SDGs01
 今日は、昭和時代後期の1987年(昭和62)に、東京で開催された環境と開発に関する世界委員会(WCED)で「持続的開発の8原則」を含む「東京宣言」が採択された日です。
 「東京宣言(とうきょうせんげん)」は、東京で開催された環境と開発に関する世界委員会(国連環境特別委員会・ブルントランド委員会)の最終会合で、採択された「持続的開発の8原則」を含む宣言でした。その内容は、地球的規模で進行しつつある環境破壊に対処し人類社会の永続的発展を保証するため、各国政府および国民に対し「持続可能な開発」を国の政策および国際協力の最優先目標として掲げ、その実現のため成長の回復、成長の質の転換、資源基盤の保全と強化等8つの戦略・原則を政策行動の指針として採用することを求めたものです。
 環境と開発に関する世界委員会(WCED)は、ノルウェー首相のブルントラントを委員長として、1984~87年までの4年間にわたり、精力的な活動を展開してきましたが、最終年の4月には、「OurCommon Future(邦題:我ら共有の未来)」と題する報告書を公表、その内容は、①持続可能な開発とは、未来の世代が自分たち自身の欲求を満たすために能力を減少させないように現在の世代の欲求を満たすような開発である。②持続的な開発は、地球上の生命を支えている自然のシステム-大気、水、土、生物-を危険にさらすものであってはならない。③持続的開発のためには、大気、水、その他自然への好ましくない影響を最小限に抑制し、生態系の全体的な保全を図ることが必要である。④持続的開発とは、天然資源の開発、投資の方向、技術開発の方向付け、制度の改革がすべて一つにまとまり、現在および将来の人間の欲求と願望を満たす能力を高めるように変化していく過程をいう。とされ、同年12月の国連総会の場において、これを基本的に支持する決議が採択されました。この考えは、広く世界の支持を得ていき、1989年(平成元)の第44回国連総会では、1972年(昭和47)の国連人間環境会議の20周年を記念し、21世紀に向けて人類がどのように環境と開発の戦略を持つべきか議論する場として、1992年(平成4)に「環境と開発に関する国連会議(UNCED/地球サミット)」を開催することが決定されていきます。
 その後、ESD(education for sustainable development)、つまり持続可能な開発を促進するため、地球的な視野をもつ市民を育成することを目的とする教育の重要性が提唱され、近年では「SDGs(エスディージーズ)」として、関心が高まっています。
 以下に、「国連環境特別委員会東京会合宣言」の日本語訳と環境と開発に関する世界委員会報告書『Our Common Future(邦題:我ら共有の未来)』の概要を掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇「国連環境特別委員会東京会合宣言」(日本語訳) 1987年(昭和62)2月27日[於:東京]

東京宣言

「国連環境特別委員会」は,国連総会により独立の機関として1984年に設立され,自らに以下の任務を課した。
a)環境と開発に係る重要問題を再検討し,これに対処するための革新的,具体的かつ現実的な行動提言を行うこと。
b)環境と開発に係る国際協力を強化すると共に,現在の様式や慣行を脱し,必要とされる改革に向かって政策や社会の動向に影響を与えることのできる新たな協力の形態を検討し,提言すること。
c)個人,ボランティア組織,経済界,研究機関及び政府の理解を深め,より多くの実践活動への参加を求めること。
ここ東京においてその任務を終えるにあたり,委員一同は,豊かで,公正で,そして安全な将来を築き得る,という信念を変えていない。
しかしながら,その実現の可能性は,すべての国々が持続的開発を,国内政策と国際協力の最優先目標として,また評価基準として採用することにかかっている。持続的開発とは,簡潔に言えば将来の世代のニーズを損うことなく現在の世代のニーズを満たすような人類社会の進歩への取り組み方,と定義づけることができる。西暦2000年を超えて,21世紀へと成功のうちに移行するには,社会の諸目的が,このような大規模な変換を遂げなければならない。また,いくつかの戦略を一致して強力に推進する必要がある。
「国連環境特別委員会」は,世界のすべての国々に対し,互いに協調し合い,また個々の努力を通じて,持続的開発を各国機関の諸目標に組み入れるとともに,以下の原則を政策行動の指針として採択することを求める。

