ガウスの歴史を巡るブログ(その日にあった過去の出来事)

 学生時代からの大の旅行好きで、日本中を旅して回りました。その中でいろいろと歴史に関わる所を巡ってきましたが、日々に関わる歴史上の出来事や感想を紹介します。Yahooブログ閉鎖に伴い、こちらに移動しました。

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 今日は、1984年(昭和59)に、島根県の荒神谷遺跡で多数の銅剣が発見された日です。
 この遺跡は、島根県出雲市斐川町神庭にある弥生時代の青銅器埋納遺跡で、広域農道の建設に伴い発見され、1984年~1985年の発掘調査で、銅剣358本、銅鐸6個、銅矛16本が出土し、青銅器研究史上空前の大発見として注目を集めました。
 その後、銅剣は1985年(昭和60)、銅鐸・銅矛は1987年(昭和62)に国の重要文化財に指定され、遺跡も同年に国の史跡に指定されたのです。さらに、1998年(平成10)には、一括して「島根県荒神谷遺跡出土品」として国宝に指定されました。
 遺跡一帯は、「荒神谷史跡公園」として整備され、2005年(平成17)には公園内に「荒神谷博物館」が開館し、出土品の期間展示、出雲の弥生時代の解説などが行われています。また、出土品は「島根県立古代出雲歴史博物館」に常設展示されています。

〇荒神谷遺跡発掘状況
<銅剣>
・発掘時の状態
 2段に加工された平坦面の下段に浅く掘りくぼめた長さ2.6m、幅1.5mの埋納壙に南北に4列、いずれも刃を立て密着した状態で西から34本、111本、120本、93本が整然と並べられていました。
・発掘品の特徴
 358本の銅剣は、全て中細形c類と呼ばれるもので、全長50~53cm前後、重さ500g余と大きさも重さもほぼ同じで、弥生時代中期~後期の製作と考えられています。このうち344本の茎には、鋳造後にタガネ状の工具で×印を刻まれていました。刃こぼれなどがみられず、形式が単一であることなどから、鋳造後比較的短期間のうちに一括埋納されたものと推定されています。

<銅鐸>
・発掘時の状態
 東西約2m、南北約1.2mに掘りくぼめた埋納壙の西半分に銅鐸が、東半分に銅矛が一括埋納されていました。
・発掘品の特徴
 6個の銅鐸は総高21.7~24cmの小型品で、分類としては、菱環鈕式横帯文銅鐸1個、外縁鈕式四区袈裟襷文銅鐸5個が出土しています。

<銅矛>
・発掘時の状態
 東西約2m、南北約1.2mに掘りくぼめた埋納壙の西半分に銅鐸が、東半分に銅矛が一括埋納されていました。
・発掘品の特徴
 16本の銅矛は全長69.6~84cm(中細形2本、中広形14本)で、北部九州からの搬入品と考えられています。
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 今日は、1864年(元治元)に幕末の思想家・洋学者佐久間象山が、亡くなった日(新暦では8月12日)です。
 佐久間象山(さくましょうざん又はぞうざん)は、江戸時代後期の松代藩士、兵学者、思想家で、名は国忠、のち啓、通称は修理です。
 1811年(文化8年2月28日)に、松代藩士・佐久間一学国善の長男として信濃国埴科郡松代(現在の長野県長野市松代町)で生まれました。
 1828年(文政11)、17歳で家督を継ぎ、1831年(天保2年3月)に藩主の世子である真田幸良の近習・教育係に抜擢されたのです。
 1833年(天保4)に江戸に遊学し、林家の塾頭佐藤一斎の門に入り、詩文を学び、泰西の書を研究し兵学を講じたりしました。1842年(天保13)、主君真田幸貫が老中海防掛に就任すると、顧問に抜擢され、命を受けて海外事情を研究し、「海防八策」を建白したのです。
 次いで、蘭学を勉強し、江川英竜に西洋砲術を学び、講じるようになりました。門下には、勝海舟、吉田松陰、坂本龍馬らの逸材がいます。
 しかし、1854年(嘉永7)に吉田松陰の密航事件に連座して、以後9年間、松代に蟄居させられました。
 1862年(文久2)には蟄居を解かれ、1864年(元治元)幕命を受けて上京し、公武合体論と開国論を要人に説いて回りましたが、それが尊攘激派の怒りを買い、同年7月11日に54歳で斬殺されたのです。

〇「海防八策」とは?
 1842年(天保13)、主君真田幸貫が老中海防掛に就任したおりに、佐久間象山は顧問に抜擢され、命を受けて、アヘン戦争(1840~1842)で重大になっていた海外情勢を探究し、「海防八策」を幸貫に上書したとされています。
 内容は、だいたい以下のようなものでした。
一、諸国海岸要害之所、厳重に炮台を築き、平常大炮を備へ置き、緩急の事に応じ候様支度候事。
二、阿蘭陀交易に銅を被差遣候事、暫御停止に相成、右之銅を以、西洋製に倣ひ数百数千門之大炮を鋳立、諸方に御分配有之度候事。
三、西洋之製に倣ひ堅固の大船を作り、江戸御廻米に難破船無之様支」度候事。
四、海運御取締りの義、御人選を以て被仰付、異国人と通商は勿論、海上万端之奸猾、厳敷御糾有御座候事。
五、洋製に倣ひ船艦を造り、専ら水軍の駆引を習はせ申度事。
六、辺鄙の浦々里々に至り候迄、学校を興し教化を盛に仕、愚夫愚婦迄も、忠孝節義を弁へ候様仕度候事。
七、御賞罰弥明に御威恩益々顕れ、民心愈固結仕候様仕度候事。
八、貢士之法起し申度候事

<現代語訳>
一、諸国の沿岸の要所にしっかりとした砲台を構築し、平時から大砲を設置して、緊急時に備えること。
二、オランダとの貿易に銅を輸出するのを停止し、その銅で欧米のような大砲を多数鋳造し、各所に配置すること。
三、欧米に劣らぬしっかりとした大船を作り、江戸に米を送るときに難破しないようにすること。
四、海運に携わる役人を厳選して、外国人との通商はもちろん、海上の取り締まりを強化すること。
五、海外の造船技術を学んで戦艦を造り、海軍の養成につとめること
六、辺境に至るまで全国津々浦々に学校を設置して教育を盛んにし、国民全てが忠孝や道徳を学ぶこと。
七、信賞必罰を徹底し、国家に対して民の信頼を高めること。
八、身分にとらわれない人材登用の道を設けること。
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 今日は、1948年(昭和23)に「温泉法」(昭和23年法律第125号)が制定・公布された日です。
 この法律によって、温泉の定義がはっきりし、戦前は鉱泉などと呼ばれていた温度の低いものも、この温泉法制定以後の基準では、一定の成分を含んでいれば、温泉となるものが多くなりました。その後、時々の状況に応じて、改正されて現在に至っています。

〇「温泉法」とは?
 昭和時代中期の1948年(昭和23)7月10日に制定・公布(昭和23年法律第125号)され、時々の状況に合わせて何度か改正されていますが、「温泉を保護し、温泉の採取等に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害を防止し、及び温泉の利用の適正を図り、もって公共の福祉の増進に寄与することを目的とする」(第1条)とした法律です。
 温泉の定義、温泉を湧出させるための土地の掘削の許可、温泉源からの温泉の採取の許可、温泉の利用の許可、温泉成分等の表示などに関して規定しています。
 2004年(平成16)夏に、各地の温泉で、水道水を沸かしたお湯の使用や着色剤の使用等が問題となったことを受けて、翌年2月に本法施行規則が改正され、従来の温泉成分に関する表示義務に加え、加水、加温、循環装置の利用、入浴剤の利用など浴槽内の温泉の状況についても表示を義務付けたほか、10年以内ごとの温泉成分分析も義務付けられました。
 さらに、2007年(平成18)6月に、東京都渋谷区の温泉入浴施設で発生したガス爆発事故に関係して、同年に改正され、「温泉の採取等に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害を防止」することが目的に加えられたほか、温泉源からの温泉の採取に対しても許可制度が導入されたのです。
 以下に、2011年(平成23)8月30日に改正されたものの全文を掲載しておきます。

☆「温泉法」(全文)
第1章 総 則

(目的)
第1条 この法律は、温泉を保護し、温泉の採取等に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害を防止し、及び温泉の利用の適正を図り、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。

(定義)
第2条 この法律で「温泉」とは、地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表に掲げる温度又は物質を有するものをいう。

