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 今日は、奈良時代の734年(天平6)に、「得度・授戒の制」が定められた日ですが、新暦では12月20日となります。
 「得度・授戒の制」(とくど・じゅかいのせい)は、一般に剃髪(髪を剃ること)し、弟子となるために求められる戒のお授けをいただいて仏弟子となる儀式ですが、聖武天皇の御代に厳格化されました。
 当時は、僧侶になれば税を逃れられるため、勝手に出家する人々も多く、規律も乱れ始めます。それまで、家を出て仏門にはいる人は、嘱託請求によるところが多かったのですが、法華経一部、あるいは最勝王経一部を暗誦し、併せて仏を礼拝することを理解し、清浄な行いが3年以上の者のみを選ぶようにしたものでした。
 この後、聖武天皇は、この国が仏法によって守護されることを願い、741年(天平13)に、「国分寺建立の詔」を出し、全国に国分寺、国分尼寺を創建、743年(天平15)に「大仏造立の詔」を発し、仏教興隆のために邁進していきます。
 以下に、『続日本紀』卷第十一の天平6年11月21日の条に書かれている「得度・授戒の制」について、現代語訳・注釈付で掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇『続日本紀』卷第十一 天平6年11月21日の条

<原文>

戊寅。太政官奏。仏教流伝、必在僧尼。度人才行、実簡所司。比来出家、不審学業。多由嘱請。甚乖法意。自今以後。不論道俗。所挙度人。唯取闇誦法華経一部。或最勝王経一部。兼解礼仏。浄行三年以上者。令得度者。学問弥長。嘱請自休。其取僧尼兒詐作男女。令得出家者。准法科罪。所司知而不正者与同罪。得度者還俗。奏可之。

<読み下し文>

戊寅[1]。太政官[2]奏すらく、「仏教の流伝[3]は、必ず僧尼に在り。度人[4]の才行[5]は、実に所司[6]に簡ぶ。比来出家[7]は、学業を審らかにせず、多く嘱請[8]に由る。甚だ法意[9]に乖けり。今より以後、道俗[10]を論ぜず、挙する所の度人[4]は、唯法華経[11]一部、或は最勝王経[12]一部を闇誦[13]し、兼ねて礼仏[14]を解し、浄行[15]三年以上の者を取りて得度[16]せしめば、学問弥長えにして、嘱請[8]自ら休まん。其の僧尼兒を取り詐て男女と作して、出家[7]することを得令めは、法に准して罪を科せん。所司[6]知て而正さざれば、者与同罪、得度[16]の者をば還俗[17]せしめんとす。」と。これを奏可す。

【注釈】

[1]戊寅:ぼいん=十干と十二支とを組み合わせたものの第一五番目。こでは11月21日のこと。
[2]太政官:だじょうかん=令制で、国政の最高機関。八省以下の百官を総轄し、国家の大政を総理する。
[3]流伝:るでん=世に広まり伝わること。広く言い伝えられること。
[4]度人:どじん=得度する人。
[5]才行:さいこう=才知と品行。才能と身持ち。
[6]所司:しょし=僧侶の職名。行事・勾当・公文など寺務をつかさどる僧の総称。
[7]出家:しゅっけ=家を出て仏門にはいること。俗世を離れ仏法修行の道にはいること。
[8]嘱請:しょくせい=嘱託請求。
[9]法意:ほうい=法の趣意。
[10]道俗:どうぞく=僧侶と俗人。仏道にはいっている人と俗世間の人。
[11]法華経:ほっけきょう=大乗仏教経典の一つで、「妙法蓮華経」の略称。
[12]最勝王経:さいしょうおうきょう=仏教の教典の一つで「金光明最勝王経」のこと。
[13]闇誦:あんしょう=文章などをそらで覚えて口に出すこと。そらよみ。
[14]礼仏:らいぶつ=仏を礼拝すること。
[15]浄行:じょうぎょう=清浄な行い。特に、淫欲をつつしむこと。
[16]得度:とくど=涅槃(ねはん)の彼岸に渡ること。転じて、出家して僧尼となること。
[17]還俗:げんぞく=出家した者がふたたび俗人に戻ること。

<現代語訳>

11月21日。太政官が奏上した。「仏教が世に広まり伝わるかは、必ず僧尼によります。出家して僧尼となろうとする人の才知と品行は、実に担当僧侶が選ぶところです。この頃の出家は、学業を究めないで、多くが嘱託請求に由っています。はなはだ法の趣意に乖離するものです。今より以後は、僧侶と俗人を問わず、推挙され出家して僧尼となろうとする人から、ただ法華経一部、あるいは最勝王経一部を暗誦し、併せて仏を礼拝することを理解し、清浄な行いが3年以上の者のみを選んで、出家して僧尼となるようにすれば、学問にもよく長じて、嘱託請求は自ら少なくなるでしょう。その僧尼の子供をもらい受け、偽って自分の家の男女となして、出家することをさせたならは、法に準拠して罪を科すことにします。担当僧侶が知っていて正さなかったならば、その者も同罪とし、出家して僧尼になった者も俗人に戻させることとします。」と。これを許可された。

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