後、沖縄返還と共に小笠原返還を求める旧島民やその他日本国民の要求が高まったのです。
その結果、1967年(昭和42)11月14日および11月15日に佐藤栄作内閣総理大臣とリンドン・ジョンソンアメリカ合衆国大統領が会談して、小笠原諸島の1年以内の返還に合意しました。
そして、アメリカとの小笠原返還協定は、1968年(昭和43)4月5日に調印、5月22日に国会で承認され、6月25日に発効したのです。
この協定は、前文と本文6ヶ条から成り、その内容は、前文で「サンフランシスコ平和条約」第3条の規定に基づくすべての権利及び利益を日本国のために放棄するとし、本文では、(1)小笠原の施政権の返還についての確認、(2)アメリカ合衆国との間に締結された条約及びその他の協定の適用の確認、(3)アメリカ軍施設の存続についての確認、(4)南鳥島の測候所の運営の継続、(5)裁判、訴訟等の効力について、(6)協定の発効についてを規定していました。
この協定発効後、小笠原の施政権が返還され、旧島民も帰島したりして、東京都小笠原村となったのです。
以下に、「小笠原返還協定」の全文を掲載しておきます。
〇「小笠原返還協定」(全文)
南方諸島及びその他の諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定
(略称)米国との小笠原返還協定
日本国総理大臣とアメリカ合衆国大統領は、千九百六十七年十一月十四日及び十五日に南方諸島及びその他の諸島の地位について検討し、これらの諸島の日本国への早期復帰をこの地域の安全をそこなうことなく達成するための具体的な取極に関して日本国政府及びアメリカ合衆国政府が直ちに協議に入ることに合意したので、
アメリカ合衆国は、南方諸島及びその他の諸島に関し、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第三条の規定に基づくすべての権利及び利益を日本国のために放棄することを希望するので、また、
日本国は、南方諸島及びその他の諸島の領域及び住民に対する行政、立法及び司法上のすべての権力を行使するための完全な権能及び責任を引き受けることを望むので、
よつて、日本国政府及びアメリカ合衆国政府は、この協定を締結することに決定し、このためそれぞれの代表者を任命した。これらの代表者は、次のとおり協定した。
第一条
1 アメリカ合衆国は、2に定義する南方諸島及びその他の諸島に関し、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第三条の規定に基づくすべての権利及び利益を、この協定の効力発生の日から日本国のために放棄する。日本国は、前記の日に、これらの諸島の領域及び住民に対する行政、立法及び司法上のすべての権力を行使するための完全な権能及び責任を引き受ける
2 この協定の適用上、「南方諸島及びその他の諸島とは、孀婦岩の南の南方諸島(小笠原群島、西之島及び火山列島を含む。)並びに沖の鳥島及び南鳥島をいい、これらの諸島の領水を含む。
第二条
日本国とアメリカ合衆国との間に締結された条約及びその他の協定(千九百六十年一月十九日にワシントンで署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約及びこれに関連する取極並びに千九百五十三年四月二日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の友好通商航海条約を含むが、これらに限られない。)は、この協定の効力発生の日から南方諸島及びその他の諸島に適用されることが確認される。
第三条
1 合衆国軍隊が現に利用している硫黄島及び南鳥島における通信施設用地(ロラン局)は、千九百六十年一月十九日にワシントンで署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定に定める手続に従つて、合衆国軍隊が使用する。もつとも、避けがたい遅延のためこの協定の効力発生の日までに前記の手続によることができない場合には、日本国は、アメリカ合衆国に対し、その手続が完了するまでの間、これらの特定の用地を引き続き使用することを許すものとする。
2 合衆国軍隊が現に利用している南方諸島及びその他の諸島における設備及び用地は、1に掲げるものを除くほか、この協定の効力発生の日に日本国に引き渡される。もつとも、避けがたい遅延のためこの協定の効力発生の日までに前記の引渡しを完了することができない場合には、日本国は、アメリカ合衆国に対し、その引渡しが完了するまでの間、これらの設備及び用地を引き続き使用することを許すものとする。
3 必要な手続又は引渡しが完了するまでの間合衆国軍隊が1及び2の規定に基づいて行なう設備及び用地の使用は、千九百六十年一月十九日にワシントンで署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に従つて行なわれた取極により規律されるものとする。
第四条
合衆国気象局が現に運営している南鳥島の測候所は、この協定の効力発生の日に日本国政府に引き渡される。この引渡しについて避けがたい遅延がある場合には、引渡しが完了するまでの間、測候所の現状どおりの運営が継続されることが合意される。
第五条
1 日本国は、この協定の効力発生の日前に南方諸島及びその他の諸島におけるアメリカ合衆国の軍隊若しくは当局の存在、職務遂行若しくは行動又はこれらの諸島に影響を及ぼしたアメリカ合衆国の軍隊若しくは当局の存在、職務遂行若しくは行動から生じたアメリカ合衆国並びにこれらの諸島の現地当局に対する日本国及びその国民のすべての請求権を放棄する。ただし、前記の放棄には、これらの諸島の合衆国による施政の期間中に適用されたアメリカ合衆国の法令又はこれらの諸島の現地法令により特に認められる日本国民の請求権の放棄を含まない。
2 日本国は、南方諸島及びその他の諸島の合衆国による施政の期間中に合衆国の当局若しくは現地当局の指令に基づいて若しくはその結果として行なわれ、又は当時の法令によつて許可されたすべての作為又は不作為の効力を承認し、合衆国国民又はこれらの諸島の居住者をこれらの作為又は不作為から生ずる民事又は刑事の責任に問ういかなる行動も執らないものとする。
3 合衆国の当局又は現地当局は、南方諸島及びその他の諸島の合衆国による施政の期間中、これらの諸島における財産権及び所有利益で、日本国及び前記の期間中にアメリカ合衆国が執つた措置により当該財産権又は利益の使用、収益又は行使を不可能にされた日本国民に属するものの権原を移転するようないかなる公的な行動も執らなかつたことが確認される。
第六条
この協定は、日本国がその国内法上の手続に従つてこの協定を承認した旨の通知をアメリカ合衆国政府が日本国政府から受領した日の後三十日目の日に効力を生ずる。
以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当な委任を受け、この協定に署名した。千九百六十八年四月五日に東京で、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。
日本国のために
三木武夫
アメリカ合衆国のために
U・アレクシス・ジョンソン
日本外務省編「わが外交の近況(外交青書)」昭和43年版(第13号)より