2 この法律で「温泉源」とは、未だ採取されない温泉をいう。

第2章 温泉の保護等

(土地の掘削の許可)
第3条 温泉をゆう出させる目的で土地を掘削しようとする者は、環境省令で定めるところにより、都道府県知事に申請してその許可を受けなければならない。

2 前項の許可を受けようとする者は、掘削に必要な土地を掘削のために使用する権利を有する者でなければならない。

(許可の基準)
第4条 都道府県知事は、前条第1項の許可の申請があつたときは、当該申請が次の各号のいずれかに該当する場合を除き、同項の許可をしなければならない。
一 当該申請に係る掘削が温泉のゆう出量、温度又は成分に影響を及ぼすと認めるとき。
二 当該申請に係る掘削のための施設の位置、構造及び設備並びに当該掘削の方法が掘削に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害の防止に関する環境省令で定める技術上の基準に適合しないものであると認めるとき。
三 前2号に掲げるもののほか、当該申請に係る掘削が公益を害するおそれがあると認めるとき。
四 申請者がこの法律の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなつた日から2年を経過しない者であるとき。
五 申請者が第9条第1項(第3号及び第4号に係る部分に限る。)の規定により前条第1項の許可を取り消され、その取消しの日から2年を経過しない者であるとき。
六 申請者が法人である場合において、その役員が第2号のいずれかに該当する者であるとき。

2 都道府県知事は、前条第1項の許可をしないときは、遅滞なく、その旨及びその理由を申請者に書面により通知しなければならない。

3 前条第1項の許可には、温泉の保護、可燃性天然ガスによる災害の防止その他公益上必要な条件を付し、及びこれを変更することができる。

(許可の有効期間等)
第5条 第3条第1項の許可の有効期間は、当該許可の日から起算して2年とする。

2 都道府県知事は、第3条第1項の許可に係る掘削の工事が災害その他やむを得ない理由により当該許可の有効期間内に完了しないと見込まれるときは、環境省令で定めるところにより、当該許可を受けた者の申請により、1回に限り、2年を限度としてその有効期間を更新することができる。

(土地の掘削の許可を受けた者である法人の合併及び分割)
第6条 第3条第1項の許可を受けた者である法人の合併の場合(同項の許可を受けた者である法人と同項の許可を受けた者でない法人が合併する場合において、同項の許可を受けた者である法人が存続する場合を除く。)又は分割の場合(当該許可に係る掘削の事業の全部を承継させる場合に限る。)において当該合併又は分割について都道府県知事の承認を受けたときは、合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人又は分割により当該事業の全部を承継した法人は、同項の許可を受けた者の地位を承継する。

2 第4条第1項(第4号から第6号までに係る部分に限る。)及び第2項の規定は、前項の承認について準用する。この場合において、同条第1項中「申請者」とあるのは、「合併後存続する法人若しくは合併により設立される法人又は分割により当該許可に係る掘削の事業の全部を承継する法人」と読み替えるものとする。

(土地の掘削の許可を受けた者の相続)
第7条 第3条第1項の許可を受けた者が死亡した場合において、相続人(相続人が2人以上ある場合において、その全員の同意により当該許可に係る掘削の事業を承継すべき相続人を選定したときは、その者。以下この条において同じ。)が当該許可に係る掘削の事業を引き続き行おうとするときは、その相続人は、被相続人の死亡後60日以内に都道府県知事に申請して、その承認を受けなければならない。

2 相続人が前項の承認の申請をした場合においては、被相続人の死亡の日からその承認を受ける日又は承認をしない旨の通知を受ける日までは、被相続人に対してした第3条第1項の許可は、その相続人に対してしたものとみなす。

3 第4条第1項(第4号及び第5号に係る部分に限る。)及び第2項の規定は、第1項の承認について準用する。

4 第1項の承認を受けた相続人は、被相続人に係る第3条第1項の許可を受けた者の地位を承継する。

(掘削のための施設等の変更)
第7条の2 第3条第1項の許可を受けた者は、掘削のための施設の位置、構造若しくは設備又は掘削の方法について環境省令で定める可燃性天然ガスによる災害の防止上重要な変更をしようとするときは、環境省令で定めるところにより、都道府県知事に申請してその許可を受けなければならない。

2 第4条第1項(第2号に係る部分に限る。)、第2項及び第3項の規定は、前項の許可について準用する。この場合において、同条第3項中「温泉の保護、可燃性天然ガスによる災害の防止その他公益上」とあるのは、「可燃性天然ガスによる災害の防止上」と読み替えるものとする。

(工事の完了又は廃止の届出等)
第8条 第3条第1項の許可を受けた者は、当該許可に係る掘削の工事を完了し、又は廃止したときは、遅滞なく、環境省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

2 前項の規定による届出があつたときは、第3条第1項の許可は、その効力を失う。

3 都道府県知事は、第3条第1項の許可を受けた者が当該許可に係る掘削の工事を完了し、若しくは廃止したとき、又は同項の許可を取り消したときは、当該完了し、若しくは廃止した者又は当該許可を取り消された者に対し、当該完了若しくは廃止又は取消しの日から2年間は、その者が掘削を行つたことにより生ずる可燃性天然ガスによる災害の防止上必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。

(許可の取消し等)
第9条 都道府県知事は、次に掲げる場合には、第3条第1項の許可を取り消すことができる。
一 第3条第1項の許可に係る掘削が第4条第1項第1号から第3号までのいずれかに該当するに至つたとき。
二 第3条第1項の許可を受けた者が第4条第1項第4号又は第6号のいずれかに該当するに至つたとき。
三 第3条第1項の許可を受けた者がこの法律の規定又はこの法律の規定に基づく命令若しくは処分に違反したとき。
四 第3条第1項の許可を受けた者が第4条第3項(第7条の2第2項において準用する場合を含む。)の規定により付された許可の条件に違反したとき。

2 都道府県知事は、前項第1号、第3号又は第4号に掲げる場合には、第3条第1項の許可を受けた者に対して、温泉の保護、可燃性天然ガスによる災害の防止その他公益上必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。

(緊急措置命令等)
第9条の2 都道府県知事は、温泉をゆう出させる目的で行う土地の掘削に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害の防止上緊急の必要があると認めるときは、当該掘削を行う者に対し、可燃性天然ガスによる災害の防止上必要な措置を講ずべきこと又は掘削を停止すべきことを命ずることができる。

(原状回復命令)
第10条 都道府県知事は、第3条第1項の許可に係る掘削が行われた場合において、当該許可を取り消したとき、又は当該掘削が行われた場所に温泉がゆう出しないときは、その許可を受けた者に対して原状回復を命ずることができる。同項の許可を受けないで温泉をゆう出させる目的で土地を掘削した者に対しても、同様とする。


(増掘又は動力の装置の許可等)
第11条 温泉のゆう出路を増掘し、又は温泉のゆう出量を増加させるために動力を装置しようとする者は、環境省令で定めるところにより、都道府県知事に申請してその許可を受けなければならない。

2 第4条、第5条、第9条及び前条の規定は前項の増堀の許可について、第6条から第8条までの規定は同項の増掘の許可を受けた者について、第9条の2の規定は温泉のゆう出路の増掘について準用する。この場合において、第4条第1項第1号から第3号まで、第5条第2項、第6条、第7条第1項、第7条の2第1項、第8条第1項及び第3項並びに第9条第1項第1号中「掘削」とあるのは「増掘」と、第9条の2中「掘削を」とあるのは「増掘を」と、前条中「掘削が行われた場合」とあるのは「増掘が行われた場合」と、「当該掘削」とあるのは「当該増掘」と、「温泉をゆう出させる目的で土地を掘削した者」とあるのは「温泉のゆう出路を増掘した者」と読み替えるものとする。

3 第4条(第1項第2号に係る部分を除く。)、第5条、第9条及び前条の規定は第1項の動力の装置の許可について、第6条、第7条並びに第8条第1項及び第2項の規定は第1項の動力の装置の許可を受けた者について準用する。この場合において、第4条第1項第1号及び第3号、第5条第2項、第6条、第7条第1項、第8条第1項並びに第9条第1項第1号中「掘削」とあるのは「動力の装置」と、同号中「から第3号まで」とあるのは「又は第3号」と、前条中「掘削が行われた場合」とあるのは「動力の装置が行われた場合」と、「当該掘削」とあるのは「当該動力の装置」と、「温泉をゆう出させる目的で土地を掘削した者」とあるのは「温泉のゆう出量を増加させるために動力を装置した者」と読み替えるものとする。