1. 成長の回復

貧困は環境悪化の主たる要因であり,開発途上国の多くの人々に影響を与えるだけではなく,先進工業国を含む諸国から成る共同体全体の持続的開発を脅かすものでもある。特に,途上国においては環境の資源基盤を増強しつつ,経済成長を促す必要がある。先進工業国は世界経済の活性化に寄与することが可能であり,要求されていることでもある。是非とも必要なことは,債務危機解決のため,国際的な緊急行動をとること,開発資金の流れを大幅に増加させること,低所得一次産品輸出国の外貨獲得高を安定化させることである。

2. 成長の質の変換

成長は回復されても,その成長とは今までと異なったものでなければならない。即ち,持続可能性,公平性,社会的正義,安全性などを社会的目標として基盤に据えたものである。安全で環境保全型のエネルギーパスは,このための不可欠な要素である。教育,コミュニケーション,国際協力などはすべてこれらの目標の達成に寄与するものである。開発計画者は国の財産を評価する際,在来の経済指標のみならず天然資源の状況にも十分な考慮を払うべきである。所得の分配を改善し,自然災害や技術的リスクを低減し,保健衛生の状況を改良し,文化遺産を保護することはすべて成長の質の向上に寄与するものである。

3. 資源基盤の保全と強化

持続を可能にするには,空気,水,森林,土壌などの環境資源を保全し,遺伝子の多様性を維持し,エネルギー,水,原料を効率的に使用することが必要である。天然資源の1人当たりの消費量を減らすために生産効率の改善を加速し,環境を汚染しない製品や技術への移行をはかる必要がある。すべての国々に対し環境規制を厳正に施行し,むだの少ない技術を奨励し,新しい製品,技術,廃棄物の環境影響を予測することにより,環境汚染を未然に防止することが要請されている。

4. 持続可能な人口水準の実現

人口政策の立案にとっては,他の経済社会開発計画一例えば教育,保健衛生,貧困者の生計基盤の拡大一などが整合性をもったものとならなければならない。家族計画対策を広くいきわたらせることもまた,社会開発の一形式であり,ひいては夫婦,特に女性の自決権を認めるものである。

5. 技術の方向転換とリスク管理

技術は危険を生み出す一方で,危険を管理する手段を提供する。途上国の技術革新能力は大幅に強化される必要がある。また,すべての国々において,技術開発の方向が,環境要因を十分配慮したものになるように変えていかなければならない。新技術の普及に先立ってその潜在的影響を評価するため,国内的及び国際的メカニズムの確立が必要である。同様の制度は,河川の水路変更や森林伐採などの自然生態系への大幅な介入についても必要となる。損害賠償責任が強化される必要がある。環境と開発の問題に関する政策決定の過程には市民参加の拡大と,適切な情報への自由なアクセスが促進されなければならない。

6. 政策決定における環境と経済の統合

環境と経済は,相互に補強し合うことができるし,またそうしなければならない。持続を可能にするには,政策決定の影響に対する責任を拡大する必要がある。政策決定者は,その決定が自国の環境資源基盤に与える影響について責任を負わなければならない。この場合,環境破壊の症状にではなく破壊の原因に焦点を合わせるべきである。環境破壊を予見し未然に防ぐためには,経済・通商,エネルギー農業,その他の側面と同時に政策の環境的側面を考慮しなければならない。環境的側面についてはこういつた国内的及び国際的諸機関が,他の検討事項と同じレベルで検討されなければならない。

7. 国際経済関係の改革

長期にわたる持続的成長を達成するには,より公平で,かつ環境上の緊急課題によりょく同調した通商,資本,技術の流れを生み出すような広範囲にわたる改革が必要である。経済及び通商基盤の多角化され自立性が強化されることを通じて,途上国が機会拡大をはかるためには,市場へのアクセス,技術移転,国際金融面における抜本的な改善が必要である。

8. 国際協力の強化

国際協力に環境問題の諸要素を導入することにより・問題の緊急性が浮彫りにされ,また,相互の利益を認識するものである。資源の劣化と貧困の相互作用の問題を放置すれば,それは国境を越えて,地球的規模の環境問題と化すからである。国際開発の全分野にわたって環境の監視,評価,研究開発,そして資源管理により高い優先度を与えなければならない。そのためには,すべての国々が強い決意をもって,国際機関の機能を十分発揮させ,通商,投資などの分野の国際的ルールを確立し,遵守するとともに,国益が対立し調整のため交渉を要するような多くの問題についても,建設的な対話を行っていく必要がある。また,それは世界の平和と安全にとって本質的な重要性とは何かを認識することを求めるものである。人類の進歩には多国間協力を新しい次元に展開することこそが不可欠である。

