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 今日は、奈良時代の713年(和銅6)に、元明天皇が諸国に『風土記』の編纂を命じた日ですが、新暦では5月30日となります。
 『風土記(ふどき)』は、元明天皇の勅により、各国の物産、動植物、土地の状況や地名、古老の伝承などを記す地誌を編集して言上したものでした。写本が現存するのは、出雲国・常陸国・播磨国・肥前国・豊後国のもの五つ(五風土記)ですが、『出雲国風土記』がほぼ完本で、他の四つは一部欠損して残っていて、文体は国文体を交えた漢文体となっています。
 その他に、『釈日本紀』、『万葉集註釈』などの他の文献に引用されたりして、断片的に残っているもの(風土記逸文)も知られてきました。
 『出雲国風土記』は733年(天平5)に成立したことがはっきりしていますが、他の諸国の風土記は、だいたい天平年間 (729~749年) までに編纂されたとみられるものの、その後中央に提出されたものは多く散失したらしく、925年(延長3)12月の太政官符(だいじょうかんぷ)によって再提出の命が出されています。
 後世にも、風土記と称するものが各地で編纂されましたが、これらと区別して「古風土記」とも呼ばれてきました。
 尚、以下に諸国に『風土記』の編纂を命じた、『続日本紀』の「和銅六年五月甲子」の記述を掲載(注釈・現代語訳付)しておきましたので、ご参照下さい。

〇『続日本紀』の「和銅六年五月甲子」の記述

<原文>

 和銅六年五月甲子、制。畿内七道諸国郡郷名、着好字。其郡内所生。銀銅彩色草木禽獣魚虫等物。具録色目。及土地沃塉。山川原野名号所由。又古老相伝旧聞異事。載于史籍亦宜言上。

<読み下し文>

 和銅六年五月甲子、制すらく。畿内七道諸国[1]の郡郷名は好き字[2]を着けよ。其の郡内に生ずる所の、銀・銅・彩色[3]・草木・禽獣・魚虫等の物は、具に色目[4]を録せしむ。及び土地の沃塉[5]、山川原野の名号の所由[6]、又古老の相伝旧聞[7]異事[8]は、史籍[9]に載せて亦宜しく言上すべし。

【注釈】

[1]畿内七道諸国:きないしちどうしょこく=畿内と東海道・東山道・南海道・北陸道・山陰道・山陽道・西海道のこと。当時の政権が掌握していた全地域を指す。全国。
[2]好き字:よきじ=実際には地名が吉祥な漢字二字で表記された。
[3]彩色:さいしき=いろどり。
[4]色目:しきもく=品名。種類。
[5]沃塉:よくせき=土地の肥えているか痩せているかの状態。肥沃度。
[6]名号の所由:みょうごうのよるところ=名称の由来。
[7]古老の相伝旧聞:ころうのそうでんきゅうぶん=古老の伝える古い伝承。
[8]異事:いじ=珍しい話。変わった話。
[9]史籍:しせき=正式な文書記録。

<現代語訳>

和銅六年(713年)五月甲子(2日)の条
 次のように制定した。「畿内七道諸国の郡や郷の名前は良い字を選定してあてよ。其の郡内で産出する所の、銀・銅・彩色・草木・禽獣・魚虫等の物は、具体的にその種類を記録させよ。またその土地の肥沃度、山や川、原野の名称の由来、また古老の言い伝えや変わった話などを正式な文書記録として掲載して、政府に提出するようにせよ。」

☆各国の風土記で写本が現存または逸文として知られているもの一覧

<写本として現存しているもの>

・出雲国風土記
・播磨国風土記
・肥前国風土記
・常陸国風土記
・豊後国風土記

<逸文として知られているもの>

・山城国風土記
・摂津国風土記
・伊勢国風土記
・尾張国風土記
・陸奥国風土記
・越後国風土記
・丹後国風土記
・伯耆国風土記
・備中国風土記
・備後国風土記
・阿波国風土記
・伊予国風土記
・土佐国風土記
・筑前国風土記
・筑後国風土記
・豊前国風土記
・肥後国風土記
・日向国風土記
・大隅国風土記
・壱岐国風土記