(温泉の採取の制限に関する命令)
第12条 都道府県知事は、温泉源を保護するため必要があると認めるときは、温泉源から温泉を採取する者に対して、温泉の採取の制限を命ずることができる。

(環境大臣への協議等)
第13条 都道府県知事は、第3条第1項又は第11条第1項の規定による処分をする場合において隣接都府県における温泉のゆう出量、温度又は成分に影響を及ぼすおそれがあるときは、あらかじめ環境大臣に協議しなければならない。

2 環境大臣は、前項の規定による協議を受けたときは、関係都府県の利害関係者の意見を聴かなければならない。

(他の目的で土地を掘削した者に対する措置命令)
第14条 都道府県知事は、温泉をゆう出させる目的以外の目的で土地が掘削されたことにより温泉のゆう出量、温度又は成分に著しい影響が及ぶ場合において公益上必要があると認めるときは、その土地を掘削した者に対してその影響を防止するために必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。

2 都道府県知事は、法令の規定に基づく他の行政庁の許可又は認可を受けて土地を掘削した者に対して前項の措置を命じようとするときは、あらかじめ当該行政庁と協議しなければならない。

第3章 温泉の採取に伴う災害の防止

(温泉の採取の許可)
第14条の2 温泉源からの温泉の採取を業として行おうとする者は、温泉の採取の場所ごとに、環境省令で定めるところにより、都道府県知事に申請してその許可を受けなければならない。ただし、第14条の5第1項の確認を受けた者が当該確認に係る温泉の採取の場所において採取する場合は、この限りでない。

2 都道府県知事は、前項の許可の申請があつたときは、当該申請が次の各号のいずれかに該当する場合を除き、同項の許可をしなければならない。

一 当該申請に係る温泉の採取のための施設の位置、構造及び設備並びに当該採取の方法が採取に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害の防止に関する環境省令で定める技術上の基準に適合しないものであると認めるとき。
二 申請者がこの法律の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなつた日から2年を経過しない者であるとき。
三 申請者が第14条の9第1項(第3号及び第4号に係る部分に限る。)の規定により前項の許可を取り消され、その取消しの日から2年を経過しない者であるとき。
四 申請者が法人である場合において、その役員が前2号のいずれかに該当する者であるとき。

3 第4条第2項及び第3項の規定は、第1項の許可について準用する。この場合において、同条第3項中「温泉の保護、可燃性天然ガスによる災害の防止その他公益上」とあるのは、「可燃性天然ガスによる災害の防止上」と読み替えるものとする。

(温泉の採取の許可を受けた者である法人の合併及び分割)
第14条の3 前条第1項の許可を受けた者である法人の合併の場合(同項の許可を受けた者である法人と同項の許可を受けた者でない法人が合併する場合において、同項の許可を受けた者である法人が存続する場合を除く。)又は分割の場合(当該許可に係る温泉の採取の事業の全部を承継させる場合に限る。)において当該合併又は分割について都道府県知事の承認を受けたときは、合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人又は分割により当該事業の全部を承継した法人は、同項の許可を受けた者の地位を承継する。

2 第4条第2項及び前条第2項(第2号から第4号までに係る部分に限る。)の規定は、前項の承認について準用する。この場合において、同条第2項中「申請者」とあるのは、「合併後存続する法人若しくは合併により設立される法人又は分割により当該許可に係る温泉の採取の事業の全部を承継する法人」と読み替えるものとする。

(温泉の採取の許可を受けた者の相続)
第14条の4 第14条の2第1項の許可を受けた者が死亡した場合において、相続人(相続人が2人以上ある場合において、その全員の同意により当該許可に係る温泉の採取の事業を承継すべき相続人を選定したときは、その者。以下この条において同じ。)が当該許可に係る温泉の採取を業として引き続き行おうとするときは、その相続人は、被相続人の死亡後60日以内に都道府県知事に申請して、その承認を受けなければならない。

2 相続人が前項の承認の申請をした場合においては、被相続人の死亡の日からその承認を受ける日又は承認をしない旨の通知を受ける日までは、被相続人に対してした第14条の2第1項の許可は、その相続人に対してしたものとみなす。

3 第4条第2項及び第14条の2第2項(第2号及び第3号に係る部分に限る。)の規定は、第1項の承認について準用する。

4 第1項の承認を受けた相続人は、被相続人に係る第14条の2第1項の許可を受けた者の地位を承継する。

(可燃性天然ガスの濃度についての確認)
第14条の5 温泉源からの温泉の採取を業として行おうとする者は、温泉の採取の場所における可燃性天然ガスの濃度が可燃性天然ガスによる災害の防止のための措置を必要としないものとして環境省令で定める基準を超えないことについて、環境省令で定めるところにより、都道府県知事の確認を受けることができる。

2 第4条第2項の規定は、前項の確認について準用する。

3 都道府県知事は、次に掲げる場合には、第1項の確認を取り消さなければならない。
一 第1項の確認を受けた者が不正の手段によりその確認を受けたとき。
二 第1項の確認に係る温泉の採取の場所における可燃性天然ガスの濃度が同項の環境省令で定める基準を超えるに至つたと認めるとき。

(確認を受けた者の地位の承継)
第14条の6 前条第1項の確認を受けた者が当該確認に係る温泉の採取の事業の全部を譲渡し、又は同項の確認を受けた者について相続、合併(同項の確認を受けた者である法人と同項の確認を受けた者でない法人の合併であつて、同項の確認を受けた者である法人が存続するものを除く。)若しくは分割(当該確認に係る温泉の採取の事業の全部を承継させるものに限る。)があつたときは、当該事業の全部を譲り受けた者又は相続人(相続人が2人以上ある場合において、その全員の同意により当該確認に係る温泉の採取の事業を承継すべき相続人を選定したときは、その者)、合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人若しくは分割により当該事業の全部を承継した法人は、同項の確認を受けた者の地位を承継する。

2 前項の規定により前条第1項の確認を受けた者の地位を承継した者は、遅滞なく、その事実を証する書面を添えて、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

(温泉の採取のための施設等の変更)
第14条の7 第14条の2第1項の許可を受けた者は、温泉の採取のための施設の位置、構造若しくは設備又は採取の方法について環境省令で定める可燃性天然ガスによる災害の防止上重要な変更をしようとするときは、環境省令で定めるところにより、都道府県知事に申請してその許可を受けなければならない。

2 第14条の2第2項(第1号に係る部分に限る。)並びに同条第3項において準用する第4条第2項及び第3項の規定は、前項の許可について準用する。

(温泉の採取の事業の廃止の届出等)
第14条の8 第14条の2第1項の許可又は第14条の5第1項の確認を受けた者は、当該許可又は確認に係る温泉の採取の事業を廃止したときは、遅滞なく、環境省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

2 前項の規定による届出があつたときは、第14条の2第1項の許可又は第14条の5第1項の確認は、その効力を失う。

3 都道府県知事は、第14条の2第1項の許可若しくは第14条の5第1項の確認を受けた者が当該許可若しくは確認に係る温泉の採取の事業を廃止したとき、又は第14条の2第1項の許可を取り消したときは、当該廃止した者又は当該許可を取り消された者に対し、当該廃止又は取消しの日から2年間は、その者が温泉の採取を行つたことにより生ずる可燃性天然ガスによる災害の防止上必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。

(許可の取消し等)
第14条の9 都道府県知事は、次に掲げる場合には、第14条の2第1項の許可を取り消すことができる。
一 第14条の2第1項の許可に係る温泉の採取が同条第2項第1号に該当するに至つたとき。
二 第14条の2第1項の許可を受けた者が同条第2項第2号又は第4号のいずれかに該当するに至つたとき。
三 第14条の2第1項の許可を受けた者がこの法律の規定又はこの法律の規定に基づく命令若しくは処分に違反したとき。
四 第14条の2第1項の許可を受けた者が同条第3項において準用する第4条第3項(第14条の7第2項において準用する場合を含む。)の規定により付された許可の条件に違反したとき。

2 都道府県知事は、前項第1号、第3号又は第4号に掲げる場合には、第14条の2第1項の許可を受けた者に対して、可燃性天然ガスによる災害の防止上必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。

(緊急措置命令等)
第14条の10 都道府県知事は、温泉の採取に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害の防止上緊急の必要があると認めるときは、当該採取を行う者に対し、可燃性天然ガスによる災害の防止上必要な措置を講ずべきこと又は温泉の採取を停止すべきことを命ずることができる。第4章 温泉の利用

