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 今日は、太平洋戦争下の1942年(昭和17)に、戦時標語である「国民決意の標語」懸賞募集の入選と佳作が紙面上に発表された日です。
 これは、「大東亜戦争一周年記念」の企画として、大政翼賛会と朝日新聞・東京日日新聞・読売新聞の3紙が「国民決意の標語」を懸賞募集(入選は賞状ならびに副賞金が100円(公債)、佳作は副賞金20円(公債))し、広告が11月15日の各紙面に出されたものでした。
 その結果、4日間で32万以上の応募があり、その中から、以下の入選10点と佳作20点が選ばれ、11月27日付の紙面上に発表され、町内・職場等に掲示されました。入選作は、以下の10点です。

<入選10点>
・「欲しがりません勝つまでは」
・「さあ2年目も勝ち抜くぞ」
・「たつた今!笑って散った友もある」
・「ここも戦場だ」
・「頑張れ!適も必死だ」
・「すべてを戦場へ」
・「その手ゆるめば戦力にぶる」
・「今日も決戦 明日も決戦」
・「理窟言う間に一仕事」
・「『足らぬ足らぬは』工夫が足らぬ」

〇戦時標語とは?

 戦時下において、国民向けに主張・信条や行動の目標、指示内容などをわかりやすく簡潔に言い表した語句(スローガン)のことです。
 日本では、日中戦争から太平洋戦争配線までにまで、戦意高揚・生活統制・精神動員のため盛んに作られました。
 1937年(昭和12)7月の日中戦争開始後、「国民精神総動員運動」が展開され、「挙国一致」「尽忠(じんちゅう)報国」「堅忍(けんにん)持久(じきゅう)」の国策標語が掲げられました。
 1938年(昭和13)5月1日に、ガソリン切符制が実施されと、「ガソリン1滴は血の1滴」の標語が登場します。
 1940年(昭和15)に至り、日中戦争長期化による物資不足が深刻になってくると、国民精神総動員本部は、「日本人なら、ぜいたくは出来ない筈だ!」「ぜいたくは敵だ!」「パーマネントはやめませう」などの標語をつくり、街頭に国民生活の在り方を規制する看板を立てました。同年11月10日には、紀元2600年祝賀行事が行われ、その前後に「祝へ元気に朗らかに」、「祝ひ終った、さあ働かう」のポスターが張り出されます。
 1941年(昭和16)になると、「人口政策要綱」が閣議決定され、「生めよ殖やせよ国のため」の標語も登場します。同年12月8日に太平洋戦争が始まると、大政翼賛会による「進め一億火の玉だ」「屠(ほう)れ!米英我等の敵だ」も掲げられました。
 1942年(昭和17)には、「大東亜戦争一周年記念」の企画として、大政翼賛会と各新聞社が「国民決意の標語」を懸賞募集し、32万以上の応募の中から、「欲しがりません勝つまでは」「頑張れ!敵も必死だ」など入選10点と佳作20点が選ばれ、町内・職場等に掲示されました。
 1943年(昭和18)2月23日には、陸軍省が「撃ちてし止まむ」の決戦標語ポスター5万枚を全国に配布し、同年4月に連合艦隊司令長官・山本五十六が戦死すると「元帥の仇は増産で(討て)」がスローガンとなります。
 1944年(昭和19)には、アメリカ軍の反撃によって、戦局が厳しくなり、「本土決戦」、「鬼畜米英をうて」、「一億玉砕」、「神州不滅」などが叫ばれるようになり、敗戦へと向かうことになりました。

☆代表的な戦時標語一覧(日中戦争~太平洋戦争)

<1937年(昭和12)>
・「挙国一致」
・「尽忠(じんちゅう)報国」
・「堅忍(けんにん)持久(じきゅう)」
・「銃執れ 鍬(くわ)執れ ハンマー執れ」 和歌山県
・「黙って働き 笑って納税」 税務署による標語

