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 今日は、明治時代後期の1902年(明治35)に、「足尾台風」が襲来し、主に関東地方から東北地方南部にかけて大きな被害をもたらした日です。
 足尾台風(あしおたいふう)は、この日の8時頃に房総半島の安房南端布良付近を通り、東京の北辺から栃木県足尾付近を通過、11時30分頃に新潟県より日本海へ抜け、夜半に北海道北部に達した台風でしたが、当時は正式に台風名を付けることがなく、通称で呼ばれたものでした。
 館山では最低気圧717.1mmHg(955.8hPa)を観測、最大風速(20分間平均)は、筑波山で72.1m/s、銚子で44.8m/sに及んだとされるものの、当時の風速計では正確な値が計測されていないとも言われています。また、足尾で315mmの雨量を記録して渡良瀬川が洪水となり、相模湾西岸一帯で高潮も発生しました。
 この結果、風水害は千葉県・茨城県・群馬県・神奈川県・福島県・山形県等にも及び、死者・行方不明者400名以上(栃木県219名、茨城県​118名、神奈川県60名以上など)、家屋の全壊・流出約30,000戸以上(栃木県約8,200戸、茨城県​20,164戸、神奈川県約1,000戸など)と大きなものとなります。さらに暴風により、横浜港ではドイツ郵船の「プロイセン号」が流され浅瀬に座礁、汽船「カーリー号」も防波堤に乗り上げ、各地で列車の転覆、煙突の破壊、巨樹の倒壊なども起こりました。
 尚、9月28日朝の天気図では、二つの台風がほぼ横並びになっており、東側にあった「足尾台風」は、本州通過時の進行速度が60km/hから80km/hに達し、台風経路の東側で猛烈な暴風となりましたが、2つの台風の間に「藤原の効果」が働いた結果、「足尾台風」の方が増速したためではないかと考えられ、記録に残る(1883年に日本で天気図作成開始)台風の中で「藤原効果」の見られる最古の事例と言われています。

〇藤原の効果とは?

 二つの台風が距離1,000km以内に接近すると、それぞれの力が干渉し合い進路が複雑になる現象のことで、名称は、1921年(大正10)に当時の第5代中央気象台長の藤原咲平がこの回転運動の存在をはじめて提唱したことによります。二つの台風は互いに相手の台風の風によって動き、二つの台風の重心位置をとると、この重心の周りを反時計回りに移動し接近するなど複雑な動きをするとされてきました。
 現在は、相寄り型(弱い方の熱帯低気圧が接近しながら急激に衰弱し、強い方の熱帯低気圧に取り込まれる)、指向型(片方の熱帯低気圧だけが干渉を受けて、もう片方の熱帯低気圧の回りを運動する)、追従型(片方の熱帯低気圧がまず移動し、その後ろをもう片方の熱帯低気圧が追いかける)、時間待ち型(東側の熱帯低気圧がまず北上し、その熱帯低気圧が去った後に西側の熱帯低気圧が北上する)、同行型(2つの熱帯低気圧が並行して移動する)、離反型(東側の熱帯低気圧が加速して北東へ移動し、西側の熱帯低気圧が減速しながら西へ移動する)の六つの振る舞いに分類されています。

☆藤原の効果がみられた台風の近年の主要例

・1967年(昭和42)台風14号/台風15号  指向型・追従型
・1983年(昭和58)台風5号/台風6号/台風7号  追従型・時間待ち型
・1985年(昭和60)台風12号/台風13号/台風14号  相寄り型・同行型・離反型
・1991年(平成3)台風21号/台風22号  時間待ち型・同行型
・2006年(平成18)台風7号/台風8号/台風9号  同行型・離反型?
・2007年(平成19)台風23号/台風24号  指向型・追従型・同行型
・2009年(平成21)台風17号/台風18号  指向型・離反型
・2010年(平成22)台風6号/台風7号/台風8号  相寄り型・指向型
・2011年(平成23)台風6号/台風7号  相寄り型
・2011年(平成23)台風15号/台風16号  指向型・追従型・時間待ち型
・2012年(平成24)台風14号/台風15号  指向型・追従型・時間待ち型
・2013年(平成25)台風13号/台風14号  相寄り型・追従型
・2016年(平成28)台風9号/台風10号/台風11号  指向型・時間待ち型
・2017年(平成29)台風5号/台風6号  相寄り型・指向型
・2017年(平成29)台風9号/台風10号  追従型・時間待ち型・同行型

〇同じ日の過去の出来事(以前にブログで紹介した記事)

1500年(明応9)第103代の天皇とされる後土御門天皇の命日(新暦10月21日)詳細
1912年(大正元)小説家大原富枝の誕生日詳細
1943年(昭和18)「官庁ノ地方疎開ニ関スル件」が閣議決定され、官庁の地方疎開が決められる詳細
1967年(昭和42)上越線の新清水トンネルが開通する詳細