(温泉の利用の許可)
第15条 温泉を公共の浴用又は飲用に供しようとする者は、環境省令で定めるところにより、都道府県知事に申請してその許可を受けなければならない。

2 次の各号のいずれかに該当する者は、前項の許可を受けることができない。
一 この法律の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなつた日から2年を経過しない者
二 第31条第1項(第3号及び第4号に係る部分に限る。)の規定により前項の許可を取り消され、その取消しの日から2年を経過しない者
三 法人であつて、その役員のうちに第2号のいずれかに該当する者があるもの

3 都道府県知事は、温泉の成分が衛生上有害であると認めるときは、第1項の許可をしないことができる。

4 第4条第2項及び第3項の規定は、第1項の許可について準用する。この場合において、同条第3項中「温泉の保護、可燃性天然ガスによる災害の防止その他公益上」とあるのは、「公衆衛生上」と読み替えるものとする。

(温泉の利用の許可を受けた者である法人の合併及び分割)
第16条 前条第1項の許可を受けた者である法人の合併の場合(同項の許可を受けた者である法人と同項の許可を受けた者でない法人が合併する場合において、同項の許可を受けた者である法人が存続する場合を除く。)又は分割の場合(当該許可に係る温泉を公共の浴用又は飲用に供する事業の全部を承継させる場合に限る。)において当該合併又は分割について都道府県知事の承認を受けたときは、合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人又は分割により当該事業の全部を承継した法人は、同項の許可を受けた者の地位を承継する。

2 第4条第2項及び前条第2項の規定は、前項の承認について準用する。この場合において、同条第2項中「次の各号のいずれかに該当する者」とあるのは、「合併後存続する法人若しくは合併により設立される法人又は分割により温泉を公共の浴用又は飲用に供する事業の全部を承継する法人が次の各号のいずれかに該当する場合」と読み替えるものとする。

(温泉の利用の許可を受けた者の相続)
第17条 第15条第1項の許可を受けた者が死亡した場合において、相続人(相続人が2人以上ある場合において、その全員の同意により当該許可に係る温泉を公共の浴用又は飲用に供する事業を承継すべき相続人を選定したときは、その者。以下この条において同じ。)が当該許可に係る温泉を公共の浴用又は飲用に供する事業を引き続き行おうとするときは、その相続人は、被相続人の死亡後60日以内に都道府県知事に申請して、その承認を受けなければならない。

2 相続人が前項の承認の申請をした場合においては、被相続人の死亡の日からその承認を受ける日又は承認をしない旨の通知を受ける日までは、被相続人に対してした第15条第1項の許可は、その相続人に対してしたものとみなす。

3 第4条第2項及び第15条第2項(第3号に係る部分を除く。)の規定は、第1項の承認について準用する。

4 第1項の承認を受けた相続人は、被相続人に係る第15条第1項の許可を受けた者の地位を承継する。

(温泉の成分等の掲示)
第18条 温泉を公共の浴用又は飲用に供する者は、施設内の見やすい場所に、環境省令で定めるところにより、次に掲げる事項を掲示しなければならない。
一 温泉の成分
二 禁忌症
三 入浴又は飲用上の注意
四 前3号に掲げるもののほか、入浴又は飲用上必要な情報として環境省令で定めるもの

2 前項の規定による掲示は、次条第1項の登録を受けた者(以下「登録分析機関」という。)の行う温泉成分分析(当該掲示のために行う温泉の成分についての分析及び検査をいう。以下同じ。)の結果に基づいてしなければならない。

3 温泉を公共の浴用又は飲用に供する者は、政令で定める期間ごとに前項の温泉成分分析を受け、その結果についての通知を受けた日から起算して30日以内に、当該結果に基づき、第1項の規定による掲示の内容を変更しなければならない。

4 温泉を公共の浴用又は飲用に供する者は、第1項の規定による掲示をし、又はその内容を変更しようとするときは、環境省令で定めるところにより、あらかじめ、その内容を都道府県知事に届け出なければならない。

5 都道府県知事は、第1項の施設において入浴する者又は同項の温泉を飲料として摂取する者の健康を保護するために必要があると認めるときは、前項の規定による届出に係る掲示の内容を変更すべきことを命ずることができる。

(温泉成分分析を行う者の登録)
第19条 温泉成分分析を行おうとする者は、その温泉成分分析を行う施設(以下「分析施設」という。)について、当該分析施設の所在地の属する都道府県の知事の登録を受けなければならない。

2 前項の登録を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書を都道府県知事に提出しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
二 分析施設の名称及び所在地
三 温泉成分分析に使用する器具、機械又は装置の名称及び性能
四 その他環境省令で定める事項

3 都道府県知事は、第1項の登録の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときは、前項第1号及び第2号に掲げる事項並びに登録の年月日及び登録番号を登録分析機関登録簿に登録しなければならない。
一 前項第3号に掲げる事項が、温泉成分分析を適正に実施するに足りるものとして環境省令で定める基準に適合するものであること。
二 当該申請をした者が、温泉成分分析を適正かつ確実に実施するのに十分な経理的基礎を有するものであること。

4 次の各号のいずれかに該当する者は、第1項の登録を受けることができない。
一 この法律の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなつた日から2年を経過しない者
二 第25条(第3号に係る部分を除く。)の規定により登録を取り消され、その取消しの日から2年を経過しない者
三 法人であつて、その役員のうちに第2号のいずれかに該当する者があるもの

5 都道府県知事は、第1項の登録をしたときはその旨を、当該登録を拒否したときはその旨及びその理由を、遅滞なく、申請者に書面により通知しなければならない。

(変更の届出)
第20条 登録分析機関は、前条第2項各号に掲げる事項に変更(環境省令で定める軽微なものを除く。)があつたときは、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

(廃止の届出)
第21条 登録分析機関は、温泉成分分析の業務を廃止したときは、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

2 前項の規定による届出があつたときは、当該登録分析機関の登録は、その効力を失う。

(登録の抹消)
第22条 都道府県知事は、前条第2項の規定により登録がその効力を失つたとき、又は第25条の規定により登録を取り消したときは、当該登録分析機関の登録を抹消しなければならない。

(登録分析機関登録簿の閲覧)
第23条 都道府県知事は、登録分析機関登録簿を一般の閲覧に供しなければならない。

(登録分析機関の標識)
第24条 登録分析機関は、環境省令で定めるところにより、その事務所及び分析施設ごとに、公衆の見やすい場所に、環境省令で定める様式の標識を掲示しなければならない。

(登録の取消し)
第25条 都道府県知事は、登録分析機関が次の各号のいずれかに該当するときは、その登録を取り消すことができる。
一 第19条第1項及び第2項、第20条、第21条第1項、前条、次条並びに第27条の規定並びにこれらの規定に基づく命令の規定に違反したとき。
二 第19条第3項各号に掲げる要件に適合しなくなつたとき。
三 第19条第4項第1号又は第3号のいずれかに該当するに至つたとき。
四 不正の手段により第19条第1項の登録を受けたとき。

(環境省令への委任)
第26条 第19条から前条までに定めるもののほか、登録の手続、登録分析機関登録簿の様式その他登録分析機関の登録に関し必要な事項は、環境省令で定める。

(温泉成分分析の求めに応ずる義務)
第27条 登録分析機関は、温泉成分分析の求めがあつた場合には、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。

(報告徴収及び立入検査)
第28条 都道府県知事は、温泉成分分析の適正な実施を確保するために必要な限度において、温泉成分分析を行う者に対し、その温泉成分分析に関し必要な報告を求め、又はその職員に、その者の事務所若しくは分析施設に立ち入り、温泉成分分析に使用する器具、機械若しくは装置、帳簿、書類その他の物件を検査し、若しくは関係者に質問させることができる。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

3 第1項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

(地域の指定)
第29条 環境大臣は、温泉の公共的利用増進のため、温泉利用施設(温泉を公共の浴用又は飲用に供する施設、温泉を工業用に利用する施設その他温泉を利用する施設をいう。以下同じ。)の整備及び環境の改善に必要な地域を指定することができる。

(改善の指示)
第30条 環境大臣又は都道府県知事は、前条の規定により指定する地域内において、温泉の公共的利用増進のため特に必要があると認めるときは、環境省令で定めるところにより、温泉利用施設の管理者に対して、温泉利用施設又はその管理方法の改善に関し必要な指示をすることができる。