<1938年(昭和13)>
・「ガソリン1滴は血の1滴」 5月1日のガソリン切符制実施に伴うもの

<1939年(昭和14)>
・「遂げよ聖戦 興せよ東亜」 大阪朝日新聞社
・「子よ孫よ 続けよ建てよ 新東亜」 大阪朝日新聞社
・「聖戦へ 民一億の体当たり」 読売新聞社
・「聖戦だ 己殺して国生かせ」 読売新聞社
・「飲んでて何が非常時だ」 日本国民禁酒同盟

<1940年(昭和15)>
・「日本人なら、ぜいたくは出来ない筈だ!」 国民精神総動員本部
・「ぜいたくは敵だ!」 国民精神総動員本部が「奢侈品等製造販売制限規則(七・七禁令)」のため作成
・「パーマネントはやめませう」 国民精神総動員本部
・「リつばな戦死とゑがほの老母」 名古屋市銃後奉公会
・「一億が みんな興亜へ散る覚悟」 京都府
・「贅沢品より代用品」 中央標語研究会
・「身にはボロ着て心に錦」 中央標語研究会
・「米が足りぬにまだ飲むか」 日本国民禁酒同盟
・「赤い顔から赤字出る」 日本国民禁酒同盟
・「祝へ元気に朗らかに」 大政翼賛会が紀元2600年祝賀行事前に作成
・「祝ひ終った、さあ働かう」 大政翼賛会が紀元2600年祝賀行事後に作成

<1941年(昭和16)>
・「生めよ殖やせよ國のため」 9月2日に厚生省が発表
・「進め一億火の玉だ」 大政翼賛会
・「屠れ!米英我等の敵だ」
・「酒屋太れば妻子は痩せる」 日本国民禁酒同盟
・「増える酒量に減る寿命」 日本国民禁酒同盟
・「酒呑みは 瑞穂の国の 寄生虫」 日本国民禁酒同盟
・「働いて 耐えて笑って 御奉公」 標語報国社

<1942年(昭和17)>
・「欲しがりません勝つまでは」 国民決意の標語入選作
・「さあ2年目も勝ち抜くぞ」 国民決意の標語入選作
・「たつた今!笑って散った友もある」 国民決意の標語入選作
・「ここも戦場だ」 国民決意の標語入選作
・「頑張れ!適も必死だ」 国民決意の標語入選作
・「すべてを戦場へ」 国民決意の標語入選作
・「その手ゆるめば戦力にぶる」 国民決意の標語入選作
・「今日も決戦 明日も決戦」 国民決意の標語入選作
・「理窟言う間に一仕事」 国民決意の標語入選作
・「『足らぬ足らぬは』工夫が足らぬ」 国民決意の標語入選作
・「正しき血から 強い民族」 日本カレンダー株式会社
・「よい児殖やして 興亜をリレー」 日本カレンダー株式会社
・「産んで殖やして育てて皇楯」 中央標語研究会
・「米英を消して明るい世界地図」 大政翼賛会神戸市支部

<1943年(昭和18)>
・「撃ちてし止まむ」 2月23日に陸軍省が発表
・「元帥の仇は増産で」 山本五十六戦死後
・「アメリカ人をぶち殺せ!」 主婦之友
・「嬉しいな僕の貯金が弾になる」 大日本婦人会朝鮮慶北支部
・「初湯から 御楯と願う 国の母」 仙台市
・「進め一億 火の玉だ」 大政翼賛会
・「なにがなんでもやりぬくぞ」
・「ぜいたくは敵だ!」 国民精神総動員本部
・「頑張れ! 敵も必死だ」
・「血の犠牲 汗で応えて 頑張らう」 大阪翼賛神戸支部
・「一億抜刀 米英打倒」 北海道新聞社
・「我が家から敵が討てるぞ経済戦」 大日本婦人会

<1944年(昭和19)>
・「本土決戦」
・「鬼畜米英をうて」
・「一億玉砕」
・「神州不滅」