我々が今世紀に於て,バランスをもってこれらの原則に合致する確たる前進をすることができるならば,次の世紀には全ての人類にとって,より安全で,より豊かで,より公平で,そしてより希望に満ちた未来をもたらし得ることを委員会は確信するものである。

〇環境と開発に関する世界委員会報告書『Our Common Future(邦題:我ら共有の未来)』(概要)1987年(昭和62)4月

第1章 未来への脅威 
 今日、酸性雨、熱帯林の破壊、砂漠化、温室効果による気温の上昇、オゾン層の破壊等、人類の生存の基盤である環境の汚染と破壊が地球的規模で進行している。この背後には、過度の焼畑農業による熱帯林破壊に見られるような貧困からくる環境酷使と、富裕に溺れる資源やエネルギーの過剰消費がある。

第2章 持続可能な開発に向けて 
 いまや人類は、こうした開発と環境の悪循環から脱却し、環境・資源基盤を保全しつつ開発を進める「持続可能な開発」の道程に移行することが必要である。成長の回復と質の改善、人間の基本的ニーズの充足、人口の抑制、資源基盤の保全、技術の方向転換とリスクの管理、政策決定における環境と経済の統合が主要な政策目標である。

第3章 国際経済の役割 
 世界経済の成長速度を増大させつつ、地球環境への圧力を制御し得る方向に世界経済を再編成することが求められており、開発途上国の債務問題の解決、一次産品の価格安定化による開発途上国の農業の振興、多国籍企業活動の改善、技術基盤の拡大等が必要である。

第4章 人口と人的資源 
 家族計画、女性の自立等を推進することによって、人口の増加を制御し、環境への圧力を減ずる必要がある。また、健康改善、教育の推進等により、人的資源の質の向上を図り、環境管理の能力を向上させるとともに、少数民族の保護を図ることも重要である。

第5章 食糧安全保障:潜在生産能力の維持 
 世界の食糧問題を解決するために、先進国における過剰な補助金や保護貿易主義の撤廃、土壌、水、森林等の生産基盤の保全、農業技術の普及・発展、開発途上国における土地改革や小規模農家の保護・育成を推進する必要がある。

第6章 種と生態系:開発のための資源 
 農産物の品種改良や衣料品の開発のために欠くことのできない資源であり、かつ、倫理的、文化的にも重要な生物種が急速に損なわれつつある。特に、地球上の種の半分が存在するとされている熱帯林では、貴重な野生生物が絶滅に瀕している。このため、各国政府と国際機関は、保護区域の拡大、種の保存のための条約の締結や財源の確保等を推進する必要がある。

第7章 エネルギー:環境と開発のための選択 
 環境保全を図りつつ、開発途上国を中心に今後大幅に増大するエネルギー需要に対応するために、化石燃料の使用に伴う環境汚染の防止、原子力エネルギーの安全性向上、再生可能エネルギーの使用、エネルギー効率の向上、省エネルギー対策を促進する必要がある。

第8章 工業:小をもって多を生産する 
 近年の工業の構造変化や技術開発により、開発途上国の工業化による汚染の拡大、化学物質による新たな汚染、事故のリスクの増大等の問題が生じている。このため、環境上の目標の設定と規制の実施、経済的手段の効果的利用、計画段階での環境配慮、産業界の対応能力の強化、有害物質管理能力の向上、国際協力による途上国への技術、財政、行政面での支援等が必要である。

第9章 都市の挑戦 
 特に途上国においては、都市の人口集中が著しく、住宅、衛生、環境汚染等、様々な問題が生じていることから、大都市への人口集中の抑制や地方都市の整備、市民や住民組織の協力促進、低所得者に焦点を当てた住宅政策等が不可欠であり、これらを促進するために、途上国間の協力と先進国の支援が必要である。

第10章 共有財産の管理 
 海洋、宇宙、南極は人類の究極の共有財産である。海洋については、漁業資源の保護と有害廃棄物の海洋投棄の規制の為の条約の整備、宇宙については、リモートセンシングの促進、限られた静止衛星軌道の効率的利用、宇宙の廃棄物の管理を始めとする利用体制の整備、南極については、南極条約の拡充が必要である。

第11章 平和、安全保障、開発及び環境 
 砂漠化による難民の発生や資源をめぐる争いにも見られるように、環境問題は国際紛争の大きな原因である。一方、戦争は環境に対する最大の脅威であるとともに人類の発展のために振り向けられるべき資源を浪費する。このような問題に対処するために国際社会は、国際的共有財産の共同管理、環境悪化の早期発見、軍縮の促進と軍事費の環境保全対策の振り向け等に努めるべきである。