(許可の取消し等)
第31条 都道府県知事は、次に掲げる場合には、第15条第1項の許可を取り消すことができる。
一 公衆衛生上必要があると認めるとき。
二 第15条第1項の許可を受けた者が同条第2項第1号又は第3号のいずれかに該当するに至つたとき。
三 第15条第1項の許可を受けた者がこの法律の規定又はこの法律の規定に基づく命令若しくは処分に違反したとき。
四 第15条第1項の許可を受けた者が同条第4項において準用する第4条第3項の規定により付された許可の条件に違反したとき。

2 都道府県知事は、前項第1号、第3号又は第4号に掲げる場合には、温泉源から温泉を採取する者又は温泉利用施設の管理者に対して、温泉の利用の制限又は危害予防の措置を講ずべきことを命ずることができる。

第5章 諮問及び聴聞

(審議会その他の合議制の機関への諮問)
第32条 都道府県知事は、第3条第1項、第4条第1項(第11条第2項又は第3項において準用する場合を含む。)、第9条(第11条第2項又は第3項において準用する場合を含む。)、第11条第1項又は第12条の規定による処分をしようとするときは、自然環境保全法(昭和47年法律第85号)第51条の規定により置かれる審議会その他の合議制の機関の意見を聴かなければならない。

(聴聞の特例)
第33条 都道府県知事は、第9条第2項(第11条第2項又は第3項において準用する場合を含む。)、第12条、第14条の9第2項又は第31条第2項の規定による命令をしようとするときは、行政手続法(平成5年法律第88号)第13条第1項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。

2 第9条(第11条第2項又は第3項において準用する場合を含む。)、第12条、第14条の9又は第31条の規定による処分に係る聴聞の期日における審理は、公開により行わなければならない。

第6章 雑 則

(報告徴収)
第34条 都道府県知事は、この法律の施行に必要な限度において、温泉をゆう出させる目的で土地を掘削する者に対し、土地の掘削の実施状況、可燃性天然ガスの発生の状況その他必要な事項について報告を求め、又は温泉源から温泉を採取する者若しくは温泉利用施設の管理者に対し、温泉の採取の実施状況、温泉のゆう出量、温度、成分又は利用状況、可燃性天然ガスの発生の状況その他必要な事項について報告を求めることができる。

(立入検査)
第35条 都道府県知事は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、温泉をゆう出させる目的で行う土地の掘削の工事の場所、温泉の採取の場所又は温泉利用施設に立ち入り、土地の掘削若しくは温泉の採取の実施状況、温泉のゆう出量、温度、成分若しくは利用状況、可燃性天然ガスの発生の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査し、又は関係者に質問させることができる。

2 第28条第2項及び第3項の規定は、前項の規定による立入検査について準用する。

(鉱山保安法との関係)
第35条の2 鉱山保安法(昭和24年法律第70号)第2条第2項の鉱山(可燃性天然ガスの掘採が行われるものに限る。次項において「天然ガス鉱山」という。)における温泉をゆう出させる目的で行う土地の掘削又は温泉のゆう出路の増掘についての第4条第1項第2号及び第11条第2項の規定の適用については、同号中「当該申請に係る掘削のための施設の位置、構造及び設備並びに当該掘削の方法が掘削に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害の防止に関する環境省令で定める技術上の基準に適合しないものである」とあるのは「鉱山保安法(昭和24年法律第70号)第5条の規定に従つた鉱山における人に対する危害の防止のため必要な措置が講じられていない」と、同項中「第4条、」とあるのは「第35条の2第1項の規定により読み替えて適用する第4条並びに」と、「から第8条まで」とあるのは「、第7条並びに第8条第1項及び第2項」と、「同項」とあるのは「前項」と、「、第9条の2の規定は温泉のゆう出路の増掘について準用する」とあるのは「準用する」と、「第4条第1項第1号から第3号まで」とあるのは「第4条第1項第1号及び第3号」と、「第7条の2第1項、第8条第1項及び第3項」とあるのは「第8条第1項」と、「第9条の2中「掘削を」とあるのは「増掘を」と、前条」とあるのは「前条」とする。

2 天然ガス鉱山においては、第7条の2、第8条第3項及び第9条の2並びに第3章の規定は、適用しない。

(政令で定める市の長による事務の処理)
第36条 第4章、第33条第1項(第31条第2項の規定による処分に係る部分に限る。)、第34条(温泉を湧出させる目的で土地を掘削する者に対する報告の徴収に係る部分を除く。)又は第35条第1項(温泉を湧出させる目的で行う土地の掘削の工事の場所への立入検査に係る部分を除く。)の規定により都道府県知事の権限に属する事務の一部は、政令で定めるところにより、地域保健法(昭和22年法律第101号)第5条第1項の政令で定める市(次項において「保健所を設置する市」という。)又は特別区の長が行うこととすることができる。

2 保健所を設置する市又は特別区の長は、前項に規定する事務に係る事項で環境省令で定めるものを都道府県知事に通知しなければならない。

(経過措置)
第37条 この法律の規定に基づき政令を制定し、又は改廃する場合においては、その政令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

第7章 罰 則

第38条 次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
一 第3条第1項の規定に違反して、許可を受けないで土地を掘削した者
二 第9条の2(第11条第2項において準用する場合を含む。)又は第14条の10の規定による命令に違反した者
三 第11条第1項の規定に違反して、許可を受けないで温泉のゆう出路を増掘し、又は動力を装置した者
四 第14条の2第1項の規定に違反して、許可を受けないで温泉の採取を業として行つた者

2 前項の罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。

第39条 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
一 第7条の2第1項(第11条第2項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、許可を受けないで掘削若しくは増掘のための施設の位置、構造若しくは設備又は掘削若しくは増掘の方法について重要な変更をした者
二 第8条第3項(第11条第2項において準用する場合を含む。)、第9条第2項若しくは第10条(これらの規定を第11条第2項又は第3項において準用する場合を含む。)、第12条、第14条の8第3項、第14条の9第2項又は第31条第2項の規定による命令に違反した者
三 不正の手段により第14条の5第1項の確認を受けた者
四 第14条の7第1項の規定に違反して、許可を受けないで温泉の採取のための施設の位置、構造若しくは設備又は採取の方法について重要な変更をした者
五 第15条第1項の規定に違反して、許可を受けないで温泉を公共の浴用又は飲用に供した者
六 第19条第1項の規定に違反して、登録を受けないで温泉成分分析を行つた者
七 不正の手段により第19条第1項の登録を受けた者

第40条 第18条第4項の規定による命令に違反した者は、50万円以下の罰金に処する。

第41条 次の各号のいずれかに該当する者は、これを30万円以下の罰金に処する。
一 第8条第1項(第11条第2項又は第3項において準用する場合を含む。)、第14条の8第1項、第18条第4項又は第20条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
二 第18条第1項の規定による掲示をせず、又は虚偽の掲示をした者
三 第18条第2項の規定に違反した者(前号の規定に該当する者を除く。)
四 第18条第3項の規定に違反して、温泉成分分析を受けず、又は掲示の内容を変更しなかつた者
五 第27条の規定に違反した者
六 第28条第1項又は第34条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
七 第28条第1項又は第35条第1項の規定による立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者

第42条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第38条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

第43条 次の各号のいずれかに該当する者は、10万円以下の過料に処する。
一 第14条の6第2項又は第21条第1項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
二 第24条の規定に違反した者

附 則
この法律は、公布の日から起算して30日を経過した日から施行する。

別表  
一 温度(温泉源から採取されるときの温度とする。) 摂氏25度以上
二 物質(左に掲げるもののうち、いづれか一)

物質名 含有量(1キログラム中)
溶存物質(ガス性のものを除く。) 総量1,000ミリグラム以上
遊離炭酸(CO2) 250ミリグラム以上
リチウムイオン(Li*) 1ミリグラム以上
ストロンチウムイオン(Sr**) 10ミリグラム以上
バリウムイオン(Ba**) 5ミリグラム以上
フエロ又はフエリイオン(Fe**,Fe***) 10ミリグラム以上
第1マンガンイオン(Mn**) 10ミリグラム以上
水素イオン(H*) 1ミリグラム以上
臭素イオン(Br') 5ミリグラム以上
沃素イオン(I') 1ミリグラム以上
ふつ素イオン(F') 2ミリグラム以上
ヒドロひ酸イオン(HAsO4'') 1.3ミリグラム以上
メタ亜ひ酸(HAsO2) 1ミリグラム以上
総硫黄(S)〔HS'+S2O3Sに対応するもの〕 1ミリグラム以上
メタほう酸(HBO2) 5ミリグラム以上
メタけい酸(H2SiO3) 50ミリグラム以上
重炭酸そうだ(NaHCO3) 340ミリグラム以上
ラドン(Rn) 20(100億分の1キュリー単位)以上
ラヂウム塩(Raとして) 1億分の1ミリグラム以上

