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 今日は、昭和時代中期の1947年(昭和22)に、経済安定本部が「新価格体系の確立について」を発表した日です。
 「新価格体系の確立について」(しんかかくたいけいのかくりつについて)は、1947年(昭和22)7月5日に、片山哲内閣で閣議決定され、経済安定本部から発表された緊急経済対策です。太平洋戦争敗戦後経済危機が進行し、極度のインフレとなって、国民生活を圧迫しました。そこで、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)は1947年(昭和22)3月22日に、マッカーサー司令官より吉田首相宛の書簡を発して、統制経済の強化と経済安定本部の拡充を強く要望しました。
 その中で発足した片山哲内閣は、6月11日に、「緊急経済対策」を決定、食糧確保、物資流通秩序の確立、賃金・物価の全面的改訂、財政金融の健全化、重点生産の継続と企業経営の健全化、勤労者の生活と雇用の確保、輸出振興、不健全な企業の管理という8つを経済対策の柱として提起します。そこで、「基礎的な価格の安定帯を設定する」という「新物価体系」の確立を図ると共に、それを実現するための融資統制の強化と傾斜金融の一層の徹底を打ち出しました。
 7月4日には経済安定本部の作成になる最初の経済白書「第一次経済実相報告書」が出され、翌5日には、この閣議決定がが発表されます。その内容は、「政府は、インフレーションの進行をくいとめ、物価賃金の安定をはかるため、さきに発表した経済緊急対策に基づき、新価格体系を確立する。今日まで続いている生産の不振、流通秩序のゆるみ、通貨流通量の増加等によって、物価と賃金とは悪循環的上昇をきたし、その結果、まじめに働く勤労者はその生活をおびやかされ、まじめな企業はその経営の方途を失っている。政府はこの現状にかんがみて、実質賃金の充実、企業経営の健全化、物価と賃金の調整を主眼として、公定価格の総合的改訂を行う。」とされました。
 そこでは、1,800円を暫定業種別賃金とする新物価体系「1,800円ベース」が決定されていますが、翌年4月決定の「2,920円ベース」、すぐに引上げられた「3,791円ベース」と変更されていきました。
 以下に、「新価格体系の確立について」を全文掲載しておきますので、ご参照下さい。

〇「新価格体系の確立について」1947年(昭和22)7月5日 片山内閣の閣議決定

 政府は、インフレーションの進行をくいとめ、物価賃金の安定をはかるため、さきに発表した経済緊急対策に基づき、新価格体系を確立する。今日まで続いている生産の不振、流通秩序のゆるみ、通貨流通量の増加等によって、物価と賃金とは悪循環的上昇をきたし、その結果、まじめに働く勤労者はその生活をおびやかされ、まじめな企業はその経営の方途を失っている。政府は、この現状にかんがみて、実質賃金の充実、企業経営の健全化、物価と賃金との調整を主眼として、公定価格の総合的改訂を行う。
 この改訂された新しい水準において物価賃金の安定がえられるならば、わが国の経済は安定復興への第一歩をふみ出すことができる。もし、これがえられなければ、わが国の経済は破局的インフレーションに突入する危険が極めて大である。そこで、政府は、全国民の協力をえて生産の増強をはかり、闇を根絶して流通秩序を回復し、その新価格体系の維持安定をはかるため、あらゆる努力をかたむける。

第一、新価格体系組立の原則 新価格体系は、インフレーションの進行をくいとめ、かつ、正常な国際貿易の再開に備えてできるかぎり価格系列を整えるために、左の原則によって、これを組み立てる。

一、基礎的な価格の安定帯=わが国の経済がほぼ正常であったと認められる昭和九年から同十一年(基準年次)の価格水準の約六十五倍を限界として、基礎的な価格の安定帯を設ける。基礎的な物資の供給者価格が安定帯を上廻るときには、原則として、価格調整補給金によって、その需要者価格を安定帯の限界まで引下げる。この原則にしたがって左の措置をとる。
(一)石炭の特定産業(海運業並びにガス、コークス、銑鉄、普通鋼鋼材、同半製品、ソーダ灰、苛性ソーダ及び硫安製造業とする。)向け消費者価格は屯当り六百円基準によって算定した価格とする。
(二)コークス、銑鉄、普通鋼鋼材、同半製品、電気銅、鉛地金、硫安、過燐酸石灰、ソーダ灰及び苛性ソーダの消費者価格は、基準年次の価格水準の六十五倍を基準とする。石灰窒素及び亜鉛の消費者価格は、それぞれ硫安及び鉛の消費者価格と適当な関係をもたせるように、これを定める。
(三)以上の措置のため、昭和二十二年度七月以降年度末までに必要な価格調整補給金として百二十億円を予定する。

二、鉱工業品の価格は、生産配給の施策に照応して、原則として、原価主義によってこれを定める。運賃その他の料金についても同様とする。価格の算定にあたっては、
(一)価格相互間のはねかえりをできるかぎり織り込む。
(二)闇価格は、これを算入しない。
(三)当該産業の操業度及び能率については、原則として、現状を基礎とし、近い将来における推移を考慮する。
(四)減価償却費は、帳簿価格を基礎として、これを算入する。但し、非稼動設備の減価償却費は、これを算入しない。
(五)利潤は、能率が標準より高い経営についてのみ産れる程度にかぎって、これを算入する。
(六)賃金は、工業総平均賃金を月千八百円とし、概ね給与審議会準備会特別小委員会において決定した方法によって算定した暫定業種別平均賃金を基準として、これを算入する。実際賃金が右の算定額をこえている業種については、実際賃金をも考慮する。この場合には、消費者の利益との調和をはかるため、減価償却費及び利潤の算入を減少する。

三、農産品価格は、原則として、農業経営及び農家家計において購入する商品の価格と農産品の価格との基準年次における均衡をたもたせるように、これを定める。畜水林産品の価格の決定については、農産品の価格の決定に準ずる。

第二、賃金水準 物価賃金安定の途は、実質賃金の充実を中心とする貨幣賃金の維持のほかにはないのであるから、今回の新価格体系の確立にあたっては、勤労者の実質生活の確保と企業経営の健全化を目途として、物価賃金の同時的決定を行う。このため、価格調整補給金によって公定価格の引上げを最少限度にくいとめるとともに、食糧その他の緊急対策を実施して正規配給量の増加による実質賃金の充実をはかり、勤労者が現在の生活水準を維持できるところを目やすとして、価格に算入する賃金水準は、現在の実際水準から若干引上げ、工業総平均月千八百円とし、今回の公定価格の引上げによる勤労者の家計への影響に対処する。

第三、価格差益の徴収 価格改訂によって、公団、生産業者及び配給業者の在庫品につき生ずる価格差益は、これを徴収し、新価格体系維持安定のためにこれを活用する。

 大蔵省財政史室編「昭和財政史 終戦から講和まで」第17巻より 

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