第12章 共有の未来のための認識と行動 
 持続可能な開発の道程に移行するため、環境悪化の結果への対応を中心とした従来の取組を強化するとともに、環境問題の原因に焦点を当てた取組を国際協力の下に開始すべく、組織及び法制度を大胆に変革する必要がある。すなわち、各国の環境行政機構やUNEPの強化、全地球的モニタリングやリスク評価の推進、NGO、学会、産業界等の参加の促進、環境保全と持続可能な開発に関する世界宣言と条約の準備、多国間援助や二国間援助の改善と強化、国際的な活動に対する資金の確保等に努めることが重要である。

☆ESDに関する世界の動きと国内の取組

・1972年 ストックホルムで「国連人間環境会議」開催 「人間環境宣言」廃棄物の海洋投棄禁止条約(ロンドン条約)採択、「国連環境計画」(UNEP)の設立決定
・1973年 国連環境計画(UNEP)発足、絶滅野生動植物の輸出入禁止条約(ワシントン条約)採択
・1974年 海洋汚染防止条約(IMCO条約)採択、第6回国連特別総会(資源と開発がテーマ)、第3次国連海洋法会議が開幕(カラカス)、世界人口会議(ブカレスト)・世界食糧会議(ローマ)、OECD第1回環境大臣会議
・1975年 第7回国連特別総会(開発と経済協力がテーマ)
・1976年 第4回国連貿易開発会議(UNCTAD)総会、国連人間居住(ハビタット)会議(バンクーバー)
・1977年 国連水会議(マルデルプラータ)、国連砂漠化防止会議(ナイロビ)、環境教育政府間会議(トビリシ)
・1982年 UNEP理事会特別会合(ストックホルム会議10周年記念)(ナイロビ)
・1983年 「環境と開発に関する世界委員会」発足
・1985年 オゾン層保護全権会議(ウィーン)ウィーン条約採択
・1987年 ブルントラント委員会最終会合(東京)にて東京宣言を出す、報告書「我ら共通の未来」発表、オゾン層保護条約外交会議(モントリオール)、モントリオール議定書採択
・1988年 IPCC(気候変動政府間パネル)設立
・1990年 世界気候会議(ジュネーブ)
・1992年 国連環境開発会議(地球サミット)(リオデジャネイロ)、アジェンダ21とリオ宣言、森林原則宣言の採択、気候変動枠組み条約と生物多様性条約の調印
・1993年 世界人権会議(ウィーン)
・1994年 国際人口開発会議(カイロ)
・1995年 社会開発サミット(コペンハーゲン)、世界女性会議(北京)
・1997年 COP3第三回気候変動枠組み条約締約国会議(京都)
・2000年 COP6第六回気候変動枠組み条約締約国会議(ハーグ)
・2001年 POPs(残留有機汚染物質)規制条約が採択、COP6追加会合(ボン)  
・2002年9月 ヨハネスルクサミットにおいて、我が国よりESDの10年を提案し、持続可能な開発に関する世界首脳会議実施計画に盛り込まれる
・2002年12月 第57回国連総会にて、我が国より2005年から2014年までを「国連ESDの10年」とする旨の決議案を提出し、満場一致で採択される
・2005年9月 「国連ESDの10年」の推進機関であるユネスコが「国連ESDの10年国際実施計画案」を策定する
・2005年12月 「国連持続可能な開発のための教育の10年」関係省庁連絡会議を内閣に設置する
・2006年3月 「国連持続可能な開発のための教育の10年」に関する実施計画を策定する
・2007年7月 第4回世界環境教育会議が、南アフリカ・ダーバンにて開催する
・2007年11月 第四回環境教育国際会議が、インド・アーメダバードにて開催する  
・2008年12月 ESD国連フォーラム2008を国連大学にて開催する
・2009年3月 国連ESDの10年の中間年に、ドイツ・ボンにおいてESD世界会議を開催する

〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)

1594年(文禄3)豊臣秀吉による吉野の花見が開宴される(新暦4月17日)詳細
1754年(宝暦4)江戸幕府の命で薩摩藩が木曾川の治水工事(宝暦治水)に着手(新暦3月20日)詳細
1875年(明治8)日本初の近代的植物園・小石川植物園が開園する詳細
1946年(昭和21)GHQより「社会救済に関する覚書」(SCAPIN-775)が出される詳細