        「法令全書」より
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 今日は、1922年(大正11)に小説家・医師森鴎外が亡くなった日で、鴎外忌と呼ばれています。
 森鴎外は、明治時代後期から大正時代に活躍した小説家・医師で、本名は森林太郎といいます。
 1862年(文久2)石見国津和野(現在の島根県津和野町)に生まれ、第一大学区医学校(現在の東京大学医学部)に学びました。
 卒業後、東京陸軍病院に勤務し、その半年後にドイツへ留学することになります。帰国後、陸軍軍医学校教官などをへて、1907年(明治40)には、軍医としては最高の陸軍軍医総監となりました。
 仕事を続けながら、1890年(明治23)「舞姫」を発表して、文壇に登場することになります。その後、小説「ヰタ・セクスアリス」「青年」「妄想」「雁」や歴史小説「興津弥五右衛門の遺書」「阿部一族」「高瀬舟」、史伝「渋江抽斎」などを執筆しました。しかし、1922年(大正11)7月9日、腎萎縮、肺結核のために60歳で亡くなっています。
 以下に、代表的小説「高瀬舟」(全文)を掲載しておきます。

〇小説「高瀬舟」とは?
 森鴎外著の短編小説で、大正時代の1916年(大正5)、『中央公論』に発表されました。江戸時代の随筆集「翁草」の中の「流人の話」が元になっていると思われます。高瀬舟で護送される弟殺しの罪に問われた喜助の身の上話と護送役の同心羽田庄兵衛のやり取りを通じて、財産に対する観念の違いや安楽死について問うています。

<小説「高瀬舟」全文>
 高瀬舟は京都の高瀬川を上下する小舟である。徳川時代に京都の罪人が遠島を申し渡されると、本人の親類が牢屋敷へ呼び出されて、そこで暇乞をすることを許された。それから罪人は高瀬舟に載せられて、大阪へ回されることであった。それを護送するのは、京都町奉行の配下にいる同心どうしんで、この同心は罪人の親類の中で、おも立った一人を大阪まで同船させることを許す慣例であった。これは上へ通った事ではないが、いわゆる大目に見るのであった、黙許であった。
 当時遠島を申し渡された罪人は、もちろん重い科を犯したものと認められた人ではあるが、決して盗みをするために、人を殺し火を放ったというような、獰悪な人物が多数を占めていたわけではない。高瀬舟に乗る罪人の過半は、いわゆる心得違いのために、思わぬ科を犯した人であった。有りふれた例をあげてみれば、当時相対死と言った情死をはかって、相手の女を殺して、自分だけ生き残った男というような類である。
 そういう罪人を載せて、入相の鐘の鳴るころにこぎ出された高瀬舟は、黒ずんだ京都の町の家々を両岸に見つつ、東へ走って、加茂川を横ぎって下るのであった。この舟の中で、罪人とその親類の者とは夜どおし身の上を語り合う。いつもいつも悔やんでも返らぬ繰くり言ごとである。護送の役をする同心は、そばでそれを聞いて、罪人を出した親戚眷族の悲惨な境遇を細かに知ることができた。所詮町奉行の白州しらすで、表向きの口供を聞いたり、役所の机の上で、口書を読んだりする役人の夢にもうかがうことのできぬ境遇である。
 同心を勤める人にも、いろいろの性質があるから、この時ただうるさいと思って、耳をおおいたく思う冷淡な同心があるかと思えば、またしみじみと人の哀れを身に引き受けて、役がらゆえ気色には見せぬながら、無言のうちにひそかに胸を痛める同心もあった。場合によって非常に悲惨な境遇に陥った罪人とその親類とを、特に心弱い、涙もろい同心が宰領してゆくことになると、その同心は不覚の涙を禁じ得ぬのであった。
 そこで高瀬舟の護送は、町奉行所の同心仲間で不快な職務としてきらわれていた。
        ――――――――――――――――
 しばらくして、庄兵衛はこらえ切れなくなって呼びかけた。「喜助。お前何を思っているのか。」
「はい」と言ってあたりを見回した喜助は、何事をかお役人に見とがめられたのではないかと気づかうらしく、居ずまいを直して庄兵衛の気色を伺った。
 庄兵衛は自分が突然問いを発した動機を明かして、役目を離れた応対を求める言いわけをしなくてはならぬように感じた。そこでこう言った。「いや。別にわけがあって聞いたのではない。実はな、おれはさっきからお前の島へゆく心持ちが聞いてみたかったのだ。おれはこれまでこの舟でおおぜいの人を島へ送った。それはずいぶんいろいろな身の上の人だったが、どれもどれも島へゆくのを悲しがって、見送りに来て、いっしょに舟に乗る親類のものと、夜どおし泣くにきまっていた。それにお前の様子を見れば、どうも島へゆくのを苦にしてはいないようだ。いったいお前はどう思っているのだい。」
 喜助はにっこり笑った。「御親切におっしゃってくだすって、ありがとうございます。なるほど島へゆくということは、ほかの人には悲しい事でございましょう。その心持ちはわたくしにも思いやってみることができます。しかしそれは世間でらくをしていた人だからでございます。京都は結構な土地ではございますが、その結構な土地で、これまでわたくしのいたして参ったような苦しみは、どこへ参ってもなかろうと存じます。お上かみのお慈悲で、命を助けて島へやってくださいます。島はよしやつらい所でも、鬼のすむ所ではございますまい。わたくしはこれまで、どこといって自分のいていい所というものがございませんでした。こん度お上で島にいろとおっしゃってくださいます。そのいろとおっしゃる所に落ち着いていることができますのが、まず何よりもありがたい事でございます。それにわたくしはこんなにかよわいからだではございますが、ついぞ病気をいたしたことはございませんから、島へ行ってから、どんなつらい仕事をしたって、からだを痛めるようなことはあるまいと存じます。それからこん度島へおやりくださるにつきまして、二百文の鳥目をいただきました。それをここに持っております。」こう言いかけて、喜助は胸に手を当てた。遠島を仰せつけられるものには、鳥目二百銅をつかわすというのは、当時の掟であった。
 喜助はことばをついだ。「お恥ずかしい事を申し上げなくてはなりませぬが、わたくしは今日こんにちまで二百文というお足あしを、こうしてふところに入れて持っていたことはございませぬ。どこかで仕事に取りつきたいと思って、仕事を尋ねて歩きまして、それが見つかり次第、骨を惜しまずに働きました。そしてもらった銭は、いつも右から左へ人手に渡さなくてはなりませなんだ。それも現金で物が買って食べられる時は、わたくしの工面のいい時で、たいていは借りたものを返して、またあとを借りたのでございます。それがお牢にはいってからは、仕事をせずに食べさせていただきます。わたくしはそればかりでも、お上に対して済まない事をいたしているようでなりませぬ。それにお牢を出る時に、この二百文をいただきましたのでございます。こうして相変わらずお上の物を食べていて見ますれば、この二百文はわたくしが使わずに持っていることができます。お足を自分の物にして持っているということは、わたくしにとっては、これが始めでございます。島へ行ってみますまでは、どんな仕事ができるかわかりませんが、わたくしはこの二百文を島でする仕事の本手にしようと楽しんでおります。」こう言って、喜助は口をつぐんだ。
 庄兵衛は「うん、そうかい」とは言ったが、聞く事ごとにあまり意表に出たので、これもしばらく何も言うことができずに、考え込んで黙っていた。
 庄兵衛はかれこれ初老に手の届く年になっていて、もう女房に子供を四人生ませている。それに老母が生きているので、家は七人暮らしである。平生人には吝嗇と言われるほどの、倹約な生活をしていて、衣類は自分が役目のために着るもののほか、寝巻しかこしらえぬくらいにしている。しかし不幸な事には、妻をいい身代の商人の家から迎えた。そこで女房は夫のもらう扶持米で暮らしを立ててゆこうとする善意はあるが、ゆたかな家にかわいがられて育った癖があるので、夫が満足するほど手元を引き締めて暮らしてゆくことができない。ややもすれば月末になって勘定が足りなくなる。すると女房が内証で里から金を持って来て帳尻を合わせる。それは夫が借財というものを毛虫のようにきらうからである。そういう事は所詮夫に知れずにはいない。庄兵衛は五節句だと言っては、里方から物をもらい、子供の七五三の祝いだと言っては、里方から子供に衣類をもらうのでさえ、心苦しく思っているのだから、暮らしの穴をうめてもらったのに気がついては、いい顔はしない。格別平和を破るような事のない羽田の家に、おりおり波風の起こるのは、これが原因である。
 庄兵衛は今喜助の話を聞いて、喜助の身の上をわが身の上に引き比べてみた。喜助は仕事をして給料を取っても、右から左へ人手に渡してなくしてしまうと言った。いかにも哀れな、気の毒な境界きょうがいである。しかし一転してわが身の上を顧みれば、彼と我れとの間に、はたしてどれほどの差があるか。自分も上からもらう扶持米を、右から左へ人手に渡して暮らしているに過ぎぬではないか。彼と我れとの相違は、いわば十露盤の桁けたが違っているだけで、喜助のありがたがる二百文に相当する貯蓄だに、こっちはないのである。
 さて桁を違えて考えてみれば、鳥目二百文をでも、喜助がそれを貯蓄と見て喜んでいるのに無理はない。その心持ちはこっちから察してやることができる。しかしいかに桁を違えて考えてみても、不思議なのは喜助の欲のないこと、足ることを知っていることである。
 喜助は世間で仕事を見つけるのに苦しんだ。それを見つけさえすれば、骨を惜しまずに働いて、ようよう口を糊することのできるだけで満足した。そこで牢に入ってからは、今まで得がたかった食が、ほとんど天から授けられるように、働かずに得られるのに驚いて、生まれてから知らぬ満足を覚えたのである。
 庄兵衛はいかに桁を違えて考えてみても、ここに彼と我れとの間に、大いなる懸隔のあることを知った。自分の扶持米で立ててゆく暮らしは、おりおり足らぬことがあるにしても、たいてい出納が合っている。手いっぱいの生活である。しかるにそこに満足を覚えたことはほとんどない。常は幸いとも不幸とも感ぜずに過ごしている。しかし心の奥には、こうして暮らしていて、ふいとお役が御免になったらどうしよう、大病にでもなったらどうしようという疑懼が潜んでいて、おりおり妻が里方から金を取り出して来て穴うめをしたことなどがわかると、この疑懼が意識の閾の上に頭をもたげて来るのである。
 いったいこの懸隔はどうして生じて来るだろう。ただ上うわべだけを見て、それは喜助には身に係累がないのに、こっちにはあるからだと言ってしまえばそれまでである。しかしそれはうそである。よしや自分が一人者であったとしても、どうも喜助のような心持ちにはなられそうにない。この根底はもっと深いところにあるようだと、庄兵衛は思った。
 庄兵衛はただ漠然と、人の一生というような事を思ってみた。人は身に病があると、この病がなかったらと思う。その日その日の食がないと、食ってゆかれたらと思う。万一の時に備えるたくわえがないと、少しでもたくわえがあったらと思う。たくわえがあっても、またそのたくわえがもっと多かったらと思う。かくのごとくに先から先へと考えてみれば、人はどこまで行って踏み止まることができるものやらわからない。それを今目の前で踏み止まって見せてくれるのがこの喜助だと、庄兵衛は気がついた。
 庄兵衛は今さらのように驚異の目をみはって喜助を見た。この時庄兵衛は空を仰いでいる喜助の頭から毫光がさすように思った。
        ――――――――――――――――
 庄兵衛は喜助の顔をまもりつつまた、「喜助さん」と呼びかけた。今度は「さん」と言ったが、これは充分の意識をもって称呼を改めたわけではない。その声がわが口から出てわが耳に入るや否や、庄兵衛はこの称呼の不穏当なのに気がついたが、今さらすでに出たことばを取り返すこともできなかった。
「はい」と答えた喜助も、「さん」と呼ばれたのを不審に思うらしく、おそるおそる庄兵衛の気色をうかがった。
 庄兵衛は少し間の悪いのをこらえて言った。「いろいろの事を聞くようだが、お前が今度島へやられるのは、人をあやめたからだという事だ。おれについでにそのわけを話して聞せてくれぬか。」
 喜助はひどく恐れ入った様子で、「かしこまりました」と言って、小声で話し出した。「どうも飛んだ心得違いで、恐ろしい事をいたしまして、なんとも申し上げようがございませぬ。あとで思ってみますと、どうしてあんな事ができたかと、自分ながら不思議でなりませぬ。全く夢中でいたしましたのでございます。わたくしは小さい時に二親が時疫でなくなりまして、弟と二人あとに残りました。初めはちょうど軒下に生まれた犬の子にふびんを掛けるように町内の人たちがお恵みくださいますので、近所じゅうの走り使いなどをいたして、飢え凍えもせずに、育ちました。次第に大きくなりまして職を捜しますにも、なるたけ二人が離れないようにいたして、いっしょにいて、助け合って働きました。去年の秋の事でございます。わたくしは弟といっしょに、西陣の織場にはいりまして、空引ということをいたすことになりました。そのうち弟が病気で働けなくなったのでございます。そのころわたくしどもは北山の掘立小屋同様の所に寝起きをいたして、紙屋川の橋を渡って織場へ通っておりましたが、わたくしが暮れてから、食べ物などを買って帰ると、弟は待ち受けていて、わたくしを一人ひとりでかせがせてはすまないすまないと申しておりました。ある日いつものように何心なく帰って見ますと、弟はふとんの上に突っ伏していまして、周囲は血だらけなのでございます。わたくしはびっくりいたして、手に持っていた竹の皮包みや何かを、そこへおっぽり出して、そばへ行って『どうしたどうした』と申しました。すると弟はまっ青な顔の、両方の頬からあごへかけて血に染まったのをあげて、わたくしを見ましたが、物を言うことができませぬ。息をいたすたびに、傷口でひゅうひゅうという音がいたすだけでございます。わたくしにはどうも様子がわかりませんので、『どうしたのだい、血を吐いたのかい』と言って、そばへ寄ろうといたすと、弟は右の手を床とこに突いて、少しからだを起こしました。左の手はしっかりあごの下の所を押えていますが、その指の間から黒血の固まりがはみ出しています。弟は目でわたくしのそばへ寄るのを留めるようにして口をききました。ようよう物が言えるようになったのでございます。『すまない。どうぞ堪忍してくれ。どうせなおりそうにもない病気だから、早く死んで少しでも兄きにらくがさせたいと思ったのだ。笛を切ったら、すぐ死ねるだろうと思ったが息がそこから漏れるだけで死ねない。深く深くと思って、力いっぱい押し込むと、横へすべってしまった。刃はこぼれはしなかったようだ。これをうまく抜いてくれたらおれは死ねるだろうと思っている。物を言うのがせつなくっていけない。どうぞ手を借して抜いてくれ』と言うのでございます。弟が左の手をゆるめるとそこからまた息が漏ります。わたくしはなんと言おうにも、声が出ませんので、黙って弟の喉の傷をのぞいて見ますと、なんでも右の手に剃刀を持って、横に笛を切ったが、それでは死に切れなかったので、そのまま剃刀を、えぐるように深く突っ込んだものと見えます。柄がやっと二寸ばかり傷口から出ています。わたくしはそれだけの事を見て、どうしようという思案もつかずに、弟の顔を見ました。弟はじっとわたくしを見詰めています。わたくしはやっとの事で、『待っていてくれ、お医者を呼んで来るから』と申しました。弟は恨めしそうな目つきをいたしましたが、また左の手で喉をしっかり押えて、『医者がなんになる、あゝ苦しい、早く抜いてくれ、頼む』と言うのでございます。わたくしは途方に暮れたような心持ちになって、ただ弟の顔ばかり見ております。こんな時は、不思議なもので、目が物を言います。弟の目は『早くしろ、早くしろ』と言って、さも恨めしそうにわたくしを見ています。わたくしの頭の中では、なんだかこう車の輪のような物がぐるぐる回っているようでございましたが、弟の目は恐ろしい催促をやめません。それにその目の恨めしそうなのがだんだん険しくなって来て、とうとう敵の顔をでもにらむような、憎々しい目になってしまいます。それを見ていて、わたくしはとうとう、これは弟の言ったとおりにしてやらなくてはならないと思いました。わたくしは『しかたがない、抜いてやるぞ』と申しました。すると弟の目の色がからりと変わって、晴れやかに、さもうれしそうになりました。わたくしはなんでもひと思いにしなくてはと思ってひざを撞くようにしてからだを前へ乗り出しました。弟は突いていた右の手を放して、今まで喉を押えていた手のひじを床とこに突いて、横になりました。わたくしは剃刀の柄をしっかり握って、ずっと引きました。この時わたくしの内から締めておいた表口の戸をあけて、近所のばあさんがはいって来ました。留守の間、弟に薬を飲ませたり何かしてくれるように、わたくしの頼んでおいたばあさんなのでございます。もうだいぶ内のなかが暗くなっていましたから、わたくしにはばあさんがどれだけの事を見たのだかわかりませんでしたが、ばあさんはあっと言ったきり、表口をあけ放しにしておいて駆け出してしまいました。わたくしは剃刀を抜く時、手早く抜こう、まっすぐに抜こうというだけの用心はいたしましたが、どうも抜いた時の手ごたえは、今まで切れていなかった所を切ったように思われました。刃が外のほうへ向いていましたから、外のほうが切れたのでございましょう。わたくしは剃刀を握ったまま、ばあさんのはいって来てまた駆け出して行ったのを、ぼんやりして見ておりました。ばあさんが行ってしまってから、気がついて弟を見ますと、弟はもう息が切れておりました。傷口からはたいそうな血が出ておりました。それから年寄衆がおいでになって、役場へ連れてゆかれますまで、わたくしは剃刀をそばに置いて、目を半分あいたまま死んでいる弟の顔を見詰めていたのでございます。」
 少しうつ向きかげんになって庄兵衛の顔を下から見上げて話していた喜助は、こう言ってしまって視線をひざの上に落とした。
 喜助の話はよく条理が立っている。ほとんど条理が立ち過ぎていると言ってもいいくらいである。これは半年ほどの間、当時の事を幾たびも思い浮かべてみたのと、役場で問われ、町奉行所で調べられるそのたびごとに、注意に注意を加えてさらってみさせられたのとのためである。
 庄兵衛はその場の様子を目のあたり見るような思いをして聞いていたが、これがはたして弟殺しというものだろうか、人殺しというものだろうかという疑いが、話を半分聞いた時から起こって来て、聞いてしまっても、その疑いを解くことができなかった。弟は剃刀を抜いてくれたら死なれるだろうから、抜いてくれと言った。それを抜いてやって死なせたのだ、殺したのだとは言われる。しかしそのままにしておいても、どうせ死ななくてはならぬ弟であったらしい。それが早く死にたいと言ったのは、苦しさに耐えなかったからである。喜助はその苦くを見ているに忍びなかった。苦から救ってやろうと思って命を絶った。それが罪であろうか。殺したのは罪に相違ない。しかしそれが苦から救うためであったと思うと、そこに疑いが生じて、どうしても解けぬのである。
 庄兵衛の心の中には、いろいろに考えてみた末に、自分よりも上のものの判断に任すほかないという念、オオトリテエに従うほかないという念が生じた。庄兵衛はお奉行様の判断を、そのまま自分の判断にしようと思ったのである。そうは思っても、庄兵衛はまだどこやらにふに落ちぬものが残っているので、なんだかお奉行様に聞いてみたくてならなかった。
 次第にふけてゆくおぼろ夜に、沈黙の人二人を載せた高瀬舟は、黒い水の面をすべって行った。

☆森鴎外の主要な小説
・舞姫 (『国民之友』、1890年1月)
・うたかたの記 (『国民之友』、1890年8月)
・文づかひ (吉岡書店、1891年1月)
・半日 (『スバル』、1909年3月)
・魔睡 (『スバル』、1909年6月)
・ヰタ・セクスアリス (『スバル』、1909年7月)
・鶏 (『スバル』、1909年8月)
・金貨 (『スバル』、1909年9月)
・杯 (『中央公論』、1910年1月)
・青年 (『スバル』、1910年3月–11年8月)
・普請中 (『三田文学』、1910年6月)
・花子 (『三田文学』、1910年7月)
・あそび (『三田文学』、1910年8月)
・食堂 (『三田文学』、1910年12月)
・蛇 (『中央公論』、1911年1月)
・妄想 (『三田文学』、1911年4月)
・雁 (『スバル』、1911年9月–1913年5月)
・灰燼 (『三田文学』、1911年10月–1912年12月)
・百物語 (『中央公論』、1911年10月)
・かのように (『中央公論』、1912年1月)
・興津弥五右衛門の遺書 (1912年10月、『中央公論』)
・阿部一族 (『中央公論』、1913年1月)
・佐橋甚五郎 (『中央公論』、1913年)
・大塩平八郎 (『中央公論』、1914年1月)
・堺事件 (『新小説』、1914年2月)
・安井夫人 (『太陽』、1914年4月)
・山椒大夫 (『中央公論』、1915年1月)
・じいさんばあさん (『新小説』、1915年9月)
・最後の一句 (『中央公論』、1915年10月)
・高瀬舟 (『中央公論』、1916年1月)
・寒山拾得 (『新小説』、1916年1月)
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 今日は、1588年(天正16)豊臣秀吉が「刀狩り令」を布告した日です。(新暦では8月29日)
 刀狩りは、 武士以外の者の武器所有を禁止し、没収することで、鎌倉時代から、いろいろな領主によって行われてきました。
 特に有名なのが、安土桃山時代の1588年(天正16年7月8日)に、豊臣秀吉が出した「刀狩令」で、農民の一揆防止と耕作専念のために、大仏(方広寺)建立の釘(くぎ)・鎹(かすがい)として活用するとして行われました。これによって兵農分離を行い、近世封建体制の基礎をつくったと言われています。
 以下に、豊臣秀吉による「刀狩り令」(全文)と現代語訳を載せておきます。

〇豊臣秀吉による「刀狩り令」(全文)

条々

一、諸国百姓、刀、脇指、弓、やり、てっはう其外武具のたぐい、所持候事、堅く御停止候。其子細は、不入道具をあひたくはへ、年貢所当を難渋せしめ、自然一揆を企て、給人に対し非儀の動をなすやから、勿論御成敗有るべし。然れば、其所の田畠不作せしめ、知行ついえになり候の間、其国主、給人、代官として、右武具悉く取あつめ、進上致すべき事。

一、右取をかるべき刀、脇指、ついえにさせらるべき儀にあらず候の間、今度大仏建立の釘かすがいひに仰せ付けらるべし。然者、今生の儀者申すに及ばず、来世までも百姓たすかる儀に候事。

一、百姓は農具さへもち、耕作専に仕る候へば、子々孫々まで長久に候。百姓御あはれみをもって、此の如く仰せ出され候。誠に国土安全万民快楽の基也。異国にては唐尭のそのかみ、天下を鎮撫せしめ、宝剣利刀を農器にもちひると也。本朝にてはためしあるべからず。此旨を守り、其趣を存知し、百姓は 農桑に精を入べき事。

  右道具急度取集め、進上あるべく候也。

   天正十六年七月八日    秀吉朱印

<現代語訳>

条々

一、諸国の百姓が、刀・脇指・弓・槍・鉄砲その他の武具の類を所持することを厳禁する。その理由は,農耕に不要な武器を持てば、年貢や雑税を出ししぶり、万一、一揆を企て、領主に対してけしからぬ行為をなす者があれば、当然処罰される。そうなれば,その所の田畑は耕作するものがいなくなり,知行が無になってしまう。したがって、大名・領主・代官は、右の武具を全て没収して差し出すようにすること。

一、右のように取り集めた刀・脇指は無駄にするのではなくて、今度、京都方広寺の大仏を建立するにあたって、釘・鎹(かすがい)に再生するのである。そうすれば、現世はもとより来世までも百姓は助かることである。

一、百姓は農具だけを持って、耕作に専念していれば、子孫末代まで長く安泰なのである。百姓のことを憐れんで、命令されたのである。まことに国土の安全、万民の安楽の基になるものである。中国では陶唐氏がその昔に天下を治めた時に、剣や刀を没収して、農機具に作り直した先例があるという。日本には、そのような例がないので、習おうとしているのだ。それぞれがその趣旨をよく承知し、農耕と養蚕に精を出すようにせよ。

 右の通り,武具類は必ず取り集め、差し出すようにせよ。

     天正16年7月8日    秀吉朱印
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